著者
中原 弘美 多賀谷 正俊 西田 宜弘 近藤 亜子 松原 有為子 田村 康夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.429-439, 2013-11-25 (Released:2015-03-21)
参考文献数
28
被引用文献数
3

機能的矯正装置ムーシールドにて幼児期反対咬合の治療を行い,治療効果と,どこにどの様な形で治療の効果が現れているかについて検討したものである。被検児は反対咬合小児66 名(平均年齢5 歳1 か月)を対象として,機能的矯正装置ムーシールドにて治療を行い,治療の有効性と被蓋改善までの治療期間について検討を行った。次いで,66 名のうち16 名を対象として,治療前後における模型分析と側面セファロ分析を行い,また口蓋形態から口蓋縦断平面の変化について検討した。その結果,78.8%に被蓋の改善が認められ有効と判定された。治療期間は平均9.8 か月で,開始年齢や歯齢別で差は認められなかった。乳犬歯間距離は,上顎は有意に増大し下顎は小さくなっていた。一方,長径では上顎は乳中切歯と両側乳犬歯間が有意に増大し下顎は減少していた。セファロ分析では,ANB, FMA, Y-Axis で有意な増加が認められ,またAPDI で有意な減少が認められた結果,下顎の後退と時計方向の変化が認められた。歯槽性では,U1 to SN, U1 to FH の角度はそれぞれ有意に増加し,またL1 to MP の角度は有意に減少した。また口蓋の縦断面積において,治療後は有意な増加がみられた。以上から,機能的矯正装置ムーシールドは幼児期における反対咬合の治療に有効であり,歯や顎骨に対し直接的な矯正力を働かせなくても前歯の傾斜だけでなく上下顎骨の位置関係や口蓋の形態にまで変化をもたらしていることが明らかとなった。
著者
中西 正尚 山田 賢 中原 弘美 田村 康夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.669-679, 2005-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本研究は,授乳方法と口腔機能発達との関連を検討する目的で,2歳児から5歳児の1357名(平均年齢3歳7か月)の保護者を対象にアンケートによる調査を行いその結果を分析,検討した.出生後3か月までの授乳方法から母乳哺育群(Br群),混合乳哺育群(Mix群),人工乳哺育群(Bo群)の3群に分類すると,Br群が399名(29.4%),Mix群が811名(59.8%)で,Bo群が147名(10.8%)であった.離乳に関して,離乳食開始時期,離乳食終了時期,断乳時期ともに授乳方法問に差は認められなかった.現在の食べ方について,18項目中,咀嚼の上手下手,前歯で噛みきる食べ物,食べ物の吐き出し,食べこぼし,食生活のリズム,食事の自立の6項目において群間の有意差が認められ,いずれもBr群が良好な発達を示していた.その他の関連項目で,吸指癖,おしゃぶり,言語発達の遅れ,性格面に有意差が認められた.以上より,アンケートではBr群が全体的に良好な咀嚼発達を示し,Bo群の食行動に一部問題がみられたことから,授乳方法はその後の咀嚼の発達に少なからず影響を及ぼしていることが示唆された.
著者
高松 秀行 片桐 さやか 長澤 敏行 小林 宏明 小柳 達郎 鈴木 允文 谷口 陽一 南原 弘美 早雲 彩絵 和泉 雄一
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.31-39, 2013-02-28

目的:慢性歯周炎はインスリン抵抗性を亢進させることにより,2型糖尿病患者の血糖コントロールを悪化させると考えられている.高感度C反応性タンパク(hs-CRP), tumor necrosis factor-α (TNF-α), interleukin-6 (IL-6),また,アディポネクチン,レプチン,レジスチンのようなアディポカインなどのさまざまなメディエーターの増加や減少は,インスリン抵抗性に関与すると考えられている.本研究の目的は,歯周炎に罹患した2型糖尿病患者における,歯周治療による血糖コントロールおよび血清中のメディエーターへの影響を調べることである.対象と方法:歯周炎を伴う2型糖尿病患者41名に,抗菌薬の局所投与を併用した歯周治療を行った.ベースライン時と歯周治療2,6カ月後に,歯周組織検査として,プロービング深さ(PPD),プロービング時の出血(BOP)を測定し,また採血を行って糖化ヘモグロビン(HbA1c), hs-CRP, TNF-α, IL-6,アディポネクチン,レプチン,レジスチンを測定した.結果:全被験者において,PPDとBOPは有意に減少したがHbA1cおよび血清中のメディエーターには有意な変化は認められなかった.次に,6カ月後のBOPの改善率が50%以上の群(BOP-D群)とBOPの改善率が50%未満の群(BOP-ND群)に分けて解析を行ったところ,BOP-D群ではPPD, BOP, HbA1cが有意に減少しており,血清中のアディポネクチンは有意に増加していた.一方,BOP-ND群においては,PPDとBOPの有意な減少が認められたが,HbA1cや血清中のメディエーターには有意な変化は認められなかった.さらにBOP-D群においては,BOPとレジスチンの6カ月間の変化量の間に有意な正の相関(p=0.03, ρ=0.49)が認められた.結論:歯周炎に罹患した2型糖尿病患者において,歯周組織の炎症が顕著に改善した被験者では,血清アディポネクチンの増加およびHbA1cの減少が認められた.またBOPの減少に伴ってレジスチンも減少することが示された.歯周炎に罹患した2型糖尿病患者に対してBOPの改善率が50%以上と表されるように大きく炎症が減少することにより,インスリン抵抗性が改善し,血糖コントロールが安定する可能性が示された.