著者
真砂 佳史 原本 英司 久保田 健吾 大瀧 雅寛 斉藤 繭子 風間 しのぶ
出版者
国際連合大学サステイナビリティ高等研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は効率的な新興病原ウイルスの発見に適した検出手法の開発を目標とした。下水中のウイルスゲノム群から解析対象のゲノムのみを選択的に回収し,次世代シーケンシング法によりその塩基配列を決定することで,下水中の存在量が低いウイルスであってもゲノム解析を可能にする手法を開発した。また,下水中のウイルスを対象としたメタゲノム解析を行い,得たほとんどの配列がデータベースに近縁配列がないことを確認した。メタゲノムで得た塩基配列で得た塩基配列をもとに,未知のウイルスによると考えられるコンティグを作成し,その配列を持つウイルスゲノムが国内下水に常在する可能性を示した。
著者
井上 大介 吉永 隼人 BIKASH MALLA RAJANI GHAJU SHRESTHA SARMILA TANDUKAR DINESH BHANDARI 田中 靖浩 JEEVAN B. SHERCHAND 原本 英司 清 和成
出版者
日本水処理生物学会
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.65-72, 2018 (Released:2018-06-15)
参考文献数
20

ネパール・カトマンズ盆地では、水源の微生物汚染が深刻な問題となっている。本研究では、カトマンズ盆地において飲用水や生活用水として主に利用されている市販の飲用ボトル水(10試料)、浅井戸地下水(10試料)、深井戸地下水(3試料)、公共水場水(1試料)、湧水(2試料)と、河川水(2試料)の計28試料を採取し、病原性細菌の存在を網羅的に調査した。ヒト、動物、植物、及び魚介類に感染する941種/グループの病原性細菌(バイオセーフティレベル(BSL)2、3の全属及び日和見感染菌)の16S rRNA遺伝子を標的とするDNAマイクロアレイを用いた病原性細菌の網羅的検出の結果、Acinetobacter属、Arthrobacter属、Brevibacterium属、Pseudomonas属、及びLegionella属が大部分の試料で検出され、一部の試料ではBSL3の病原性細菌も検出された。Legionella属及びBSL3に属するBrucella属を対象として属特異的PCRによる定量検出を試みた結果、一部の試料においてDNAマイクロアレイ解析を支持する結果が得られた。また、DNAマイクロアレイ解析において6試料以上で検出された病原性細菌を対象として、糞便汚染指標(大腸菌群、大腸菌)との関連性について検討を行った結果、そのほとんどが糞便汚染指標とは相関を示さないことが明らかとなった。本研究の成果は、カトマンズ盆地における病原性細菌汚染の解明や、詳細な調査を要する病原性細菌種の特定の一助となり得るものと考えられる。
著者
原本 英司 片山 浩之 大垣 眞一郎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.315-320, 2009 (Released:2010-01-09)
参考文献数
26

The occurrence of pathogenic viruses and indicator microorganisms in water samples from a wastewater treatment plant in Japan was investigated monthly from July 2003 to June 2004. Forty-eight samples of raw sewage, treated sewage before chlorination, effluent after chlorination, and reclaimed water after advanced wastewater treatment using sand filtration and ozonation were subjected to a virus concentration method using an HA electronegative membrane, followed by virus detection using a TaqMan PCR method. Noroviruses of genogroups I and II were detected in all 12 raw sewage samples, showing much higher concentrations in winter, an epidemic season. Corresponding to the occurrence in raw sewage, the concentrations of noroviruses in treated sewage and effluent also increased in winter. The concentrations of enteroviruses and adenoviruses in the tested samples were relatively constant compared with those of noroviruses. Noroviruses and adenoviruses were still detected even after advanced wastewater treatment, but the concentrations of these viruses were much lower than those in the effluent samples. Viruses were removed by wastewater treatment as effectively as indicator microorganisms (total coliforms, Escherichia coli, and F-specific phages), suggesting that sewerage systems can contribute to reducing the load of pathogenic viruses discharged into aquatic environments.
著者
北島 正章 遠矢 幸伸 松原 康一 原本 英司 宇田川 悦子 片山 浩之 大垣 眞一郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境工学研究論文集 (ISSN:13415115)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.361-370, 2008
被引用文献数
1

ヒトノロウイルスは、細胞培養系が確立されていないため、消毒処理に対する耐性について十分な知見が得られていない。本研究では、ヒトノロウイルスに近縁で細胞培養可能なマウスノロウイルスを用い、水道水中のノロウイルスに対する塩素消毒の有効性を検証した。マウスノロウイルスの塩素消毒耐性はポリオウイルスよりも低く、3mg/L・minの遊離塩素消毒で99.99%(410g) 以上不活化された。また、ヒトノロウイルスとマウスノロウイルスの遺伝子の残存率は同程度であった。これらの結果から、ノロウイルスの塩素消毒耐性は他の腸管系ウイルスと同等以下であり、十分な塩素消毒が施された配水システムにおいてはノロウイルスが感染力を保ったまま末端給水栓まで到達する可能性は低いことが示唆された。