著者
松岡 麻男 古場 一哲
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 健康生活学部編 (ISSN:18807720)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.97-106, 2008-03

小さく角切りしたテンペのフライおよびスライスしたジャガイモ・サツマイモのスのフライ(チップスの製造)によるAA生成とその制御について検討を行った。1.テンペは,170℃,5分のフライでAAを生成し,製品により異なるが,そのレベルは10〜347ng/gであった。この平均値は105ng/gで,市販ポテトチップスに含まれるAAレベルの約1/15であった。2.テンペのフライによるAA生成量は,テンペに含まれるアスパラギンと還元糖の量に依存した。3.テンペのAA生成量はフライ時間の経過に伴って増加し,フライ時間5分に定めて温度を変えて検討したところ,150℃では微量であり,170℃で最も多く,190℃では減少した。4.180℃-2分のフライによってつくったポテトチップスのAAレベルは,4600〜10500ng/gであった。そのAAレベルの平均値(7500ng/g)は,市販品の約5倍であった。5.ポテトチップスの原料ジャガイモは,すべて高濃度(約10μmol/g)のアスパラギンを含んでいた。それは,テンペの3〜5倍で,サツマイモの25倍であった。ポテトチップのAAレベルが高いのは,ジャガイモが高濃度にアスパラギンを含むことに起因すると考えられる。6.原料のジャガイモの種類や産地でポテトチップスのAA濃度が異なった。これは,ジャガイモに含まれる還元糖量と関係があることが示唆された。7.油温度を低くしてポテトチップスをつくると,AAレベルがより低くなることが実証された。8.サラダ油よりもキャノーラ油を使用した場合,AAレベルのより低いポテトチップスができた。9.低温-短時間(150℃-1.5分)のフライ条件でサツマイモチップスをつくったにもかかわらず,そのAAレベルは368ng/gを示した。これは,サツマイモはアスパラギン含有量が少ない(0.4μmol/g)けれども,還元糖が非常に多い(82.2μmol/g)ことによると考えた。
著者
湯浅 正洋 川邊田 晃司 江口 恵加 安部 春香 山下 絵美 古場 一哲 冨永 美穂子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.39, 2018 (Released:2018-08-30)

【背景】牡蠣は軟体動物斧足類に属する貝であり, わが国においては, 冬が旬の真牡蠣(Crassostrea gigas)と 夏が旬の岩牡蠣(C. nippona)が知られている. 我々は, これまでに, 日本産の岩牡蠣と真牡蠣の呈味を味認識装置により明らかにしているが, 岩牡蠣の方が真牡蠣よりも旨味や塩味が高く濃厚な味わいである可能性を見出している. 一方, 一般的に岩牡蠣は大ぶりで旨味が強く濃厚な味わいであるとされるが, その科学的根拠は乏しい. そこで, 本研究では, 岩牡蠣の呈味を評価するために, その呈味特性および呈味成分(核酸, 有機酸, 遊離アミノ酸, 脂肪酸組成および塩分濃度)を明らかにした. なお, 比較対照には真牡蠣を用いた.【方法】全ての牡蠣は日本産とし, 岩牡蠣は2015年7-8月に9産地分(計27個), 真牡蠣は2015年12月に11産地分(計33個)をそれぞれ収集した. 呈味特性(味覚応答)は味認識装置により先味(苦味雑味,旨味および塩味)と後味(苦味および旨味コク)を明らかにした. 呈味成分としては, 5’-イノシン酸, コハク酸および遊離アミノ酸をHPLC法で, 脂肪酸組成をGC-MS法で,塩分濃度を簡易塩分計でそれぞれ測定した. 岩牡蠣と真牡蠣のそれぞれの項目を比較し, 岩牡蠣の特徴を評価した.【結果・考察】岩牡蠣において, すべての先味が真牡蠣よりも有意に高値を示した(P<0.05). 5’-イノシン酸およびコハク酸には差は認められなかったが, 遊離アミノ酸のうち特に苦味を呈するアミノ酸類において, 岩牡蠣で有意に高値を示した(P<0.05). 脂肪酸組成については, 岩牡蠣におけるパルミチン酸およびステアリン酸が有意に高値を示した(P<0.05). 一方で, 塩分濃度は岩牡蠣の方が低値を示した(P<0.05)が, 真牡蠣との差は1.1倍程度と大きな差ではなかった. 以上より, 岩牡蠣は真牡蠣と比べて濃い呈味であり, この理由としてはアミノ酸や脂肪酸の組成が異なることが影響していることが示唆された.
著者
古場 一哲
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.415-422, 2010-11-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
73

これまでに, 共役リノール酸 (CLA) は, 発がん抑制, 体脂肪低減をはじめとする多彩な生理機能を示すことが動物実験により明らかにされ, その作用機序についてもある程度明らかにされてきている。中でも, 体脂肪低減作用はヒトでも有効性が報告され, とくに注目されている。CLAはリノール酸 (実際にはサフラワー油など) をアルカリ異性化して調製される。この方法では9c, 11t-18 : 2と10t12c18 : 2の2種類のCLA異性体がほぼ1 : 1の割合で生成する。市販のCLAもこの方法で調製されている。 CLAの生理機能は異性体によって異なり, 9c, 11t-8 : 2が発がん抑制など限られた効果しか示さないのに対し, 10t12c18 : 2は体脂肪低減を含む多彩な生理機i能を発揮する。CLAは天然には9c, 11t8 : 2として牛肉や乳製品に微量 (5mg/g脂質程度) 存在するが, これらは量的にも重要な供給源とはならない。10t12c-異性体の体脂肪低減作用を期待してCLAサプリメントが国内外で市販されている。最近, CLAを配合した加工食品も市場に出始め, 機能性素材として, CLAは新たな局面を迎えている。