著者
塩田 教子 松岡 麻男
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.209-214, 1986-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
10
被引用文献数
2

“Kakuni of Pork”, one kind of “Shippoku” cookings, is usually made up by boiling pork for several hours. In order to cook it faster, the high pressure cooking was examined.The cooking period, judged by the sensory test, necessary to obtain the same softness of pork as that of the usual cooking was searched. Physical properties, lipid contents and the difference of tissue structure of pork cooked to the same softness was examined. Also the behavior of skin protein during the both cookings was examined by SDS-polyacrylamide gradient gel electrophoresis, because this behavior seemed to relate to the softness of cooking materials.Results obtained were as follows1) Two hundreds grams of pork with skin and one liter of water were put in a pressure cooker, heated for 40 min., left as they were for 10 min., and then after water was changed, again heated for 20 min. and left they were for 10 min. This cooked pork with skin showed the same softness as that cooked for 4 hours by the usual method by the sensory test. Also the values of these cooked porks obtained by the rheological measurements coinsided well.2) Pork cooked with high pressure cooker seemed to be mild in the case of mastication and less lipid content compared with those cooked under the normal condition.3) The pork skin cooked under the high pressure was highly gelatinized, but little difference was observed between two proteins obtained by normal and high pressure cookings on the electrophoretical patterns of soluble collagen and soluble protein.4) It seemed to be clear that the taste of "Kakuni of Pork" was affected by the dissolution of the skin tissue and the alterration in the structure of the connective tissue during the cooking process.
著者
塩田 教子 松岡 麻男
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.209-214, 1986-12-20
被引用文献数
3

卓袱料理の豚の角煮は, 常法では長時間かけて水煮してつくられるので, 高圧加熱による早煮法を検討した。先ず感応検査でほぼ同じやわらかさの角煮を得るための高圧加熱時間を求め, その角煮について物性, 脂肪含量および組織の相違を調べた。また一般家庭では豚皮はかたいので除去されるが, 高圧加熱した場合の嗜好や軟化に関係するタンパク質の動向を電気泳動で調べ, 消化率も求めて利用価値を検討した。1) 40分間高圧加熱後, 水を換えて再び20分間加熱した角煮(S3)は, 常法の4時間水煮(S1)とほぼ同じやわらかさの製品が得られた。機器による物性測定でも, ほぼ同じ性質をもつものであることを示した。2) 高圧加熱されたS3は, S1に比べて重量と脂肪含量は僅かに低値を示した。またガス消費量と調理所要時間は, 常法の45%と25%であった。3) S3の皮部の可溶性コラーゲン量は, S1の皮部とほぼ同量であり, また両者の可溶性タンパク質の電気泳動パターンもほぼ同じであった。4) 高圧加熱によると, 豚皮は短時間にゼラチン化し, 製品の口あたりをよくし, 消化率も高く, 利用価値が認められた。5) 組織は, S3の皮部のコラーゲン線維がほぐれて細分化し, さらに一部溶解していた。これが物性を口あたりよいやわらかさに変えた。肉部では結締組織が顆粒化し内筋周膜の間隙にも顆粒が充満し, これがもろさの原因と思われた。
著者
松岡 麻男 古場 一哲
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 健康生活学部編 (ISSN:18807720)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.97-106, 2008-03

小さく角切りしたテンペのフライおよびスライスしたジャガイモ・サツマイモのスのフライ(チップスの製造)によるAA生成とその制御について検討を行った。1.テンペは,170℃,5分のフライでAAを生成し,製品により異なるが,そのレベルは10〜347ng/gであった。この平均値は105ng/gで,市販ポテトチップスに含まれるAAレベルの約1/15であった。2.テンペのフライによるAA生成量は,テンペに含まれるアスパラギンと還元糖の量に依存した。3.テンペのAA生成量はフライ時間の経過に伴って増加し,フライ時間5分に定めて温度を変えて検討したところ,150℃では微量であり,170℃で最も多く,190℃では減少した。4.180℃-2分のフライによってつくったポテトチップスのAAレベルは,4600〜10500ng/gであった。そのAAレベルの平均値(7500ng/g)は,市販品の約5倍であった。5.ポテトチップスの原料ジャガイモは,すべて高濃度(約10μmol/g)のアスパラギンを含んでいた。それは,テンペの3〜5倍で,サツマイモの25倍であった。ポテトチップのAAレベルが高いのは,ジャガイモが高濃度にアスパラギンを含むことに起因すると考えられる。6.原料のジャガイモの種類や産地でポテトチップスのAA濃度が異なった。これは,ジャガイモに含まれる還元糖量と関係があることが示唆された。7.油温度を低くしてポテトチップスをつくると,AAレベルがより低くなることが実証された。8.サラダ油よりもキャノーラ油を使用した場合,AAレベルのより低いポテトチップスができた。9.低温-短時間(150℃-1.5分)のフライ条件でサツマイモチップスをつくったにもかかわらず,そのAAレベルは368ng/gを示した。これは,サツマイモはアスパラギン含有量が少ない(0.4μmol/g)けれども,還元糖が非常に多い(82.2μmol/g)ことによると考えた。
著者
松岡 麻男 塩田 教子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 家政科・一般教育・音楽科編 (ISSN:02888645)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.19-27, 1985-03

グラジエントゲルを使用してのSDS-PAGEによるブタ皮可溶性タンパクおよび加熱処理での可溶性タンパク質の分離を検討し、さらに主なタンパク質の分子量を求めた。1.HMWカリブレーションタンパク質を1%メルカプトエタノールを含む試料バッファー中で、60℃15分間処理し、グラジエントゲル(PAA4/30)SDS-PAGEを行った結果、300V10分間、150V2.5時間の泳動で分離し、分子量2万から40万の間で良好な結果を示した。2.上記の泳動条件で、タンパク質の移動比率(Rf)のプロットはその分子量の対数に対して直線関係を示した。3.ブタ皮の加熱よる可溶化タンパク質は、グラジエントゲルSDS-PAGEの結果において、SDS処理時にメルカプトエタノールがあっても無くても、同じような泳動パターンを示すことが判明した。4.生のブタ皮の可溶性タンパク質は、大部分、分子量6万のもので占められていた。5.ブタ皮を加熱すると、分子量6万以上の高分子量の可溶性タンパク質が生じることをグラジエントゲルSDS-PAGEにより明らかにした。その中で単一と思われ、かつ量的にも多いタンパク質の分子量は約15万であった。6.加熱により高分子量のタンパク質が量的にも、また質的にも多くなるのは、ブタ皮の不溶性コラーゲンの加熱による可溶化が原因であり、またその可溶化に伴うペプチド分子間の部分的加水分解に基づくと考えた。