著者
田中 望 斎藤 里美 岡崎 敏雄 山田 泉 林 さとこ 上野 田鶴子 大橋 敦夫 大谷 晋也 古川 ちかし
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

今回の3年間の研究の結果として概略つぎのようなことが判明した.1. アジアからの外国人女性たちに対する日本語教育は,多くの場合,抑圧的な構造をもち,彼女たちを日本人につごうのよい「疑似日本人」にしたてるために機能する,同化的なものであること.2. それに対して,日本人による支援活動のなかに,アジアからの外国人女性たちにコミュニティでの声をもたせることに成功している少数の例があること.3. 地域社会では,抑圧的な日本語教育と声をもたせるための支援活動のあいだで,どちらをとるかの議論がおこっており,外国人に日本語を教えるというパラダイムに変更を迫る動きがあること.なお,3年間の調査を通じて,もつとも重要な成果といえるのは,調査研究そのものに対する見直しを被調査者から突きつけられたことである.このことは,エスノグラフィ的調査といえども,調査のもつ搾取的構造から逃れられないことを意味しており,調査のあり方に根本的な反省を加えなければならないことになった.今後は,調査研究という枠組みをはなれて,研究者といえどもたんなる「異者のかかわり」として地域社会と関係をもつというあり方を追求する必要があると思われる.