著者
山田 泉
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.175, pp.4-18, 2020-04-25 (Released:2022-04-26)
参考文献数
10

人は一生を通じて自己実現の過程を歩むと言えよう。自己実現とは完全に自分らしく生きていると自らが実感できる状態のことである。そのために「自分とは何か」を追求し,今,現在の自己認識から,目指すべき生き方形成 (キャリア形成) の方向性を得,それに向かって人生の設計 (キャリアデザイン) を行う必要がある。自己認識とは,過去から現在の自分,未来へと続く身近な人々の人生とのかかわり及び同時代に生きる身近な人々とのかかわり,関係性から「他者の他者としての自分」 (鷲田 1996:105-25) として反転的に得られるものである。タイトルを「多言語・多文化背景の年少者のキャリア形成」としているが,外国につながる子どもたちの多くが十全に「多言語・多文化背景」があるかどうかは疑わしい。彼・彼女らのキャリア形成において,「多言語・多文化」であることは,社会参加のためのスキルとしてのエンプロイアビリティ (労働市場においてプラスに評価されうる就業能力) だけでなく,自己実現の過程を歩む上で必要な自己認識にとっても重要なものである。外国につながる子どもたちに母語・母文化 (継承語・継承文化) を保障することは日本社会の責務である。
著者
新矢 麻紀子 山田 泉 春原 憲一郎
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.115-140, 2011-10

韓国では近年,移民受入れが進み,それに伴って移民政策も急速に整備されてきている。本稿は2010年9月に科学研究費補助金により,日本語教育保障法研究会で実施した韓国における移民関連施策および移民支援の状況に関する現地実態調査の報告後編であり,2009年度調査の報告書から通算すると第4号となる。本稿は,「朝鮮日報」(第2章),「中央日報」(第3章),「韓国日報」(第4章),「戸田郁子氏」(第5章)に対する聞き取り調査報告,および「2009年度,2010年度の韓国現地実態調査から」(第6章)によって構成される。
著者
新矢 麻紀子 山田 泉 岩槻 知也 三登 由利子
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.41-67, 2012-06

移民の受入れと,それに伴う移民政策が急速に進んできている韓国。そこに,筆者らの研究グループ「日本語教育保障法研究会」は科学研究費補助金によって2009年より3か年にわたって赴き,移民関連施策や移民への生活・教育支援に関する調査を行ってきた。本稿は,2011年9月に実施した第3回目となる現地実態調査の報告前編であり,2009年度調査の報告書から通算して第5号にあたる。本稿は,本研究全体の概略(第1章),2011年度韓国現地実態調査の概要(第2章),キム・ヒョンチョル氏への聞き取り調査報告(第3章),ムジゲ青少年センター訪問調査報告(第4章),マン・ヒ氏への聞き取り調査報告(第5章)によって構成される。なお,2011年度調査報告の後編は本号に報告(6)として掲載されている。
著者
新矢 麻紀子 山田 泉 大谷 晋也 三登 由利子
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.177-197, 2010-06

韓国では近年,移民受入れが進み,それに伴って移民政策も急速に整備されてきている。本稿は2009年10-11月に科学研究費補助金により,日本語教育保障法研究会で実施した韓国における移民関連施策および移民支援の状況に関する現地実態調査の報告(1)である。本稿は,研究全体の概要および韓国調査の位置付け(第1章),韓国調査の概要(第2章),政府関係機関である「韓国女性政策研究院」1)(第3章)と「保健福祉家族部多文化家族課」(第4章)の訪問調査報告によって構成される。調査によって,労働移民や結婚移民にかかわる施策の充実,特に韓国人男性との結婚移住女性およびその子どもたちを含めた多文化家族への支援に特化した法律が制定され,支援施策が進行形で日々拡大されていることがわかった。
著者
新矢 麻紀子 山田 泉 窪 誠 大谷 晋也 三登 由利子
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.187-212, 2011-02

韓国では近年,移民受け入れが進み,それに伴って移民政策も急速に整備されてきている。本稿は2010年9月に科学研究費補助金により,日本語教育保障法研究会で実施した韓国における移民関連施策および移民支援の状況に関する現地実態調査の報告前編であり,2009年度調査の報告書から通算すると,第3号となる。本稿は,本研究全体の概略(第1章),2010年度韓国現地実態調査の概要(第2章),人権保護の国家機関である「国家人権委員会」(第3章),マイノリティ支援市民団体である「青い市民連帯」(第4章),ハングルの研究や普及促進を行っている「ハングル学会」(第5 章)への訪問調査報告によって構成される。
著者
山田 泉 青山 久枝 伊豆 太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.F4-0200, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
15

空港アスファルト舗装の維持管理の効率性と計画性の向上のためには,空港面における航空機の日常的な交通量の把握が有益と期待される.本稿では,空港面において航空機の位置の把握に用いられるマルチラテレーションのデータを用いた誘導路の交通量データの作成手法を述べる.次に,羽田空港における5年分の交通量データと舗装の補修工事の記録をもとに,誘導路の交通量と補修件数の関連性について分析し,空港アスファルト舗装の維持管理のための交通量データの活用の可能性について考察する.
著者
山田 泉
出版者
法政大学キャリアデザイン学会
雑誌
生涯学習とキャリアデザイン = 生涯学習とキャリアデザイン (ISSN:13493051)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.41-48, 2008-02

It is very difficult to live far away from one’s own country, in a foreign country with a different language and culture, most advanced nations that accept immigrants encourage them to learn the language used in that country, and run public services offering language and cultural education. In Japan, however, such services rarely by well-intentioned citizen volunteers. The Kawasaki city board of education conducts an activity called “Shikiji class” at the Kawasaki city Fureaikan facility and seven other public pavilions. The purpose of this activity is to enable foreigner residents to meet the Japanese citizens, to accept “the other “ just as they are, to talk about what they wish to, and consider what the society they both live in should be, and to aim toward achieving it. The basic idea is “study together” and “live together.” However, in reality the number of residents who attend the “shikiji class” wanting to improve their Japanese ability for everyday life is hot few. It is clear that additional Japanese educational institutions besides the existing “shikiji class”, where they can learn the Japanese necessary to live in Japan should be made. Such organizations should be set up. By the Japanese government, managed by local governments, with NPOs that esteem the idea of the “Shikiji class” taking charge of the education.
著者
山田 泉 船戸 一佳 黒岩 茂隆
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
油化学 (ISSN:0513398X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1158-1161, 1988

The rate curves for fatty soil removal under various mechanical conditions were drawn on the basis of spectrophotometric measurement data taken at different temperatures. The rate constant of soil removal (&kappa;<SUB>1</SUB>) and that of the redeposition of removed soil (&kappa;<SUB>-2</SUB>) were calculated from rate curves using the rate equation of fatty soil removal developed in the previous paper. The activation energy for removal (<I>E</I><SUB>a</SUB>) for each mechanical conditions was determined from Arrhenius plots of the rate constants. It was consequently found that with an increase in the mechanical force (rotation of stirrer), the activation energy, <I>E</I><SUB>a</SUB>, decreased and the detergency is enhanced. Further, the relationship between detergency, <I>F</I><SUB>m</SUB>, and mechanical force, <I>M</I>, above the temperature for liquid crystal formation in a ternary system, was determined as follows : <BR>Fm=Cexp (-<I>E</I><SUB>m</SUB><SUP>0</SUP>/a<I>M</I>) (1) <BR>where <I>C</I> and <I>a</I> are constants and <I>E</I><SUB>m</SUB><SUP>0</SUP> is the activation energy related to the contribution of mechanical force. This equation is actually an Arrhenius equation expressing change in detergency as a function of mechanical energy. At a temperature above that for liquid crystal formation, the mechanical force in removal may possibly bring about an increase in the heat energy of the system in a manner similar to that by which rise in temperature causes such an increase.
著者
住谷 美登里 青山 久枝 山田 泉 ブラウン マーク
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.165, pp.1-6, 2013-07-19

航空交通の増大に伴い、空港面の交通においても航空交通の効率性向上を目指した空港面の運用の検討が必要となっている。そのため電子航法研究所では、出発便の混雑時の地上走行による離陸待ち等の滞留の軽減策を検討している。本稿では、日本で最も離発着便が多い羽田空港を対象に、まず空港面交通状況を把握するために、空港面地上走行データを用いて、滑走路離着陸数に関する分析結果を報告する。次に、出発便の離陸時刻を予測し、離陸待ちによる滞留を軽減するように滑走路離着陸数の予測に基づいて駐機スポットからの出発時刻を調整する手法について提案する。そして、この手法について電子航法研究所が開発した空港面交通流を模擬するシミュレータを利用して、検証した。その結果、離陸待ちしている便数および離陸待ちによる滞留時間が軽減されたことが示された。
著者
住谷 美登里 青山 久枝 ブラウン マーク 山田 泉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.162, pp.1-6, 2012-07-20

航空交通の増大に伴い、航空交通の効率性向上を目指して、空港面の交通においても空港面交通管理手法の検討が必要となっている。電子航法研究所では日本で最も離発着便が多い羽田空港において、出発便の混雑時の地上走行による離陸待ち等の滞留の軽減策を検討している。本稿では、まず羽田空港の空港面監視データを用いて、空港面交通分析を行った結果を報告する。次に、空港面交通管理手法の検討のために電子航法研究所が作成している空港面交通流を模擬するシミュレータの概要を説明する。そして、出発便の滞留緩和策の一つである駐機スポットからの出発時刻を調整する方法をシミュレーションで検討した結果の例を示す。
著者
ブラウン マーク 青山 久枝 山田 泉 住谷 美登里
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.407, pp.9-14, 2012-01-19

独立行政法人電子航法研究所では、羽田空港の交通流の改良を目指して交通流を分析し、改良方法を評価するためにシミュレーションモデル開発を行っている。忠実な交通流シミュレーションを得るため、各フライトの駐機スポットと駐機時間情報が必要である。スポット情報はSMAP(Spot Management and Planning:スポット総合調整サブシステム)とODAP(Online Data Archive Processor:運用情報管理サーバ)の二つの独立した航空管制情報システムから得ている。しかしながら、この二つのシステムのスポット情報に矛盾や欠陥が時々発生する。この場合、空港面監視レーダの航跡データからスポット位置を推定しスポットの利用状況を推定する可能性を検討した。本稿は羽田空港のSMAPとODAPスポット情報と空港面監視レーダ航跡データから推定したスポット位置の特徴を求め、駐機時間の解析を報告する。
著者
新矢 麻紀子 山田 泉 窪 誠 大谷 晋也 岩槻 知也 佐藤 潤一 春原 憲一郎 三登 由利子 永井 慧子 新庄 あいみ 下山 雅也 花立 都世司
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「日本語教育保障法案」を創出し、冊子として発行した。国内(川崎市、大阪市、滋賀県)、並びに、海外諸国(フランス、オーストラリア、韓国)を訪問し、移民や外国人に関わる法律や制度、施策(特に言語教育支援施策)について現地実態調査を実施し、「人権」「社会的包摂」という分析軸から検討を行った。法制化が進むことによる利点はもちろん見られたが、それのみならず、法律と運用実態の乖離や法制化による負の側面も散見されたことも特筆したい。
著者
上野 田鶴子 山田 泉 八代 京子 箕口 雅博 田中 望 甲斐 睦朗
出版者
東京女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

外国人技術研修者が生活の場でどのようにして日本人と関わり、コミュニケーション・ネットワークを形成していくのか,その際の問題は何か,それに対して日本語教育はどのような対応が可能であるかを明らかにすることを目的とし,インタビュー調査等を用いたエスノグラフィック調査により,長野県小諸市を中心に調査を行い以下の結果を得た.1)技術研修者を含む外国人のネットワーク形成にはボランティア的支援を行う日本人の側のネットワークの存在が前提となる 2)日本人のネットワークには,外国人の危機状況に応じて支援を行う危機対応ネットワークと日常的なコミュニティ・ネットワークとがある.3)小諸市においては危機対応ネットワークには病気,怪我に対応する医療関係の医師ネットワーク,法律の問題に対応する弁護士ネットワーク,タイ語,タガログ語などができる日本人ボランティアネットワーク等がある.4)コミュニティ・ネットワークとしては,まだ明確なものは形成されていないが子供たちをキ-として保育園に形成される母親たちのネットワーク,外国人と結婚した日本人を中心としたネットワーク等が萌芽的な形で存在している.これらの地元の支援グループと外国人グループとの共同の活動を通して行うアクション・リサーチを行い,調査を継続し,さらに具体的な内容と問題の検討を行った.日本語教育関係の活動としては,こもろ日本語教室が試験的に開かれたが,これは当面ボランティア教師の養成を中心に,市民の間に外国人日本語を教えることの意味を考える場を提供することを目的としている。本研究は今年度で科学研究費補助金による調査研究を終了したが,アクション・リサーチの中で提起された問題については今後も引き続き調査研究を行う予定である.
著者
坂本 旬 山田 泉 村上 郷子 新井 紀子 菅原 真悟 御園 生純 シヤピロウ ノーマン・P シエラ オフマン・ガーシュ 樋口 浩明 TEP Vuthy 高木 勝正 重松 栄子 中村 優太 佐々木 順子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果は、(1)「NetCommons」による文化探究学習の有効性を検証し、(2)文化探究学習理論を活用した「異文化理解」に国連やユネスコによる「メディア情報リテラシー教育」に関する最新理論を融合した教材の作成とその実践を行ないつつ、(3)日本及びアメリカ、カンボジア、中国の初等・中等・高等教育レベルの学校・大学とのICTを活用した協働的な文化交流学習の有効性を実証したことである。本研究の総括として、国際シンポジウム「文化葛藤時代のメディア・リテラシー教育-国連『文明の同盟』と日本の実践・課題」を開催した。
著者
田中 望 斎藤 里美 岡崎 敏雄 山田 泉 林 さとこ 上野 田鶴子 大橋 敦夫 大谷 晋也 古川 ちかし
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

今回の3年間の研究の結果として概略つぎのようなことが判明した.1. アジアからの外国人女性たちに対する日本語教育は,多くの場合,抑圧的な構造をもち,彼女たちを日本人につごうのよい「疑似日本人」にしたてるために機能する,同化的なものであること.2. それに対して,日本人による支援活動のなかに,アジアからの外国人女性たちにコミュニティでの声をもたせることに成功している少数の例があること.3. 地域社会では,抑圧的な日本語教育と声をもたせるための支援活動のあいだで,どちらをとるかの議論がおこっており,外国人に日本語を教えるというパラダイムに変更を迫る動きがあること.なお,3年間の調査を通じて,もつとも重要な成果といえるのは,調査研究そのものに対する見直しを被調査者から突きつけられたことである.このことは,エスノグラフィ的調査といえども,調査のもつ搾取的構造から逃れられないことを意味しており,調査のあり方に根本的な反省を加えなければならないことになった.今後は,調査研究という枠組みをはなれて,研究者といえどもたんなる「異者のかかわり」として地域社会と関係をもつというあり方を追求する必要があると思われる.