著者
古林 万木夫 田辺 創一 谷内 昇一郎
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.96-101, 2007
被引用文献数
1

醤油は日本を代表する発酵調味料の一つであるが,これまで醤油中の小麦アレルゲンの残存性について全く研究が行われていなかった.そこで我々は,醤油醸造工程中の小麦アレルゲンの分解機構を調べるために,小麦アレルギー患者の血清を用いた3種類の免疫学的検査手法により醸造中の小麦アレルゲンを測定した.その結果,製麹中に麹(こうじ)菌が生産する酵素により小麦アレルゲンは分解を受け,さらに諸味(もろみ)中でも経時的に分解されて,生揚(きあげ)や火入れ醤油では小麦アレルゲンは完全に消失していることが明らかとなった.また,10種類の市販醤油(淡口,濃口,再仕込み,白)から小麦アレルゲンは検出されなかった.
著者
古林 万木夫 谷内 昇一郎 田辺 創一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.2, pp.96-101, 2005-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

大豆と小麦は醤油の主原料である。そのうち小麦はアレルギー物質を含む食品として表示が義務づけられている。大豆は義務表示ではなく推奨となっている。筆者らはこれまで全く解明されなかった醤油中の小麦アレルゲンについて測定法を確立し, 製造工程の各段階・原料比の変更等様々な場面を想定して小麦アレルゲンの消失を確認している。その詳細を解説していただいた。大いに参考になるであろう。
著者
古林 万木夫 谷内 昇一郎
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.144-151, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
1

醤油は大豆と小麦を主原料とする日本を代表する発酵調味料の1つであるが, これまで醤油中の両アレルゲンの残存性について詳細な研究が行われていなかった. そこでわれわれは, さまざまな免疫学的検査手法により醤油醸造工程中の小麦アレルゲンならびに大豆アレルゲンの消長を調べた. その結果, 小麦のたんぱく質に比べて大豆のたんぱく質は諸味中では完全に分解されず, 生揚には小麦アレルゲンが残存しないが, 大豆アレルゲンは残存することが確認された. 次の火入工程により, 生揚に残存する大豆アレルゲンが熱変性を受けて火入オリとして不溶化することや, 不溶化した火入オリが, その後のオリ下げ・ろ過工程で除去されることで最終の火入醤油には大豆アレルゲンが残存しないことが確認された. 醤油中のアレルゲンの分解・除去には, 麹・諸味工程に加えて, 火入・オリ下げ・ろ過工程が重要であることが示された.
著者
古林 万木夫
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.304-309, 2007 (Released:2007-05-02)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

Soy sauce is a traditional fermented seasoning of East Asian countries and is available throughout the world. In Japanese soy sauce (shoyu), soybeans and wheat are the two main raw materials, used in almost the same quantity. Proteins of the raw materials are completely degraded into peptides and amino acids by microbial proteolytic enzymes after fermentation, and no allergens of the raw materials are present in soy sauce. In contrast, polysaccharides originating from the cell wall of soybeans are resistant to enzymatic hydrolyses. These polysaccharides are present in soy sauce even after fermentation and termed shoyu polysaccharides (SPS). Soy sauce generally contains about 1% (w/v) SPS and SPS exhibit potent antiallergic activities in vitro and in vivo. Furthermore, an oral supplementation of SPS is an effective intervention for patients with allergic rhinitis in two double-blind placebo-controlled clinical studies. In conclusion, soy sauce would be a potentially promising seasoning for the treatment of allergic diseases through food because of its hypoallergenicity and antiallergic activity.
著者
古林 万木夫 松下 裕昭 真岸 範浩
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.647-651, 2009 (Released:2016-02-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1

日本における醤油の消費量の減少に歯止めをかけるため,醤油の機能性(魅力)をPRすることも一方策と考えられる。日本の国民の約3人に1人が何らかのアレルギーに発症しているといわれるほど,アレルギーは国民病として社会問題化している。そこで,副作用の心配のない,食品由来の抗アレルギー剤の開発が望まれている。さらに,成人女性の約10%は鉄欠乏性貧血であり,約40%は貧血予備軍といわれ,栄養上大きな問題となっている。今回は特にヒト臨床試験において,醤油に約1%含まれる醤油多糖類(SPS)に抗アレルギー作用と免疫調節機能,および鉄吸収促進効果のあることを解説いただいた。
著者
塩谷 育生 築山 良一 古林 万木夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.11, pp.768-774, 2003-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11

醤油は単に調味料というより素材を活かす天然の消臭素材であり, 醤油麹抽出物もまた消臭活性を有する食品素材である。ここでは, 醤油麹抽出物の消臭活性と食品加工への利用について解説していただいた。