著者
森 由紀 大村 知子 大森 敏江 木岡 悦子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.949-958, 1999-09-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10

携行品運搬における背負い方式の有用性に関する研究についてすでに報告した。本報では背負い方式が一般的である小学生の学習用具携行に関する実態調査および実験を行い次のような知見を得た.(1) 通学用鞄のタイプに関して, 個人の自由に任せている学校があったが, 1年生の大部分はランドセルを使用していた.6年生が使用している通学用鞄のタイプは, ランドセルが70。0%, リュックサックが20.4%, その他が9。6%で, 高学年ほどランドセルの使用が減少し多様化する傾向がみられ, ランドセルの体格への不適合もその一因であると推察された.(2) 教師はランドセルの使用について, 両手をあけることの安全性や丈夫であるなどの長所を挙げる一方で, 1年生には重すぎる, 高学年には窮屈で格好が悪いなどの問題点を指摘していた.(3) 通学用鞄に学習用具重量を加えた携行総重量の体重比は, 1年生では平均14.8%, 4年生では 11.2%, 6年生では9.0%であり, 低学年ほど体重の割に重いものを携行していた.学習用具の内容は教科書, ノート, 筆記用具の他, 副教材, 補助教材などであった.(4) 低学年児童を被検者とするランドセル背負い実験では, 荷重圧が肩中央部および腰椎部に大きく加わり, 学習用具重量が増すほど荷重圧も大となった.特に, 肩中央部において静立時の荷重圧に対する歩行時の最大荷重圧の比率が大となる傾向がみられた.(5) 体型によって荷重圧の分布が異なり, 背面が平らな者は肩中央部への荷重圧が大きく, 腰部後面が平らな者は腰椎部への荷重圧が大きいという特徴がみられた.(6) ランドセル背負い時の姿勢観察の結果, 静立時, 歩行時いずれにおいても, 学習用具重量が増すほど前傾姿勢をとることが認められた.以上のことから, 低学年児童にとっては重すぎる負荷を軽減する方策を, 高学年児童には体格に適合する携行方法を, 中身の問題とともにそれぞれ検討する必要があると考えられる.
著者
木岡 悦子 河本 朋子 竹上 真紀子 中野 有美
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.269, 2002-06-01 (Released:2003-07-29)

成長の著しい乳幼児期の子どもの衣服は、着用できる期間が極めて短い。成長に伴う不用衣服がどのように処理されているのか、加えて少子化の現在、ひとりの子どもに対する衣服のもらいすぎ、買いすぎはないか、その実態を明らかにし、それへの提案を試みた。近畿を中心に、0歳から5歳の子どもを持つ母親306名にアンケート調査をした結果、成長に追随できず不用となった衣服やプレゼント衣料の多くが活用されていないことがわかった。不用衣服の処置方法においても、廃棄を含めタンスに保管など、利用されていないものが多いことがわかった。着用機会が少ないセレモニードレスについては、二部式にし、1歳前後の幼児服としても活用できるように製作を行った。
著者
古田 幸子 鈴木 明子 木岡 悦子 森 由紀 高森 壽 菊藤 法 谷山 和美
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.49-58, 1998-01-15
被引用文献数
2

歩き始めの子どもの靴の着用実態を調査し, 着用靴にどのような特徴があるのかを, 足部形状の成長変異の結果をふまえて, サイズ, はかせやすさ等の面から, 検証することを試みた. 主な結果は以下のとおりである. (1) 調査当日の着用靴について, 保育者は「サイズ」「はかせやすさ」を主な購入動機としており, 足への適合性と同程度に, はかせる側の着脱の簡便性が重視されていた. 一方, 半年から1年の間同サイズの靴をはかせている例もみられた. また, ほとんどの者がはかせやすさについては評価の高い靴を着用しているものの, とめ具の様式によってはかせやすさの評価が有意に異なることなどが明らかになった. (2) 乳幼児靴全般を対象にしたサイズ適合に関する実態は, 約3割強が, 大きめのサイズを購入しており, 全体の約半数の者が, 足長を基準に選んだ際, 他の部位が合わない場合があるとの回答であった. 特に足先から甲を覆う部分に関して, 市販靴のゆとり量に問題がある場合が多かった. (3) 足部計測値と着用靴サイズ間の関係を分析した結果, 足高の計測値と靴サイズとの相関が低く, 靴設計において考慮する必要があることが確認された. 本調査を行うに当たり, ご協力いただいた保育園ならびに保護者の皆様に感謝いたします. 本研究の一部は日本家政学会第45回大会において発表した.
著者
大村 知子 木岡 悦子 森 由紀
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.539-549, 1997

阪神大震災の被災者の衣生活行動の経時変化を追跡的に調査することによって, 実態の記録と災害など非常時の着装行動に対する危機管理に関する基礎資料を得て, 衣生活への備え方を探求することを目的として, 被災後の着装行動に関する考察を試みた.<BR>資料は, アンケート形式による質問紙調査を 1995年 7 月に女性被災者 204 名を対象に, さらに追跡調査を第 1 回の調査対象者から無作為に 104 名を抽出し, 1996 年 1 月に実施して得た.<BR>主な結果は以下に示すとおりであった.<BR>(1) 避難時の服装は, 被災程度の大きい地域ほどねまきなど発生時のままで, しかも裸足で避難した例が多く, 着がえてから避難した者は全体の約 3 分の 1 だった. 寒中の早朝に, 着の身着のまま, コートあるいはセーターなどを加えただけで, 靴も履かずに避難したことが明らかにされた.<BR>(2) 履物は, 当日は被害が大きいほど, 裸足やスリッパの利用がみられるなど, 地震発生時間と日本の居住様式による影響が認められた.その後の経時変化は, ライフラインの復旧の進展との関わりが顕著で, 被災の1カ月後は運動靴が過半数であったのに対し, 6 カ月以降は運動靴は 20% 以下となって, 歩きやすい靴に, 次いでヒールの高いおしゃれの要素のある靴が増した.<BR>(3) 自宅の庭・車中などで着がえたなど, 非常時の着脱行動の特徴がみられ, 1 週間以上着がえられなかった例が 5.3% あった. 衣生活に関わる救援活動システムや情報伝達方法に, 多くの課題があることがわかった.<BR>(4) 寝る時の服装の経時変化では, 寝衣を着た者は被災当日の夜が前夜の 28% (47 人), その後も日常着のままが多く, 1カ月後でも寝衣の着用は 53.9% で, 6カ月後にようやく震災前に回復した. 年齢層や性別による違いがみられ, 男性の高齢者の回復が最も遅かった.<BR>(5) 寝具は, 居住環境が劣る被災者ほど, 1 カ月以上も毛布のみで過ごした者が多く, 心身の健康を損なう二次災害の 1 要因になったといえる.<BR>(6) 6カ月以後の衣生活意識では, 75% がおしゃれに関心を持ち, 63.7% の被災者が着たい服装色が直後とは変化し, 1 年後では明るい色, 暖かい色・鮮やかな色を着たい者が多かった. しかし, 灰色など目立たない色を選ぶようになった者もあり, 装いの心が復活する傾向が強い反面, 震災によって着装意識が変化した者もみられた.<BR>以上の結果から, 緊急時への危機管理に関しては, 日常生活の延長上に非日常の生活があることを認識することが重要であり, わが国においては都市型の衣生活に対する危機管理を検討する必要性がわかった.サバイバルスキルの教育, 危機管理の教育の必要性とこられの早期実践の重要性を提言した.
著者
木岡 悦子 森 由紀 大森 敏江 大村 知子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.647-656, 2001-07-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

中学生の学習用具携行の実態に基づいて, 通学用鞄の携行方法による負荷を実験観察により検討した.被検者は中学生6名, 携行重量を6kgとし, 携行の方法は背負い式と肩掛け式とし, 肩掛けの仕方を斜めにクロスする方法と片側におろす二つの方法に分けた.負荷実験の内容は通学用鞄を掛けた状態での支持基底面の重心動揺測定, 直立時および歩行時の姿勢変異の観察, 肩中央部にかかる荷重圧の測定である.結果は以下の通りであった.(1) 鞄を片側に掛ける方式では, その対照として測定した無所持の場合と比較して, 支持基底面の重心動揺の単位面積軌跡長が小さいという結果が得られた.被検者自身が姿勢のくずれを細かく制御しにくい状態であると解された.(2) 支持基底面の重心動揺軌跡やその外郭内の面積等には被検者固有のパターンが発現し, 姿勢制御機能に個人差のあることが認められた.(3) 通学用鞄の携行方法別姿勢をシルエッター写真から観察した結果, 肩掛け式では鞄を提げた側と反対の方向への傾きが大きく, 無所持の場合と比較して有意に差のあることが認められた.片側式の場合では全身を傾斜させており, 斜め式では胴部でくねらせた状態での傾きが大であることが認められた.背負い式では前傾姿勢がみられ, いずれも鞄装着による負荷を姿勢の傾きによってバランスさせていることがわかった.(4) 肩中央部に加わる荷重圧は片側式の場合が最も大で, 直立時の平均値は53.0kPa, 歩行時最大値が102.4kPaであった.背負い式の場合が最も小さく, 各携行方法問に有意な差がみられた.(5) 実験終了後の着用感では, 片側式において肩への痛み・重量感や歩きにくさなどの負荷を感じたのに対し, 背負い式が最も負荷を感じなかったという結果が得られ, 実験結果と一致した.通学用鞄の携行に関する問題を, 中学生の心身をまもり育てるための類被服の観点からとらえ, 解決への具体的な方策をすすめていくべきであると考える.
著者
森 由紀 大村 知子 大森 敏江 木岡 悦子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.949-958, 1999-09-15
被引用文献数
3

We made a study of the on-the-back carrying system for primary school children as part of our series of studies on age-related practices and physical effects of carrying methods. In our previous report, we referred to the advantage of free-hand carrying for aged persons. We investigated school bags at 30 primary schools in the Kinki and Tokai districts, using 2,945 children as subjects. It was determined that the stiff bag Randoseru is the most popular among first graders, while the higher the grade, the less the Randoseru is used. In addition, we found that the lower the grade, the bigger the ratio of burden weight to body weight. We selected six subjects from among lower gladers to measure burden pressure upon their shoulder center and lumbar vertebra while carrying a fixed-weight-contained Randoseru, either in standing or walking position. As a result, they showed forward-inclined posture, the inclination increasing with the adding of Randoseru weight. Hereby, we bring to light the necessity of reducing the school goods that children carry daily between home and school to only those which are essential in order for these growing children to keep constant upright postures.
著者
森 由紀 伊神 久美子 杉田 明子 木岡 悦子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.233-240, 2005-04-15
被引用文献数
1

Pajamas are worn for long hours in direct contact with one's skin : so we assume that the contact sensation of the material of pajama cloth might influence the quality of one's sleep. In this study, we looked at pajamas made of RAFUMA-mixed cotton cloth, which is called "Wearable Chinese medicine" which is said to be good for one's health, and studied clothing comfort through wearing experiments. Subjects wore RAFUMA-mixed cotton pajamas (A) and nylon-mixed cotton pajamas (B) alternately. Their biological reactions were measured and subjective examinations were also performed. In Wearing Experiment (I), the subjects' EEGs were measured for 30 min when wearing pajamas. In Wearing Experiment (II), subjects' hormone secretion levels and skin temperature during normal sleep were measured. The EEG measurement results showed a significantly high ratio of α-waves when the subjects were wearing pajamas (A), proving that the subjects were in a state of relaxation at the time. It was also observed that melatonin secretion was promoted and small skin temperature differences occurred between the trunk and peripheral regions. From these observations, it is suggested that one can obtain effective sleep while wearing pajamas (A). The biological reactions observed while subjects wore RAFUMA-mixed cotton pajamas coincided with the results of the subjective examinations on wearing comfort and feeling of sound sleep.