著者
岩永 希 原田 康平 辻 良香 川原 知瑛子 黒濱 大和 和泉 泰衛 吉田 真一郎 藤川 敬太 伊藤 正博 川上 純 右田 清志
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.478-484, 2016 (Released:2016-10-30)
参考文献数
21
被引用文献数
11

症例は25歳女性.2013年6月前医で原発性シェーグレン症候群と診断.2014年7月発熱,著明な炎症反応,全身リンパ節腫脹,肝脾腫を認め前医に入院.抗生剤(ceftriaxone,meropenem)を投与,ステロイドを増量(PSL 50mg)するも無効で,急速に進行する全身浮腫を認め当院へ転院.リンパ節生検では好中球浸潤を認め,骨髄穿刺では巨核球増加と線維化を認めた.minomycinを併用したところ,発熱・全身浮腫・炎症反応は徐々に改善したが,貧血・血小板減少を認めていた.感染症を疑いステロイドを減量したところ,再び発熱,浮腫・胸腹水の出現,血小板減少・貧血の増悪を認めた.ステロイドパルス,ステロイド再増量を行うも治療抵抗性で,cyclosporin(CyA)を併用し軽快した.典型的なリンパ節の病理像を認めなかったが,本症例の臨床像はTAFRO症候群と酷似していた.TAFRO症候群は,Castleman病の一亜型と考えられているが,感染,リウマチ性疾患,悪性腫瘍などによる高サイトカイン血症により二次的に生じ得るとされている.本症例では原発性シェーグレン症候群を背景に発症し,化膿性リンパ節炎様のリンパ節病理像を認めた点が興味深いと考え報告する
著者
岡部 浩祐 和泉 泰衛 宮下 賜一郎 入野 健佑 川原 知瑛子 地内 友香 野中 文陽 江口 勝美 川上 純 右田 清志
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.61-67, 2014 (Released:2014-03-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は35歳男性.ぶどう膜炎,炎症所見,大動脈の主要分岐部の動脈壁の肥厚を認め,高安動脈炎の診断のもと,プレドニゾロン(40 mg/day)とメトトレキサート(6 mg/week)で治療が開始され症状の改善を認めていた.治療開始2年後に,躁症状などの精神症状が出現し,精査のため入院となった.神経学的所見,頭部MRI,脳血流シンチでは異常認めなかったが,髄液検査でIL-6の上昇(65.4 pg/ml),血清IgDの増加を認め神経ベーチェット病が疑われた.血管病変の存在と併せて,特殊型ベーチェット病と診断し,インフリキシマブの投与を開始した.30歳時より周期性発熱の病歴がありMEFV遺伝子解析を行った所,エクソン2にE148Q/L110P複合ヘテロ変異を認めた.これら遺伝子異常が,本症例の非典型的なベーチェット病の病態に関与している可能性があり文献的考察をふまえ報告する.
著者
右田 清志 上松 一永
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.355-360, 2011 (Released:2011-10-31)
参考文献数
21
被引用文献数
11 11 3

家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever, FMF)は,持続期間が比較的短い(1~3日)周期性発熱と漿膜炎を主徴とする遺伝性の自己炎症疾患である.2009年に行った全国調査の結果では,日本における推定患者数は,約300人で各種臨床症状の頻度は,発熱が95.5%,胸痛(胸膜炎症状)が35.8%,腹痛(腹膜炎症状)62.7%,関節炎が31.3%であった.またAA amyloidosisは5名(3.7%)に確認された.治療に関しては,コルヒチンが91.8%の患者で有効であった.本邦において一定数のFMF患者が存在しており,重篤な合併症であるAA amyloidosisを予防するためにも早期診断,早期治療介入が望まれる.
著者
樋口 理 向野 晃弘 中根 俊成 前田 泰宏 小森 敦正 右田 清志 八橋 弘 中村 英樹 川上 純 松尾 秀徳
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.334a-334a, 2014 (Released:2014-10-07)

【背景と目的】全身性および臓器特異的自己免疫疾患では,古くから自律神経障害を伴う症例が知られるが,その分子病態は未解明である.近年,急性あるいは慢性経過を示し,広汎な自律神経障害を呈す自己免疫性自律神経節障害(AAG)の主因が,自律神経節後シナプス領域に局在するganglionicアセチルコリン受容体(gAChR)に対する自己抗体であることが多角的実験手法により証明され,自律神経障害における自己抗体介在性の分子病態の存在が注目されている.本研究では,膠原病や自己免疫性慢性肝疾患における抗gAChR抗体の陽性率を解明する.【方法と結果】長崎大学病院と長崎医療センターにて集積された自己免疫疾患217症例(関節リウマチ,シェーグレン症候群,全身性エリテマトーデス,自己免疫性肝炎,原発性胆汁性肝硬変,その他関連症例を含む)を対象とした抗gAChR抗体探索を実施し,平均22.6%の抗体陽性率を確認した.一方,抗gAChR抗体検査目的で当院に送付された著明な自律神経障害を呈する自己免疫疾患合併12症例の血清検体では,50%(6/12)の抗体陽性率を確認した.【結論】膠原病や自己免疫性慢性肝疾患に抗gAChR抗体が潜在することが明らかとなった.特に,広汎かつ著明な自律神経障害を呈す症例はAAGに匹敵する抗体陽性率を示し,当該抗体と各種自律神経症状の因果関係が疑われた.