著者
本多 裕一 榊 英一 吉塚 久記 永尾 泰司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.961-965, 2015 (Released:2016-01-09)
参考文献数
6

〔目的〕脚長差出現時のstrategyとしての伸び上がりに着目し,関与する筋の活動量の変化を明らかにすることとした.〔対象〕脚長差のない健常人10名とした.〔方法〕足底に補高することで人為的な脚長差歩行を行い,表面筋電図計を用いて測定される伸び上がりに関与すると考えられる下肢筋の活動量を正常歩行時と比較した.〔結果〕補高3cmで前脛骨筋の,4cmで大腿直筋,前脛骨筋,腓腹筋の活動量に有意な増加がみられた.〔結語〕脚長差出現による伸び上がりに伴うと考えられる筋の過活動が認められたことから,この歩容変化と,さらに機能障害が発生する可能性を推察することは,脚長差に対する理学療法介入において有益である.
著者
光武 翼 植田 耕造 吉塚 久記 江越 正次朗 大古場 良太 堀川 悦夫
出版者
公益社団法人 佐賀県理学療法士会
雑誌
理学療法さが (ISSN:21889325)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.7-16, 2017-02-28 (Released:2017-04-12)
参考文献数
29

[目的]本研究の目的は重度脳卒中片麻痺患者を対象に,理学療法士(PT)と理学療法学科学生(PTS)が介助した時の患者と介助者の身体動揺を比較することとした。[方法]脳卒中片麻痺患者 8 名に対し,PT もしくは PTS が後方から歩行を介助した。加速度センサを患者と介助者の両方に設置し,root meansquare(RMS)によって歩行介助時の身体動揺を測定した。PT と PTS との介助者の違いと垂直,側方,前後方向の身体動揺について二元配置分散分析を用いて比較した。[結果]PTS の歩行介助では PT より患者,介助者ともに RMS が高値を示し,側方成分 RMS が垂直,前後成分 RMS より有意に高かった(p<0.001)。[結論]PTS の歩行介助では PT より身体動揺が大きく,特に側方への動揺が大きくなることが考えられる。
著者
黒川 洸成 長澤 由香子 光武 翼 吉塚 久記
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.2023-003, (Released:2023-06-12)

本研究は,超音波療法後の腓腹筋の筋硬度変化を検討し,超音波療法が腓腹筋の各部位へ及ぼす影響の違いを明らかにすることを目的とした.健常大学生20名を対象として,腓腹筋内側頭の近位部・筋腹部・遠位部へ周波数3 MHzの超音波療法を実施した.筋硬度の評価にはストレインエラストグラフィによる歪み値を採用し,皮膚から腓腹筋最深部までの距離は超音波画像を用いて計測した.本研究の結果,腓腹筋の筋腹部と遠位部の歪み値は介入後に有意に減少した一方,近位部の歪み値は介入前後で有意差が認められなかった.また,近位部の皮膚から腓腹筋最深部までの距離は,筋腹部や遠位部よりも有意に大きかった.腓腹筋に対する周波数3 MHzの超音波療法では,部位によって影響が異なることが示唆され,腓腹筋最深部までの距離の違いはその要因であると考えられる.腓腹筋の超音波療法では,組織深度を考慮した部位別の照射設定の検討が必要である.
著者
中村 朋博 吉塚 久記 吉住 浩平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2116, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 足部は歩行中、床面に唯一接している体節であることから、足部内の位置的変化は上位関節の運動連鎖の変容を生じさせるとの報告がある。その中でも距骨下関節は近位の骨・関節への荷重伝達の中核をなすため、同関節の機能的な破綻は立脚期の身体全体に影響を及ぼすものと考えられる。 臨床では、 距骨下関節・横足根関節過回内を呈した症例を多く経験するが、その様な症例では回内側立脚初期において円滑な重心移動が阻害されている印象を受ける。しかし、足部に関する三次元解析機器を用いた先行研究は少ない。そこで、距骨下関節の回内固定により、床反力および下肢関節モーメントに如何なる影響が生じるかを検討した。【方法】 対象は足部に整形外科的、神経学的既往を有さない健常成人15名(男性15名、平均年齢20.8±1.5歳、平均身長169.6±3.4cm、平均体重61.0±3.5kg)とした。被検者の反射マーカーの設置は臨床歩行分析研究会の推奨する15点マーカー法を採用した。解析動作は自由歩行と距骨下関節回内固定の2条件とし、それぞれ至適速度での歩行を三次元動作解析システムVICONMOTION SYSTEM社製VICON MX・AMTI社製床反力計)を用いてサンプリング周波数100Hzにて計測した。また、距骨下関節の固定は非伸縮性ホワイトテープを使用し、距腿関節底背屈に制限を与えずに川野の扇型スパイラル法で利き足を測定肢とし、回内位で固定した。比較項目は利き足側下肢の立脚期における床反力鉛直成分・床反力前後成分・足関節底背屈モーメントのピーク値と積分値であり、それぞれを体重で正規化した。また、床反力鉛直成分に関しては立脚期中に示す二峰性波形の第一頂点に到達する時間も算出した。なお、統計学的解析には対応のあるt検定を用い危険率は5%未満とした。【説明と同意】 ヘルシンキ宣言を遵守し、全ての被検者に研究主旨を説明後、紙面にて同意を得た。 【結果】 足関節背屈モーメントのピーク値は自由歩行0.154±5.9%,回内歩行0.100±0.3%となり、回内歩行時では有意に低下していた。(p>0.01)。また、床反力鉛直成分の第一頂点までの所要時間は自由歩行0.125±3.3秒、回内歩行0.135±3.3秒となり、回内歩行時では有意に低下していた(p>0.05)。なお、その他の床反力前後成分・足関節底屈モーメントには有意差が認められなかった。【考察】 床反力鉛直成分の第一頂点に至る過程は歩行時の踵接地から足底接地の時期に該当する。今回、距骨下関節を回内固定することにより、踵接地から足底接地において有意な所要時間の遅延が認められた。入谷は距骨下関節回内位では、立脚初期に重心移動の時間的停滞が出現すると報告している。 一般的に、踵接地の距骨下関節回内位では距骨が踵骨に対して底屈することにより距腿関節は背屈方向へと偏位し、距骨下関節回内を伴った距腿関節背屈は足部全体を外反位にしやすくなる。また、足部外反位は距腿関節背屈の主動作筋と補助筋のバランスを変化させる。そのため、踵接地から足底接地に移行する際の足関節底屈への制動が阻害されやすく、足関節背屈モーメントが低下したものと推察される。 今回、距骨下関節回内固定に伴う足関節背屈モーメントのピーク値が低下したにも関わらず、踵接地から足底接地までの所要時間が遅延したのは、距骨下関節回内により距腿関節が背屈方向へ偏位した結果として、踵接地時の距腿関節の底背屈の切り替えが遅延し、踵接地から足底接地までの所要時間の遅延が生じたものと推測される。【理学療法学研究としての意義】 今回の結果から距骨下関節の回内変位は立脚初期の荷重のタイミングを遅延させる因子となるとともに足関節背屈モーメントを低下させることが分かった。このことから、距骨下関節の回内変位は立脚初期の下肢の荷重機構に大きな影響を及ぼすとともに足関節背屈筋群に対して大きなストレスを加えている可能性があると考える。今後は症例数を増やし立脚初期だけではなく、立脚中期以降の多角的視点から歩行を分析する必要があると考えられる。