著者
吉住 浩平 永井 良治 金子 秀雄 吉野 絵美 梅田 泰光 大木 誠竜
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P1114, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】月経時において仙腸関節痛を訴える女性は多い.一般に仙腸関節の疼痛に関して、その不安定性が大きな影響を与えていると考えられている.今回、月経時と非月経時の仙腸関節の安定性について比較し、仙腸関節不安定性の有無についての検討をおこなった.【方法】対象は健常女性13名(平均年齢25.4±3.3歳).仙腸関節痛の評価として、仙腸関節痛の再現テストであるPosterior Pelvic Pain Provocation test(以下、PPPP)を実施し、疼痛発生の有無を聴取した.仙腸関節の安定性の評価として下肢伸展挙上運動(以下、 ASLR-t:Active Straight Leg Raise test)を用いた.ASLR-testにおいて主観的運動強度(6段階評価、0:非常に楽である~5:不可能)を聴取するとともに、20cm挙上位における股関節屈曲運動の随意的最大等尺性収縮トルク(以下、股関節屈曲トルク)を等速度運動器(Chattex社製KIN/COM500H)を用いて測定した.測定時期は月経時、非月経時で、股関節屈曲トルクの測定は4秒間の等尺性収縮時の最大トルクを計測した.左右とも4回行い、PPPPにて疼痛を認めるものに関しては疼痛側を、疼痛を認めないものに関しては任意の一側のASLR-tから得られたデータの最大値、最小値を除いた値の平均値を採用した.また、個人差を考慮して得られた股関節屈曲トルクを下肢長、体重で正規化(Nm/Kg)した.計測に先立ち、被験者に本研究の趣旨を口頭、書面にて説明し、研究参加への同意を得た.統計処理に関して主観的運動強度についてはWilcoxon符号付順位和検定を、股関節屈曲トルクについてはt検定を用いた.なお、有意水準は5%未満とした.【結果】主観的運動強度と股関節屈曲トルクに関して有意な差を認めた(p<0.05).ASLR-test時の主観的運動強度は非月経時に1.0点、月経時に2.1点であり、月経時において有意に主観的運動強度の増加を認めた.股関節屈曲トルクは非月経時1.12Nm/kg、月経時は0.92Nm/kgであり、月経時において有意に低値を示した.なお、月経時のPPPPに伴い仙腸関節痛が発生したのは13名中8名であった.【考察】仙腸関節の安定性の評価としてASLR-testは妥当性・信頼性共に高いテストである.今回得られた結果より、月経時に仙腸関節の不安定性が存在する可能性が示唆された.このため月経時の仙腸関節痛に関して、仙腸関節の不安定性という機械的因子も関与している可能性があると考えることができる.
著者
松田 憲亮 本間 和也 吉住 浩平 永井 良治 中原 雅美 金子 秀雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.81-85, 2012 (Released:2012-02-21)
参考文献数
21
被引用文献数
2

〔目的〕皮膚冷却刺激下での中殿筋低負荷トレーニング効果と筋活動変化を検討することである.〔対象〕健常成人男性32名を対象とした.〔方法〕対照群と皮膚冷却群に分け,低負荷での股関節外転運動からなるトレーニングを6週間実施した.隔週で等尺性股関節外転最大筋力と中殿筋の表面筋電図を測定した.皮膚冷却群では最大随意収縮時および最大随意収縮時を基準としてその30%の負荷量時の積分値と平均周波数を測定し,トレーニング開始時を100%として正規化し比較した.また,冷却部位の皮下組織厚,皮膚表面,深部組織温度を計測した.〔結果〕等尺性最大筋力は皮膚冷却群で4~6週後有意に増加した.筋積分値は6週後,有意に増加したが,平均周波数の変化は認められなかった.〔結語〕皮膚冷却刺激下での中殿筋低負荷トレーニングでは,有意な筋力増強効果が認められた.筋力増強には皮膚冷却刺激による運動単位動員の促進とtype I線維における筋活動特異性や運動強度が反映されていることが示唆され,type II線維の活動増加については判別できなかった.
著者
多々良 大輔 吉住 浩平 野崎 壮 原田 伸哉 中元寺 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0485, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 側臥位での股関節外転運動は、診療場面にて検査もしくはトレーニングとして使用することが多い。主動作筋である中殿筋の機能に関する報告は、腰椎の側屈、股関節屈曲などの代償運動を考慮して、背臥位での計測結果を報告したものが多いが、側臥位では腰椎-骨盤帯の安定性に関与する腹壁筋、傍脊柱筋の作用により固定筋としての作用が得られないと、効果的な外転筋の発揮は困難である。本研究の目的は、側臥位にて寛骨非固定、固定下での等尺性股関節外転運動を行った際の中殿筋、内腹斜筋、腰方形筋、腰部多裂筋の活動を表面筋電図にて計測・比較し、主動作筋である中殿筋と他の固定筋との関係性を明らかにすることである。【方法】 健常男性15名(平均年齢:25.9±3.0歳、身長:175.3±6.7cm、体重:66.4±7.5kg)、全例、効き足が右の者で、腰痛を有していない者を対象とした。被験筋は、中殿筋、内腹斜筋、腰方形筋、腰部多裂筋の4筋とした。表面電極は皮膚処理を十分行った上で、日本光電社製NCS電極NM-317Y3を使用し、Cynnの記述を参考に20mm間に貼付した。表面筋電計は日本光電社製NeuropackS1を用いて、サンプリング周波数1000Hzにて、上記4筋について、それぞれ徒手筋力検査(manual muscle testing:MMT)の肢位に準じて、各筋の等尺性収縮を最大随意収縮強度(100%MVC:maximal voluntary contraction)を計測した。測定肢位は側臥位、両上肢は胸骨の前面で組ませ、頭頂・耳孔・肩峰・大転子が一直線上になるようポジショニングを行った。股関節角度は伸展10度、外転25度の位置に膝関節外側裂隙から近位3cmの部位に接するように平行棒を設置・固定し、大腿遠位部が平行棒に触れる直前にて保持するように指示し、寛骨非固定下、骨盤固定下の2条件にて股関節外転運動を等尺性収縮にて行った。測定時間は5秒間とし、前後1秒間を除いた中間の3秒間にて、積分値が最大となる0.2秒間を1000Hzにてサンプリングし、各筋の随意収縮強度(%MVC)を算出、比較を行った。なお、各群ともに1分間の休息を挟んで3回実施し、平均値を算出した。寛骨の固定は同一検者にて、各測定前にハンドダイナモメーター(Hoggan社製:MicroFET2)を用いて、80Nにて圧迫を加えられるよう十分な練習を行ってから、上側となる腸骨稜から仙腸関節を圧縮する方向に徒手的に圧迫を加えた。統計処理は寛骨非固定下(以下、A群)、寛骨固定化(以下、B群)における各筋の%MVCについて、中殿筋・腰部多裂筋はt検定を、内腹斜筋・腰方形筋についてはWilcoxon符号順位検定を用い、有意水準5%未満にて分析した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の主旨を書面にて説明し、参加に同意を得た者を対象とした。【結果】 A群では中殿筋:43.3±13.1%、内腹斜筋:31.6±29.4%、腰方形筋:30.9±10.2%、腰部多裂筋:25.5±12.3%、B群では中殿筋:31.5±14.7%、内腹斜筋:19.2±15.6%、腰方形筋:29.6±16.6%、腰部多裂筋:28.1±14.8%となった。A群と比較し、B群では中殿筋、内腹斜筋が低値を示した(p<0.05)。【考察】 寛骨の固定により、主動作筋である中殿筋の筋長は変化しないにも関わらず、%MVCが低値を示したことから、起始となる寛骨の安定性が提供されることで、効率的な筋活動にて外転位保持が可能となったと考えられる。側臥位での股関節外転運動では、腰椎-骨盤帯-股関節複合体として、関与する筋群の協調した運動制御が重要であることが示唆された。診療場面において、寛骨の固定により非固定時よりも中殿筋の出力が容易となることが確認できた場合、寛骨の安定化に関わる固定筋の賦活も併せてアプローチすることが重要である。今後は同様の計測条件にて、寛骨固定の有無による股関節外転筋トルクの変化を算出・比較するとともに、周波数解析を用いて各筋の質的因子の変化について検討していきたい。
著者
多々良 大輔 吉住 浩平 野崎 壮 原田 伸哉 中元寺 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb0485, 2012

【はじめに、目的】 側臥位での股関節外転運動は、診療場面にて検査もしくはトレーニングとして使用することが多い。主動作筋である中殿筋の機能に関する報告は、腰椎の側屈、股関節屈曲などの代償運動を考慮して、背臥位での計測結果を報告したものが多いが、側臥位では腰椎-骨盤帯の安定性に関与する腹壁筋、傍脊柱筋の作用により固定筋としての作用が得られないと、効果的な外転筋の発揮は困難である。本研究の目的は、側臥位にて寛骨非固定、固定下での等尺性股関節外転運動を行った際の中殿筋、内腹斜筋、腰方形筋、腰部多裂筋の活動を表面筋電図にて計測・比較し、主動作筋である中殿筋と他の固定筋との関係性を明らかにすることである。【方法】 健常男性15名(平均年齢:25.9±3.0歳、身長:175.3±6.7cm、体重:66.4±7.5kg)、全例、効き足が右の者で、腰痛を有していない者を対象とした。被験筋は、中殿筋、内腹斜筋、腰方形筋、腰部多裂筋の4筋とした。表面電極は皮膚処理を十分行った上で、日本光電社製NCS電極NM-317Y3を使用し、Cynnの記述を参考に20mm間に貼付した。表面筋電計は日本光電社製NeuropackS1を用いて、サンプリング周波数1000Hzにて、上記4筋について、それぞれ徒手筋力検査(manual muscle testing:MMT)の肢位に準じて、各筋の等尺性収縮を最大随意収縮強度(100%MVC:maximal voluntary contraction)を計測した。測定肢位は側臥位、両上肢は胸骨の前面で組ませ、頭頂・耳孔・肩峰・大転子が一直線上になるようポジショニングを行った。股関節角度は伸展10度、外転25度の位置に膝関節外側裂隙から近位3cmの部位に接するように平行棒を設置・固定し、大腿遠位部が平行棒に触れる直前にて保持するように指示し、寛骨非固定下、骨盤固定下の2条件にて股関節外転運動を等尺性収縮にて行った。測定時間は5秒間とし、前後1秒間を除いた中間の3秒間にて、積分値が最大となる0.2秒間を1000Hzにてサンプリングし、各筋の随意収縮強度(%MVC)を算出、比較を行った。なお、各群ともに1分間の休息を挟んで3回実施し、平均値を算出した。寛骨の固定は同一検者にて、各測定前にハンドダイナモメーター(Hoggan社製:MicroFET2)を用いて、80Nにて圧迫を加えられるよう十分な練習を行ってから、上側となる腸骨稜から仙腸関節を圧縮する方向に徒手的に圧迫を加えた。統計処理は寛骨非固定下(以下、A群)、寛骨固定化(以下、B群)における各筋の%MVCについて、中殿筋・腰部多裂筋はt検定を、内腹斜筋・腰方形筋についてはWilcoxon符号順位検定を用い、有意水準5%未満にて分析した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の主旨を書面にて説明し、参加に同意を得た者を対象とした。【結果】 A群では中殿筋:43.3±13.1%、内腹斜筋:31.6±29.4%、腰方形筋:30.9±10.2%、腰部多裂筋:25.5±12.3%、B群では中殿筋:31.5±14.7%、内腹斜筋:19.2±15.6%、腰方形筋:29.6±16.6%、腰部多裂筋:28.1±14.8%となった。A群と比較し、B群では中殿筋、内腹斜筋が低値を示した(p<0.05)。【考察】 寛骨の固定により、主動作筋である中殿筋の筋長は変化しないにも関わらず、%MVCが低値を示したことから、起始となる寛骨の安定性が提供されることで、効率的な筋活動にて外転位保持が可能となったと考えられる。側臥位での股関節外転運動では、腰椎-骨盤帯-股関節複合体として、関与する筋群の協調した運動制御が重要であることが示唆された。診療場面において、寛骨の固定により非固定時よりも中殿筋の出力が容易となることが確認できた場合、寛骨の安定化に関わる固定筋の賦活も併せてアプローチすることが重要である。今後は同様の計測条件にて、寛骨固定の有無による股関節外転筋トルクの変化を算出・比較するとともに、周波数解析を用いて各筋の質的因子の変化について検討していきたい。
著者
中村 朋博 吉塚 久記 吉住 浩平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2116, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 足部は歩行中、床面に唯一接している体節であることから、足部内の位置的変化は上位関節の運動連鎖の変容を生じさせるとの報告がある。その中でも距骨下関節は近位の骨・関節への荷重伝達の中核をなすため、同関節の機能的な破綻は立脚期の身体全体に影響を及ぼすものと考えられる。 臨床では、 距骨下関節・横足根関節過回内を呈した症例を多く経験するが、その様な症例では回内側立脚初期において円滑な重心移動が阻害されている印象を受ける。しかし、足部に関する三次元解析機器を用いた先行研究は少ない。そこで、距骨下関節の回内固定により、床反力および下肢関節モーメントに如何なる影響が生じるかを検討した。【方法】 対象は足部に整形外科的、神経学的既往を有さない健常成人15名(男性15名、平均年齢20.8±1.5歳、平均身長169.6±3.4cm、平均体重61.0±3.5kg)とした。被検者の反射マーカーの設置は臨床歩行分析研究会の推奨する15点マーカー法を採用した。解析動作は自由歩行と距骨下関節回内固定の2条件とし、それぞれ至適速度での歩行を三次元動作解析システムVICONMOTION SYSTEM社製VICON MX・AMTI社製床反力計)を用いてサンプリング周波数100Hzにて計測した。また、距骨下関節の固定は非伸縮性ホワイトテープを使用し、距腿関節底背屈に制限を与えずに川野の扇型スパイラル法で利き足を測定肢とし、回内位で固定した。比較項目は利き足側下肢の立脚期における床反力鉛直成分・床反力前後成分・足関節底背屈モーメントのピーク値と積分値であり、それぞれを体重で正規化した。また、床反力鉛直成分に関しては立脚期中に示す二峰性波形の第一頂点に到達する時間も算出した。なお、統計学的解析には対応のあるt検定を用い危険率は5%未満とした。【説明と同意】 ヘルシンキ宣言を遵守し、全ての被検者に研究主旨を説明後、紙面にて同意を得た。 【結果】 足関節背屈モーメントのピーク値は自由歩行0.154±5.9%,回内歩行0.100±0.3%となり、回内歩行時では有意に低下していた。(p>0.01)。また、床反力鉛直成分の第一頂点までの所要時間は自由歩行0.125±3.3秒、回内歩行0.135±3.3秒となり、回内歩行時では有意に低下していた(p>0.05)。なお、その他の床反力前後成分・足関節底屈モーメントには有意差が認められなかった。【考察】 床反力鉛直成分の第一頂点に至る過程は歩行時の踵接地から足底接地の時期に該当する。今回、距骨下関節を回内固定することにより、踵接地から足底接地において有意な所要時間の遅延が認められた。入谷は距骨下関節回内位では、立脚初期に重心移動の時間的停滞が出現すると報告している。 一般的に、踵接地の距骨下関節回内位では距骨が踵骨に対して底屈することにより距腿関節は背屈方向へと偏位し、距骨下関節回内を伴った距腿関節背屈は足部全体を外反位にしやすくなる。また、足部外反位は距腿関節背屈の主動作筋と補助筋のバランスを変化させる。そのため、踵接地から足底接地に移行する際の足関節底屈への制動が阻害されやすく、足関節背屈モーメントが低下したものと推察される。 今回、距骨下関節回内固定に伴う足関節背屈モーメントのピーク値が低下したにも関わらず、踵接地から足底接地までの所要時間が遅延したのは、距骨下関節回内により距腿関節が背屈方向へ偏位した結果として、踵接地時の距腿関節の底背屈の切り替えが遅延し、踵接地から足底接地までの所要時間の遅延が生じたものと推測される。【理学療法学研究としての意義】 今回の結果から距骨下関節の回内変位は立脚初期の荷重のタイミングを遅延させる因子となるとともに足関節背屈モーメントを低下させることが分かった。このことから、距骨下関節の回内変位は立脚初期の下肢の荷重機構に大きな影響を及ぼすとともに足関節背屈筋群に対して大きなストレスを加えている可能性があると考える。今後は症例数を増やし立脚初期だけではなく、立脚中期以降の多角的視点から歩行を分析する必要があると考えられる。