著者
吉岡 一男 Kazuo Yoshioka
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the University of the Air (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
no.19, pp.95-112, 2002-03-31

おうし座RV型星は、主極小と副極小を交互にくり返す光度変化に特徴がある半規則的な変光星である。この変光星は、光度変化をもとにRVa型とRVb型に細分類されており、RVb型が脈動周期の光度変化に重なって長周期の光度変化を示すのに対して、RVa型にはそのような長周期変化は見られない。また、この変光星は可視域のスペクトルをもとに、酸素過剰なAグループと炭素過剰なB,Cグループに細分類されている。 われわれは、国立天文台堂平観測所の91cm反射望遠鏡を用いて、おうし座RV型変光星の多色偏光観測を行った。観測された17個の星の内、4個の星に対してはすでに星間偏光成分を取り除いて固有偏光成分を求めている。 本論文では、さらに2個の星、おうし座RV星とヘルクレス座AC星の固有偏光成分の特徴を報告する。星間偏光成分はnear-neighbor法を一部変えた方法で求めた。ヘルクレス座AC星に対して求めた星間偏光成分の方が信頼度は高い。 おうし座RV星に対する星間偏光成分は小さいので、その特徴は観測された偏光に対するものと大きくは違わない。この星の固有偏光成分は、脈動周期に伴う時間変動とともに長周期光度変化に伴う変動も行う。この星の固有偏光成分の偏光度は中間の波長域で極大値をとり、Aグループの星の傾向に従う。ヘルクレス座AC星の固有偏光成分は、脈動周期に伴う時間変動とともに公転周期に伴う変動も行う。この星の固有偏光成分の偏光度は、短波長側で波長の滅少とともに増加するが、これはこの星の星周圏ダストが2種類の異なるサイズをもっことを示唆している。
著者
吉岡 一男 Kazuo Yoshioka
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of the University of the Air (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.107-120, 2000-03-31

夜空が何故暗いか? という疑問が17世紀に指摘されて以来,一部の天文学者を悩ましていた.それは,恒星が宇宙空間に無限に広がって輝いているならば夜空が昼間よりもはるかに明るいことになる,という現実とは異なる結論が導かれるからである.これをオルバースのパラドックスという.それを回避するために,宇宙有限説,孤立宇宙説,無限階前説,吸収説など様々な説が唱えられた.しかし,いずれの説も成り立たないことがわかった. 現在,ハッブルの法則に従う宇宙の膨張によりこのパラドックスが回避されると考えられている.すなわち,宇宙の膨張から帰結される宇宙年齢の有限性と宇宙の膨張に伴う膨張効果(ドップラー効果と希釈効果)によりパラドックスは回避される. しかし,通俗書に書かれているパラドックスの記述には,歴史の記述が不正確であったり,パラドックスの回避の説の記述が誤解を招いたり誤っている本が見られる.また,宇宙年齢の有限性の効果の方が膨張効果よりも圧倒的に効くのにその記述も見られない. 一方,宇宙の膨張を持ち出さなくても恒星の寿命が有限で空間密度が低いことでパラドックスを回避できる,と考えることもできるが,その場合も現在恒星が輝いていることの自然な説明を宇宙の膨張が与えることを指摘した.また,パラドックスが認識されるためには,背景となる理論が確立されている必要のあることも指摘した.
著者
吉岡 一男
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.65-84, 1986

成長曲線法は,モデル大気法とともに,恒星の大気の分光分析の方法としてよく用いられる.この方法では,恒星の吸収線の励起ポテンシャルや測定された等価幅の値などをもとに描かれた経験成長曲線と最もよく一致する理論成長曲線を選び出すことにより,その恒星の大気の励起温度などの物理量を求めている.従来,この両曲線の一致は目測でなされていたので,得られた結果に個人差があり,また,誤差の客観的な見積りが困難だった.この欠点をなくすためにコンピューターを用いた解析もいくつか試みられてきている. 本研究では,過去になされた計算機による方法を改良し,マイコン用に変換したプログラムを用いた二つのタイプの成長曲線解析法が開発された.そして,BaII星の一つであるやぎ座ζ星に対して,過去にコンピューターを用いて相対成長曲線法でなされたのと同じデータを用いて,本研究で開発された二つの方法で解析がなされ,過去の結果と比べられた.その結果,一方の方法の優位性が示されたが,同時に,結果が理論成長曲線の選択に非常に大きく依存する場合のあることがわかった.