著者
山口 徹 棚橋 訓 吉田 俊爾 朽木 量 深山 直子 佐藤 孝雄 王 在〓 下田 健太郎 小林 竜太
出版者
慶應義塾大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

今みる景観を自然の営力と人間の営為の絡み合いの歴史的産物と位置づけ、オセアニア環礁(低い島)と八重山諸島石垣島(高い島)のホーリスティックな景観史を、ジオ考古学、形質人類学、歴史人類学、文化人類学の諸学の協働によって明らかにし、その中で人とサンゴ(礁)のかかわり合いを遠い過去から現在まで見とおした。立場や系譜が必ずしも同じではない人々のあいだに、サンゴ(礁)とのこれからの「共存」のあり方への共通関心を喚起する目的で、研究成果を活用したアウトリーチに積極的に取り組んだ。
著者
近森 正 棚橋 訓 塚本 晃久 吉田 俊爾 森脇 広 岡嶋 格 KAURAKA Kau TONY Utanga KAURAKA Kaur
出版者
慶応義塾大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

1.自治権獲得以来30年、クック諸島では民族的自覚の確立が模索されてきた。近年、政府内に文化開発省が設けられ、伝統文化の保存・継承の試みが組織的に開始された。本研究は「文化遺産の保存計画」に基づくクック諸島政府の要請によって立案された。その目的はすでに積み上げられたわれわれの調査実績の上にたって、先史遺跡、歴史的遺構を中心とする文化遺産の効果的な保存・継承に関する考古学的、民族学的、言語学的な基礎研究を行うことにある。2.平成7年から9年度にわたる3年間の調査は北部クック諸島プカプカ島と南部ラロトンガ島において集中的に行われた。調査対象となった遺跡は総計17遺跡(プカプカ島5遺跡、ラロトンガ島12遺跡)である。主要出土遺物200点以上、埋葬人骨10体を発見し、両島の地域史を明らかにする上で必要な考古学的情報を充分に蓄積することができた。これにより、祭祀建造物の形式が西ポリネシアと東ポリネシアの双方から文化的影響を受けつつ各島で地域的な発展を遂げたことが判明した。プカプカ島のそれは農耕の祭祀活動と密接な関係を示している。またラロトンガ島の内陸、尾根筋に発見された祭祀建造物とサンゴ礁島の祭祀建造物の発掘調査によって祭祀空間の地域内での多様性が判明した。3.考古学的に明らかにされた祭祀空間の特性が文化遺産の継承形態を規定していることが確証された。この成果は土地法廷史料及び民族学的調査成果との連接を経て、文化遺産の継承形態に関する時系列的な基礎情報群として集成された。これに基づき、当該地域の文化遺産継承を核とする文化政策の策定に貢献することができた。4.プカプカ語はポリネシア語の形成過程の重要な位置をしめる。言語学的に正確な記載と口頭伝承の記録によって、クック諸島の歴史的解明が可能になるとともに、消滅しつつある無形文化遺産の保存に大きな貢献をすることができた。