- 著者
-
吉野 賢一
- 出版者
- 日本顎口腔機能学会
- 雑誌
- 日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.2, pp.103-110, 2013 (Released:2014-01-30)
- 参考文献数
- 20
我々は視覚情報をもとに食べ物を認知し,その食べ物を口まで運ぶ.一方,多くの動物は嗅覚情報をもとに食べ物を認知し,その食べ物まで口を運ぶ.また,動物では生命維持のために摂食行動を行うが,我々はそれも含めた多様な目的で摂食行動を行う.摂食行動に関わる大脳皮質の働きが,ヒトの摂食行動を動物のそれとは似て非なるものにしているのかもしれない.摂食行動における大脳皮質の働きについては,大脳皮質咀嚼野を含む大脳皮質運動関連領野および感覚関連領野が自発的な咀嚼運動に重要な役割を果たしていることが明らかになっている.しかしながら,高次脳機能の関与が示唆されている先行期や準備期において,大脳皮質の働きは明らかになっていない.本稿では先行期および準備期における高次脳機能の働きについて,視覚情報処理および到達運動や把持運動制御などから得られた脳科学的知見,および著者らの研究をもとに考察する.