著者
林田 大志 名田 和義 平塚 伸
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.357-363, 2015 (Released:2015-12-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

数種の重金属は‘幸水’の単為結果を誘起し,着果率も20~30%であることから,摘果作業時間を大幅に短縮できる可能性がある.本研究では,開花前の‘幸水’花蕾に銅イオンを含むボルドー液と硫酸鉄(FeSO4)処理を行い,長果枝と短果枝における着果誘起効果の違い,果実へのGA処理による肥大促進効果ならびにそれら果実を果そうに複数着果させた場合の果実肥大を明らかにするとともに規模を拡大した実証試験を行った.ボルドー液による着果誘起は短果枝と長果枝で同様に生じ,また,得られた幼果にGAペースト処理する(ボルドー + GA)と十分に可販果となりうること,収量確保のために1果そうに2果以上を着果させることは不適切であることを明らかにした.次に,‘幸水’樹を網室で覆い,ボルドー + GAおよびFeSO4 + GA区で得られた果重分布,収穫時期の分布,収量について2年間にわたって調査した.その結果,果実サイズと収量は他家受粉区(マルハナバチ放飼による受粉)とほぼ同程度であり,加えて収穫期が大幅に早まることが明らかとなった.また,受粉・摘果関連作業時間は,慣行栽培と比較して大幅に短縮されることが示された.