著者
野中 邦彦 廣野 祐平
出版者
日本茶業技術協会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
no.112, pp.55-59, 2011-12
被引用文献数
1

東京電力福島第一原発事故発生後の2011年産一番茶において,平常値より高い濃度の放射性セシウム(以下,RCs) が検出された。当初,生葉に対して食品衛生法の観点からRCsの暫定規制値500Bq/kgが適用され,その後,荒茶および仕上げ茶に対しでも同じ500Bq/kgが適用されることになり,出荷停止となった地域が相次いだ。試験研究機関は,茶のRCs低減に向けた一刻も早い技術開発が求められている。 その技術開発の基礎となるのは, RCsがと守のような経路で新芽に取り込まれたかを明らかにすることである。これまで,多くの農作物においてRCsの移行係数が示されてはいるが,茶についての報告は見当たらない。RCsは土壌に固定されやすいため,農作物への移行は少ないとされているとはいえ,酸性土壌で栽培された作物への移行係数が1を超える例も報告されており,強酸性土壌の多い茶屈では移行係数を確認しておく必要がある。そこで,ニ番茶生育期において,土壌や成葉からのセシウムの吸収と新芽への移行を解明する自的で,セシウムを施用するトレーサー実験を行った。なお, RCsがすでに茶樹に取り込まれた状態では新たに土壌から吸収されたものを見分けることができないので,実験には安定セシウムを用いた。