著者
奥田 均 市ノ木山 浩道 須崎 徳高 平塚 伸 松葉 捷也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.129-133, 2008-01-15

シートマルチ栽培したウンシュウミカン園などで発生するキク形状を有する果実に対する消費者の嗜好性を評価するため,マルチ栽培で生産されるキク形状を有さない果実(マルチタイプI)とキク形状の果実(マルチタイプII),および露地栽培で生産される果実(露地タイプ)について,16歳以上の309名を対象にアンケートを実施し302名(男127名,女175名)の有効回答を得た.その結果,マルチタイプIIの支持が64.5%で最も高く,マルチタイプI (19.9%),露地タイプ(15.6%)と続いた.選んだ理由には甘み,糖酸のバランスがあげられた.各タイプの支持者を年齢・男女別に分けて支持の特性を分析したところ年齢が高くなるほど女性を中心にマルチタイプを好むことが明らかになった.甘みに対する評価はタイプ支持者間で異なったが,いずれのタイプ支持者も酸に対する評価では差はなかった.形状・外観では露地タイプ,マルチタイプIを支持したグループはマルチタイプIIを劣ると判断したもののマルチタイプIIを支持したグループはタイプ間の差は小さいと判断した.剥皮性についてはいずれのタイプ支持者もマルチタイプIIが劣るとした.本アンケートの結果から供試した3タイプの果実の中ではマルチ栽培により発生したキク形状を有するウンシュウミカン果実の嗜好性が総合的に見て高いことが示唆された.
著者
平塚 伸 渡辺 学 河合 義隆 前島 勤 川村 啓太郎 加藤 尉行
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.62-67, 2002-01-15
参考文献数
10
被引用文献数
5 9

ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花効果と, その機構について検討した.1%のギ酸カルシウム溶液を受精前の雌ずいに散布すると, 柱頭への花粉の付着と花柱内の花粉管伸長が明確に抑制され, 30∿40%の果実が落果した.一方, 同濃度の酢酸カルシウムや乳酸カルシウム溶液による摘花効果は認められなかった.有機酸カルシウムが花粉発芽に及ぼす影響をin vitroで比較すると, ギ酸カルシウムは他の塩より明らかに強い抑制力を示した.有機酸について同様に調査した結果, ギ酸の発芽抑制作用は際立っていた.以上の結果より, ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花機構は, ギ酸による受精阻害と考えられた.摘花されなかった果実の生長や成熟期の果汁糖度は, 対照区と殆ど差が認められなかった.このように, ギ酸カルシウムはニホンナシの摘花剤として利用できる可能性が示された.
著者
平塚 伸 渡辺 学 河合 義隆
出版者
園藝學會
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.62-67, 2002 (Released:2011-03-05)

ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花効果と、その機構について検討した。1%のギ酸カルシウム溶液を受精前の雌ずいに散布すると、柱頭への花粉の付着と花柱内の花粉管伸長が明確に抑制され、30~40%の果実が落果した。一方、同濃度の酢酸カルシウムや乳酸カルシウム溶液による摘花効果は認められなかった。有機酸カルシウムが花粉発芽に及ぼす影響をin vitroで比較すると、ギ酸カルシウムは他の塩より明らかに強い抑制力を示した。有機酸について同様に調査した結果、ギ酸の発芽抑制作用は際立っていた。以上の結果より、ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花機構は、ギ酸による受精阻害と考えられた。摘花されなかった果実の生長や成熟期の果汁糖度は、対照区と殆ど差が認められなかった。このように、ギ酸カルシウムはニホンナシの摘花剤として利用できる可能性が示された。
著者
奥田 均 市ノ木山 浩道 須崎 徳高 平塚 伸 松葉 捷也
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.129-133, 2008
被引用文献数
4

シートマルチ栽培したウンシュウミカン園などで発生するキク形状を有する果実に対する消費者の嗜好性を評価するため,マルチ栽培で生産されるキク形状を有さない果実(マルチタイプI)とキク形状の果実(マルチタイプII),および露地栽培で生産される果実(露地タイプ)について,16歳以上の309名を対象にアンケートを実施し302名(男127名,女175名)の有効回答を得た.<br> その結果,マルチタイプIIの支持が64.5%で最も高く,マルチタイプI(19.9%),露地タイプ(15.6%)と続いた.選んだ理由には甘み,糖酸のバランスがあげられた.<br> 各タイプの支持者を年齢・男女別に分けて支持の特性を分析したところ年齢が高くなるほど女性を中心にマルチタイプを好むことが明らかになった.<br> 甘みに対する評価はタイプ支持者間で異なったが,いずれのタイプ支持者も酸に対する評価では差はなかった.形状・外観では露地タイプ,マルチタイプIを支持したグループはマルチタイプIIを劣ると判断したもののマルチタイプIIを支持したグループはタイプ間の差は小さいと判断した.剥皮性についてはいずれのタイプ支持者もマルチタイプIIが劣るとした.<br> 本アンケートの結果から供試した3タイプの果実の中ではマルチ栽培により発生したキク形状を有するウンシュウミカン果実の嗜好性が総合的に見て高いことが示唆された.<br>
著者
林田 大志 名田 和義 平塚 伸
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.357-363, 2015 (Released:2015-12-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

数種の重金属は‘幸水’の単為結果を誘起し,着果率も20~30%であることから,摘果作業時間を大幅に短縮できる可能性がある.本研究では,開花前の‘幸水’花蕾に銅イオンを含むボルドー液と硫酸鉄(FeSO4)処理を行い,長果枝と短果枝における着果誘起効果の違い,果実へのGA処理による肥大促進効果ならびにそれら果実を果そうに複数着果させた場合の果実肥大を明らかにするとともに規模を拡大した実証試験を行った.ボルドー液による着果誘起は短果枝と長果枝で同様に生じ,また,得られた幼果にGAペースト処理する(ボルドー + GA)と十分に可販果となりうること,収量確保のために1果そうに2果以上を着果させることは不適切であることを明らかにした.次に,‘幸水’樹を網室で覆い,ボルドー + GAおよびFeSO4 + GA区で得られた果重分布,収穫時期の分布,収量について2年間にわたって調査した.その結果,果実サイズと収量は他家受粉区(マルハナバチ放飼による受粉)とほぼ同程度であり,加えて収穫期が大幅に早まることが明らかとなった.また,受粉・摘果関連作業時間は,慣行栽培と比較して大幅に短縮されることが示された.
著者
平塚 伸
出版者
三重大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は,特殊に分化した果皮の(1)CO_2固定能力,および,(2)色素合成能力,を明らかにすることを目的に行ったものであり,得られた結果は以下のように要約される.なお,成果の一部は,平成21年9月に開催された園芸学会秋季大会で公表した.(1)ウンシュウミカン果皮のCO_2固定能力は,明期・暗期ともに満開後100日前後が最も高く,この時期の果実遮光は成熟時の糖・酸含量を明らかに低下させることが明らかとなった.前年度に引続き行った本年度の研究成果は,以下のように要約される.1)ラジオアイソトープを用いた実験により,9月上旬の果皮で固定された^<14>CO_2の約1/3が果汁に蓄積され,その^<14>Cはそれぞれ果汁内の糖・酸・アミノ酸分画に取り込まれることが証明できた.なお,暗黒下でのPEPCによる^<14>CO_2固定は光合成の40%弱であったが,PEPCによって固定された^<14>Cも糖分画に検出されたことから,ウンシュウミカン果皮にはC_4光合成的機構が備わっている可能性が示された.2)果実のPEPC活性はクロロフィルを含む組織で高く,内部の組織では低かったことより,ここでもカルビン回路とPEPCが相互作用するC_4光合成的機構の存在が示唆された.3)結果枝に環状剥皮を施して枝内への光合成産物流入を阻害すると,果皮の光合成速度は約2倍高まったことから,果皮の光合成は葉の働きを補完する作用をもつものと考えられる.(2)スモモ果肉のアントシアニン生成は,その前駆体のカフェ酸やフラボノールを作り出す機構が備わっているためであり,これらがアントシアニンに代謝される過程では光が不要であることを明らかにした.さらに本年度は,以下のことを明らかにした.1)光照射は,むしろ果肉のアントシアニン生成を抑制する可能性がある.2)果肉では,果皮でアントシアニン生成を促進するABAや抑制する2,4-Dなどの植物ホルモンでは制御されない.