著者
和田 充紀 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.29-39, 2016-07-28

障害のある幼児が安心・充実した学校生活を送ることができるようにするためには、就学に際して「いつ、だれが、どのような情報を」引継ぎ、また「どのような」連携が求められているのかについて、保育所と特別支援学校を対象とした質問紙調査により検討を行った。引継で「伝えたい・知りたい・共有したい情報」として、「実態に応じた支援内容と支援方法」「家庭および保護者の状況」など複数のカテゴリーが見出された。これらの情報は総じて、保育所、特別支援学校の教職員双方が重要項目であるとの認識はあるものの、現状の引継では十分に共有できていない課題や、就学前の引継に加えて就学後の連携の必要性在感じている現状も見出された。以上より、引継のための資料や連携のあり方についてのさらなる検討の必要性が示された。
著者
和田 充紀 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.67-76, 2017-10-25

視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・病弱等の障害のある生徒に必要な主権者教育の内容と,安心して意欲的に選挙権を行使できるようにするために求められる内容を検討するための基礎資料を得ることを目的として,全国の特別支援学校を対象として主権者教育の現状と課題について調査を実施した。その結果,9割程度の学校において主権者教育に取り組んでいる現状が示され,4割程度の学校において在校生が実際の投票を行った実態が示された。課題としては「実際の選挙(投票)において,障害の状況に応じた対応の仕組みが整うと良い」「障害の特性に応じた選挙の授業用テキストがあると良い」などが示された。
著者
石崎 良 和田 充紀
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.77-87, 2017-10-25

本研究の目的は,肢体不自由(脳性まひ)のある児童生徒の生活の基盤となる「食事場面」において,一人で食べることができる能力の高まりに焦点をあてた取組について報告した。学校給食を媒介とした直接的な指導及び自立活動の時間の指導における間接的な指導を組み合わせ,「一人で食べる力」を身に付けるための具体的な支援の在り方について考察した。加えて,食事場面での指導支援をアクティブ・ラーニングの視点から考察することで,障害のある子供のアクティブ・ラーニング型の授業支援について考察した。また,個別の教育支援計画及び個別の指導計画に基づいた教師間,教師と作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)との連携,家庭への浸透や利用する福祉施設等での食事場面での自立を視野に入れた学校との連携の取組について,「チーム学校」の視点から報告した。
著者
和田 充紀
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.45-50, 2017-05-31

大学卒業後に教育や医療福祉等以外で働く社会人を目指す一般大学生にとって、合理的配慮の必要性について理解を促すことや、障害の理解・啓発のための講義や実践は必要な知識であり、求められる資質であると考える。そこで本研究では、一般大学生にとって合理的配慮の知識や障害への理解促進に役立つ講義内容や方法について、特に、障害者のコミュニケーションの中で手話実技による授業を行うことの効果、また、具体的にどのような方法が有効であるのかについて、受講学生の意識の変容や感想を通して検討した。講義の内容に手話実技を取り入れたことで、手話そのものに対する関心が高まるとともに、聴覚障害者や特別支援教育への関心も高まった。また、障害や手話について学びたいという意欲や、学んだことを実生活に生かして障害者とのコミュニケーションを取りたいという意欲にも高まりが見られた。今後は、他の障害の理解にもつながる講義内容や方法についての検討が必要である。
著者
和田 充紀 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
no.11, pp.115-122, 2016-12

選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公選法が6月19日に施行され、国公私立の高校では主権者教育の実施率が94%に上った。特別支援学校においても主権者教育を模索しながら始めている。本研究では国立大学法人附属の知的障害特別支援学校を対象として主権者教育の現状と課題について調査を実施した。その結果、主権者教育を「行なっている」または「行う予定がある」学校を合わせると9割以上の学校が主権者教育の必要性を感じていることがうかがえる。具体的には「選挙の具体的な仕組み」や「模擬選挙などの実践的な学習活動」への取組が行われ、「実際の投票箱を選挙管理委員会から借用」するなどの工夫がなされている。課題としては、「知的障害者用の授業用テキスト・ビデオ・教材」の作成と充実、「保護者への啓発」「出前講座などの他機関との連携」「投票時の対応(社会への啓蒙)」などが示された。
著者
栗林 睦美 野﨑 美保 和田 充紀
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.135-149, 2018-03-16

本研究では,知的障害者の学校卒業後が豊かで充実したものとなるためには,卒業前にどのような取組が求められているのかについて検討することを目的として,就労・生活・余暇の視点で卒業生の保護者を対象とした実態調査を行った。就労では人間関係・コミュニケーションなどで困難はあるが,職場の人が相談相手となることで,就労の安心充実につながっている現状がうかがえた。生活や余暇については家族と一緒にすごし,困難には家族が対応している割合が高かった。「親亡き後の将来の生活への不安」や「家族とだけではなく友達や支援者と余暇を過ごすこと」「余暇のレパートリーを増やすこと」等の生活や余暇に対する課題も見出された。卒業後の長い生活を見据え「相談できる機関等の情報」「余暇に関する学習の機会」など,学校教育に求められることや取り入れていくべき内容についての示唆が得られた。
著者
和田 充紀 水内 豊和
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.45-53, 2018-03-16

本研究では,特別支援学校における主権者教育の現状を明らかにし,知的障害のある生徒に必要な教育内容,卒業後も社会を構成する一員である自覚をもち安心して意欲的に選挙権を行使できるようにするために必要な内容や方法を検討するための基礎資料を得ることを目的として,全国の知的障害特別支援学校を対象として主権者教育の現状と課題について調査を実施した。その結果,知的障害特別支援学校において,9割以上の学校において主権者教育に取り組んでいる現状が示された。自治体による出前授業を利用し,選挙管理委員会から選挙用具を借用する取り組みは生徒の理解と関心を高めていることがうかがえた。課題としては,知的障害者用の授業用資料の充実や,学校全体での教育の充実,そして卒業後も社会につなげていくためには,家庭や選挙管理委員会との連携と実際の投票時の配慮などが示された。
著者
和田 充紀 堀 ひろみ 廣島 幸子 根塚 明子
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.57-64, 2017-03-15

高等学校における,特別支援教育の支援体制や連携の現状を把握するため,特別支援教育コーディネーターを対象として質問紙調査をした。その結果,校内における支援体制の整備はすすめられているが,特別支援教育に関する研修や制度化が進む「通級による指導」などの情報は不足していること,また,在学中の発達障害等の生徒の指導や支援に直結する連携や情報交換と比較して,進学・就職先との連携は少ない現状が明らかになった。発達障害等の生徒の連続性のある支援のためには,高等学校における学校全体での特別支援教育への理解と支援体制の整備,関係機関との円滑な連携が求められる。