著者
和田 成一
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

低線量放射線の細胞応答は高線量域のデータから推察されてきた。しかし、この高線量域から低線量域への外挿データでは説明のつかない現象、放射線超感受性現象が広く知られてきた。この現象のメカニズムはバイスタンダー効果と生物学的機能不全によると考えられているが詳細は明らかにされていない。本研究では、この現象を誘導する引き金は放射線による細胞膜応答であり、細胞膜応答から細胞外に細胞膜応答分子のスフィンゴミエリナーゼが分泌され、この分子によって細胞はDNA修復不全に陥るため、放射線超感受性が誘導されることを明らかにした。つまり、放射線超感受性現象は細胞膜応答によりバイスタンダー効果と生物学的機能不全が連動していることを明らかにした。
著者
和田 成一 倉林 秀光 小林 泰彦 舟山 知夫 夏堀 雅宏 山本 和夫 伊藤 伸彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.471-477, 2003-04-25
被引用文献数
2 18

三種類の細胞, CHO-K1, HMV-IIおよびL5178Yを用いてγ線照射によるDNA損傷と細胞死との関係を調べた.細胞の生存率はクローン形成法によって求められた.放射線照射によるDNA鎖切断とその再結合はアルカリ及び中性コメット法で測定された.三種類の細胞の中ではL5178Yが最も放射線感受性で,CHO-K1とHMV-IIは放射線抵抗性であった.これらの細胞の放射線感受性(2Gy照射時の生存率)と,アルカリ条件下での単位線量あたりの初期DNA損傷生成率の間には負の関係が認められた.一般に細胞の放射線感受性に関連すると考えられているDNA二本鎖切断の単位線量あたりの残存量(照射4時間後)と放射線感受性との間にも負の関係が認められた.今回用いた分析条件では,DNA初期損傷の評価にはアルカリ条件が,残存損傷の評価には中性条件が適することが分かった.今回用いたコメット法は,放射線によるDNA損傷を検出する他の方法よりも簡便で迅速であるので,放射線感受性を予測する方法として有用であると思われる.