著者
和田 成一 倉林 秀光 小林 泰彦 舟山 知夫 夏堀 雅宏 山本 和夫 伊藤 伸彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.471-477, 2003-04-25
被引用文献数
2 18

三種類の細胞, CHO-K1, HMV-IIおよびL5178Yを用いてγ線照射によるDNA損傷と細胞死との関係を調べた.細胞の生存率はクローン形成法によって求められた.放射線照射によるDNA鎖切断とその再結合はアルカリ及び中性コメット法で測定された.三種類の細胞の中ではL5178Yが最も放射線感受性で,CHO-K1とHMV-IIは放射線抵抗性であった.これらの細胞の放射線感受性(2Gy照射時の生存率)と,アルカリ条件下での単位線量あたりの初期DNA損傷生成率の間には負の関係が認められた.一般に細胞の放射線感受性に関連すると考えられているDNA二本鎖切断の単位線量あたりの残存量(照射4時間後)と放射線感受性との間にも負の関係が認められた.今回用いた分析条件では,DNA初期損傷の評価にはアルカリ条件が,残存損傷の評価には中性条件が適することが分かった.今回用いたコメット法は,放射線によるDNA損傷を検出する他の方法よりも簡便で迅速であるので,放射線感受性を予測する方法として有用であると思われる.
著者
ホワン ティー マイ 渡部 徹 福士 謙介 小野 あをい 中島 典之 山本 和夫
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.153-159, 2011 (Released:2011-10-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1 4

衛生環境が貧しい途上国都市では,洪水時に,住民が病原微生物に汚染された水に接する機会が増えるため,感染症のリスク上昇が懸念される。本研究では,ベトナム国フエ市を対象に,洪水時と平常時における主要な感染経路からの大腸菌感染症の発症リスクを定量的に評価した。平常時における年間リスクは,最大で0.026(38人に1人が発症)と見積もられた。特に,家や店で生野菜を摂取することによるリスク(0.024)が高かった。一方,洪水時には,洪水中での家具の移動や掃除,料理,水遊び等の不衛生な行為によりリスクが0.45にまで大幅に上昇した。年間でわずか6.5日に過ぎない洪水時のリスクが平常時の年間リスクの17倍に相当することから,インフラ整備による洪水制御には大きなリスク削減効果が期待できる。しかし即時のインフラ整備は難しいことから,上記のような洪水中での不衛生な行為を控えることがより現実的な対策と言える。
著者
佐藤 博文 針金 三弥 龍村 俊樹 山本 恵一 小島 道久 山本 和夫 柴崎 洋一 松本 貞敏 鈴木 亮一
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.1330-1334_1, 1984 (Released:2011-05-09)
参考文献数
10

尋常性疣贅の多発を伴ったS状結腸癌の2例を報告した.症例は59歳の女性と78歳の男性で,ともに消化器症状はなかったが,2年以上前から尋常性疣贅が顔面,手背に多発し治癒傾向にないため,消化管の精査を行った. 上部消化管には異常所見を認めなかったが,注腸造影と大腸内視鏡検査によりS状結腸癌の合併をみとめ,根治術をおこなうことが出来た. 近年,本邦での結腸癌の罹患率は増加傾向にあり,結腸癌による死亡率を低下させるには一般住民を対象とした大腸集検と共に高危険群の精査による早期癌の発見が必要である. 尋常性疣贅はhuman papilloma virus(HPV)による皮膚感染症で,その発病は細胞性免疫能の低下と関連しているといわれている.今回の2症例の経験から,高齢者で尋常性疣贅が多発し,しかも難治傾向にある場合には,内臓悪性腫瘍の高危険群に屈すると考え,精査追跡をすすめるべきである.
著者
大垣 真一郎 松尾 友矩 味埜 俊 山本 和夫 花木 啓祐 滝沢 智 古米 弘明 大垣 眞一郎
出版者
東京大学
雑誌
COE形成基礎研究費
巻号頁・発行日
1996

本研究は6つのサブテーマを設けて進めている。1.各研究課題の成果(1)生物学的栄養塩除去プロセス:有機物として酢酸またはプロピオン酸のみを基質として嫌気好気式活性汚泥プロセスを運転し、微生物相の変化をPCR-DGGE法で追跡した。リン除去の良好な運転期間におけるバンドのうちいくつかはRhodocyclus属のものとして同定された。また、脱窒性脱リン細菌を積極的に用いた水処理プロセスを開発し、脱窒性脱リンの活性を60%程度にまで高めることができた。(2)地球温暖化ガス排出の抑制:実下水を用いた循環プロセスにおいて、前年度観察された脱窒時の突発的な亜酸化窒素の多量発生について、更に検討した。連続的な亜酸化窒素と酸化還元電位の測定結果から、このような発生は、例外なく酸化還元電位が300mV以上の水準にまで高くなっている場合に生じることが明らかになった。これらのことから、酸化還元電位が多量な亜酸化窒素の生成を警告する指標になることがわかった。ただし、酸化還元電位が高い場合に常に亜酸化窒素が生成するわけではなかった。多量の下水を意図的に希釈して流入させる実験を行ったところ比較的多量の亜酸化窒素発生が見られたことから、合流式下水道において降雨時に希薄な下水が流入することが亜酸化窒素の大量発生に繋がる恐れがあることが示唆された。(3)資源回収型水処理プロセスの開発:余剰汚泥を用いたPHA生産では、実下水を用いたパイロットプラントを運転し、プロセスの運転条件やPHA生産の反応条件が活性汚泥によるPHA生産に与える影響について検討した。特に生産反応におけるpHと有機酸の濃度が大きな影響を及ぼすこと、影響の程度は水中の非解離の酢酸の濃度に依存するらしいことがわかった。(4)余剰汚泥排出抑制型水処理システム:活性汚泥法で生じる余剰汚泥を可溶化して曝気槽に戻すことにより、発生汚泥量を削減するシステムの実現可能性について検討した。可溶化法として、熱処理・酸またはアルカリ処理・中温消化を検討し、消化汚泥循環率制御により最大85%の発生汚泥量削減に成功した。また汚泥発生のないプロセスができる可能性も確認できた。メンブレンバイオリアクターでは、SRTを長くすれば余剰汚泥をゼロにできるが、高負荷運転時における膜ファウリングの問題を微生物生態系を利用して制御する方法を実験的に検討し、微小後生動物を安定して維持する運転条件を明らかにした。膜面に棲息する貧毛類は、膜面付着汚泥量を顕著に減少させ、膜ファウリングの進行を抑制することを定量的に明らかにした。(5)新しい浄水技術の評価および健康関連微生物の挙動解明:陰電荷膜を用いたウイルス濃縮法を開発し、海水から高い回収率でウイルスを回収することができた。夏の海水浴場からエンテロウイルス、冬の東京湾からノーウォークウイルスを検出した。紫外線照射によって、藻類の増殖抑制の効果が残存していることを明らかにした。その主要因子として、紫外線強度、有機物、金属イオンの影響を調べた。玉川パイロットプラントにおいて、生物濾過を導入することによって膜の閉塞が抑制できることを実験的に検証した。また、二酸化チタン光触媒を用いた高度酸化処理において、光強度、触媒面積、撹拌強度、pHなどによる反応速度への影響を定量的に解明した。(6)複合微生物系解析技術の開発:複合微生物系解析の基礎技術の開発:活性汚泥中微生物群集のもつ亜硝酸還元酵素をコードするnirSおよびnirKの多様性を解析するために、PCR-DGGE法の適用を試みた。混合プライマーの使用をさけることにより、PCR-DGGE法を機能遺伝子の解析に適用することができることが示された。フローサイトメトリーを用いて貧栄養の付着性微生物を測定する手法を開発した。染色剤の選定、超音波による前処理方法の確立、およびフローサイトにおける蛍光波長のみを計測の対象とした。ウイルスの精製法として、ゲル濾過法を適用し、塩素消費物質を除去してウイルスを80%以上回収する方法を開発した。また、ウイルスを限外濾過膜によって効率的に脱塩する手法を開発した。2.研究拠点の形成本年度は、内外の研究者との学術的交流を深め本研究の成果を発表するために、国際シンポジウム(招聘外国講師5名、招聘国内講師14名、参加者計266名)を行った。