著者
長谷川 大輔 嚴 先鏞
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.532-538, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
13

少子高齢化やインフラ維持管理費用の増加に伴い,「コンパクト・プラス・ネットワーク」の構築が求められている.このような都市構造を支えるためには,住民の移動の利便性を考慮した効率的な公共交通ネットワーク形成が必要であり,現在の公共交通ネットワークの性能を住民の利便性の観点から評価することが不可欠である.しかし,多くの自治体で人口カバー率を中心にした公共交通利便性の評価や拠点計画が行われており,カバー率が同じであっても移動需要に対応した路線網とダイヤの接続性によって住民の利便性は大きく異なる.そこで本研究では,公共交通のダイヤの接続を考慮できる時空間ネットワークを構築し,住民の日常的な移動に対した自治体の公共交通ネットワークの性能を平均移動速度と移動時間割合から評価し,利便性向上のための改善方策を検討することを目的とする.第一に,平均移動速度は,路線形状が移動需要とどの程度マッチしているかを評価する.第二に,移動時間割合は,運行頻度と接続性によって発生する待ち時間による時間ロスを定量化する指標である.最後に,これらの二つの指標の組み合わせにより,住民の利便性向上のための改善方策を検討する.
著者
長谷川 大輔 嚴 先鏞 西堀 泰英
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.1281-1287, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

CCOVID-19の世界的流行による移動需要の減少は,公共交通機関の財政悪化をもたらした.それによって,運行頻度や路線の縮小などのサービスレベルの低下が生じている.本研究では,住民の生活サービスを支える商業地区における,コロナ禍前後における公共交通のアクセシビリティの変化を明らかにし,流動人口の変化との関係を分析した.その結果,1.アクセシビリティの変化を到達圏面積と移動時間の変化によって定量的に把握し,大都市よりも地方都市の低下が顕著であること.2.時刻表の編成によって,運行頻度が減少してもアクセス性が低下しない地域があること.3.アクセシビリティの低下が顕著なのは,大都市では近隣商業集積地のみであるのに対し,地方都市では中心市街地と近隣商業地域の両方であることを示した.
著者
西堀 泰英 嚴 先鏞
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00193, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
29

本研究は,COVID-19感染拡大による商業集積地の滞在人口の変化とその影響要因を明らかにすることを目的とする.交通ビッグデータを含む各種データを用いて21都市の商業集積地を滞在人口の時系列的な変化傾向により分類し,商業集積地と居住地との位置関係に着目した分析や,産業構成の影響を分析した.本研究の主な成果は次のとおりである.1)商業集積地が所在する区(以下,同区)または隣接市区町村からの滞在人口は増加する一方,県外のように遠方からの滞在人口は大きく減少している.2)感染拡大後に滞在人口が増加した地区では,同区だけでなく隣接する区からの滞在人口も増加している.3)東京や京阪神の都市圏では医療等の生活を支えるサービスが多いと滞在人口が増加する傾向にあるが,地方中枢や地方中核の都市圏では同様の傾向は認められない.
著者
嚴 先鏞 西堀 泰英 坪井 志朗
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1549-1555, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
10

近年,人口の急激な減少と高齢化を背景に,環境負荷,財政問題に対応しながら住民が公共交通により生活利便施設等にアクセスできるよう,「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」型の都市構造が推進されている.本研究では,近年の立地適正化計画の拠点のような都市機能の地理的な集約による複数の都市機能を持つ施設の集約と交通網を考慮した利便性の評価を行い,その優劣の要因について施設の分布と交通網の観点から明らかにすることを目的とする.第一に,自家用車,送迎,公共交通の3つの移動パターンにおいて,移動時間を最短にしながら複数の施設を巡回する際の利便性を評価する.第二に,自家用車および公共交通の両方において便利な地域は2割程度である一方,居住地の6割を占めている地域では公共交通の利用が不可能である.第三に,住民が公共交通によりアクセスできる施設集約地点は約4割のみである.第四に,公共交通が相対的に不便である地域は,居住地面積および人口の2割を占めており,「路線網による不便」と「施設分散による不便」に区分できる.
著者
嚴 先鏞 山村 拓巳 鈴木 勉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1442-1447, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1

近年,コンパクトシティ・プラス・ネットワーク型の都市構造における多様な都市サービス施設の集積が議論されているが,既存施設の分布の考慮が不十分であること,郊外での新規開発も進んでいることの問題が指摘されている.本研究では,国土交通省が誘導施設として挙げている機能を対象とし,商業施設の集積度に基づいた公共施設の空間的な関係についての近年の変化を明らかにすることを目的とする.第一に,施設数が少ない病院,図書館,行政サービス施設といった公共施設が,商業集積度の高い場所に立地する傾向がある.第二に,総合立地合致度がもともと大きい市町村では総合立地合致度が減少した市町村の割合が大きい一方で,総合立地合致度がもともと小さい市町村では,施設の数が少ないものの,増加した市町村が多く,公共施設の立地が商業集積地に立地する方向へ変化している傾向が見られる.第三に,施設種類別に立地合致度の変化を見ると,行政サービス施設,幼・保育所,図書館の場合は商業集積地に立地する傾向が強く,駅前の再開発などにより,図書館や市役所が商業集積度の非常に高い地点に移転したケースも見られるなど総合立地合致度の増加に寄与している.