著者
四本 幸夫
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.67-82, 2014 (Released:2020-01-13)

観光まちづくり研究の成果が近年数多く発表されている。主流の観光まちづくり研究では、地域活性化という国と地方の要請に応えようとして、観光まちづくりの成功例の紹介や、成功の為の実践マニュアル化に研究が集中している。その過程で、地域が所与で静的なものとして描かれ、権力及びその表出としてのコンフリクトに関する考察がほとんどなされてこなかった。しかし、現実には地域は多様であり動態的なものであるし、観光まちづくりにおいて権力は様々な形で現われている。 本稿では、観光社会学や観光人類学などで議論されてきた権力概念をまとめ、それらが観光まちづくり研究に活かされていないことを明らかする。そして、観光まちづくり研究で権力概念の導入が必要と思われる5つの分野(文化情報消費産業としての観光の持つ権力性、地域の観光資源をめぐる権力性、ジェンダーによる権力性、国家権力、地域の権力構造)を提案する。さらに、地域における権力を分析するのに有効な地域権力構造論と批判的権力論を用いてどのように観光まちづくりの理解を深めていくことができるのかを考察する。
著者
江口 信清 藤巻 正己 ピーティ デヴィッド 山本 勇次 村瀬 智 瀬川 真平 池本 幸生 石井 香世子 四本 幸夫 古村 学
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、社会的弱者が、不利益をもたらされがちであった観光現象を逆手にとって、自立化・自律化の途を進み、かつ近代化の過程で喪失してきた自信やプライド、そして「伝統」を回復することはできるのだろうか。社会的弱者の自立的な生き方に観光がどのような意味を持つのかについて、世界の多様な地域の事例の比較分析し、考察をすることにある。比較研究の結果、少なくとも4つの結論を得た。(1) 途上国における社会的弱者は、観光にかかわるだけでは自立しえないであろう。(2) 外部で作られた観光の概念やスタイルと現地の人たちの理解するそれらの間には、しばしば齟齬がある。(3) 自生的なリーダーとこの人物を支えるフォロワー関係の存在が、観光開発の成否やコミュニティの福祉の改善に大きくかかわる。そして、(4) 女性の役割がたいへん重要であるということである。