著者
鈴木 亮子 遠藤 智子 中山 俊秀 横森 大輔 土屋 智行 柴崎 礼士郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-07-18

「言語の定型性」という、従来の言語研究では殆ど顧みられてこなかった側面が、実際の言語使用では広汎に見られることが近年指摘されてきている。定型性の理解に向けて、実際の人々の言語使用を記録したデータをもとに観察・分析・記述を蓄積しつつ、言語の定型性を中軸に据えた文法理論の構築を試みることが、私たちのもつ言語知識の全体像の理解に不可欠であると考え、本研究では日中英3言語の会話をはじめとするデータの分析に取り組んでいる。定型性の分析に向けての情報収集を行った初年度に続き、2018年度はデータと向き合い個々のメンバーの専門性を生かした研究活動を進めることができた(業績参照)。2018年5月に年間活動予定を定め二通りのデータセッションを行った。まず同じ動画データ(大学生の会話)を見ながらメンバーそれぞれの定型性と言語使用に関する気付きを共有し合った後、個々のメンバーが日・中・英語のデータから短いセグメントを持ち寄り議論をした。定型性を分析する上でポイントになるリサーチクエスチョンのリストを作成した。これらが研究をまとめる際の糸口になる。9月には国際学会(Referentiality Workshop)などに複数のメンバーが研究発表を行い海外の学者との研究交流を深めた。2018年12月に海外研究協力者のHongyin Tao氏(UCLA)と大野剛氏(U of Alberta)を招聘し東京外国語大学で国際ワークショップを開催し、言語の定型性を中心に据えた理論化を見据えた発表を聞くことができた。2019年3月6日から7日にかけて九州大学で行った第3回目の会合ではこれまでの研究会合を振り返り今後の方向性を議論した。相互行為分析からは少し離れた立場の方々を招いて言語の定型性に関する議論を深める案などが出された。2020年3月には定型性研究の先鞭をつけたAlison Wray氏をイギリスから招いて国際ワークショップを開催する方向で動き出している。