著者
藤枝 裕倫 水野 伸二 徳丸 勝悟 日比野 正幸 玉内 登志雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.2306-2311, 2013-08-25
参考文献数
19

症例は39歳,男性.心窩部痛を主訴に近医受診.左上腹部に小児頭大の腫瘤が指摘され当院受診となった.腹部超音波検査では,94×92×111mm大のhigh echoとlow echoが混在した腫瘤が見られた.CT検査では,腫瘤の内部は低濃度と高濃度がモザイク状に混在していた.内部には造影効果は見られなかった.MRIT1強調像では,腫瘍の大半が高信号であり,MRIT2強調画像では隔壁様の構造を伴う高信号と低信号域が混在していた.造影MRI検査では腫瘤背側壁の外縁が造影された.以上より,後腹膜血腫が疑われ,再度問診を行い2カ月前に自転車で転倒し左肘骨折をした既往があると分かった.しかし,後腹膜腫瘍も否定できず開腹手術を行い腫瘤の摘出を行った.病理検査では中心部には変性,壊死に陥った凝血塊を認め,周囲は線維性の被膜で覆われている所見であった.以上よりchronic expanding hematomaと診断した.文献的考察を加え報告する.
著者
世古口 英 近藤 真治 徳丸 勝悟
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.661-664, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
10

術後直腸膀胱窩膿瘍に対し, 経皮経膀胱膿瘍穿刺吸引が奏功した1例を報告する. 症例は84歳の男性で, 腹痛, 嘔吐を主訴に来院した. 小腸腫瘍による不全イレウスと診断し小腸部分切除術を施行した. 術後第17病日, 下腹部不快感と血液検査上炎症所見の増悪を認めたため腹部造影CT を施行し, 術後腹腔内膿瘍が疑われた. 経皮経膀胱的に膿瘍を穿刺し十分洗浄後穿刺針は抜去した. 処置翌日より臨床症状の改善を認め, 術後第30病日, 処置後第14病日退院となった. 術後直腸膀胱窩膿瘍は具体的報告例が少なく, 文献的考察を加え報告する.
著者
徳丸 勝悟 長谷川 洋 坂本 英至 小松 俊一郎 河合 清貴 田畑 智丈 深見 保之 秋田 昌利 都築 豊徳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.521-526, 2005-05-01
被引用文献数
7

症例は61歳の男性で, 上腹部痛, 発熱を主訴に近医を受診し, 肝左葉に腫瘤を指摘され紹介となった.当院のダイナミックCTで肝外側区と一部内側区におよぶlow density tumorを認め, その辺縁部は徐々に不均一に造影された.腫瘍マーカーは正常範囲であった.胆管細胞癌を第1に疑い, 平成15年4月7日にリンパ節郭清を伴う肝左葉切除術を行った.病理組織像では腫瘍のほとんどが肉腫様構造を呈し, ごく一部に腺管様構造を認めた.また, その境界には移行部を認めた.肉腫様変化を伴う胆管細胞癌と診断した.術後経過は良好であったが, 外来通院中に残存肝へ転移が出現した.化学療法, 放射線療法にて一定の効果を得たが徐々に状態が悪化, 平成16年1月15日に永眠された.肉腫様変化を伴う胆管細胞癌の報告は極めて少なく, 本邦では我々が検索しえたかぎり13例を認めるのみであった.その臨床的特徴をまとめたので報告する.