著者
垣内 幸夫
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究によって得られた知見として特筆すべき点は、大阪音楽大学所蔵の明治期三味線三巨頭の朱(三味線の楽譜)を人間国宝・七世鶴澤寛治師に繰って頂きその違いを明らかにしたことと、歴史的音源によって現在舞台では聞くことのできない三味線の手を発見したことである。(1)本研究では『菅原伝授手習鑑〜寺子屋の段』及び『絵本太功記〜尼ケ崎の段』を中心に、基礎資料を収集して分析を行った。さらに東京文化財研究所蔵の「安原コレクション」SPレコードから歴史的録音の音源資料を収集して、近代の演奏・演出様式の変遷について分析した。(2)文楽三味線の人間国宝・七世鶴澤寛治師による「寺入の段」「寺子屋の段」「尼ケ崎の段」の演奏と芸談をビデオに録画した。さらに八世豊竹嶋大夫師から十世豊竹若大夫に関わる芸談を聞いた。二世豊竹呂勢大夫師には「尼ケ崎の段」の浄瑠璃の実演と芸談をDATに録音した。(3)文楽研究家の高木浩志氏からは、近代における「文楽の芸の変化」に関わる話を聞いた。後藤静夫氏からは、「文楽協会〜国立文楽劇場」を通しての文楽の質的変化と、「古典」と「新作」に関する話しを聞いた。そして坂本清恵氏には「尼が崎の段」の語りの音声分析を依頼して、近現代における義太夫節の語りの変化について共同研究した。なお、研究成果の一部は拙稿「義太夫節の声」(教育芸術社)「文楽を聴く 義太夫節の音楽的特徴を考える(1)〜(4)」(日本芸術文化振興会)等で公表した。
著者
垣内 幸夫
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、明治期に始まり今日まで文楽の舞台に継承されている「彦六系」の芸について、その伝承を支えた文楽三味線奏者・故六世鶴澤寛治(重要無形文化財=人間国宝)の残した芸談『鶴澤寛治の芸道生活と意見』(文部省委託・朝日放送製作/昭和43年1月)の全内容を分析し、「彦六系」の芸の伝承の実態を明らかにする事を目的に行ったものである。鶴澤寛治の実子であり文楽三味線の弟子である八世竹澤団六師(重要無形文化財=人間国宝)とともにこれらの記録テープを聞き、内容の正確な理解に努めた(竹澤団六師も鶴澤寛治と同じく「彦六系」の芸の伝承者である)。その結果、以下の点が明らかとなった。1.六世鶴澤寛治の芸を形成するに至った師匠について指導を受けた「彦六系」の三味線奏者 (1)初世豊澤松太郎(2)三世豊澤団平(3)初世鶴澤道八指導を受けた「文楽系」の三味線奏者 (1)六世豊澤廣助(2)二世鶴澤寛治郎(3)六世鶴澤友次郎指導を受けた大夫 (1)三世竹本大隅太夫(「彦六系」)(2)三世竹本越路太夫(「文楽系」)2.六世鶴澤寛治が継承する「彦六系」の芸の伝承曲について「堀川猿廻しの段」「寺子屋の段」「山科閑居の段」「沼津の段」「岡崎の段」「宿屋の段」「澤市内の段」「新口村の段」「熊谷陣屋の段」「阿古屋琴責の段」「志渡寺の段」等3.六世鶴澤寛治が相三味線を勤めた大夫について(1)三世竹本津太夫(2)七世竹本源太夫(3)五世竹本錣太夫(4)七世豊竹駒太夫(5)四世竹本津大夫

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著者
垣内 幸夫
出版者
京都教育大学情報処理センター
雑誌
情報処理センター年報
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.10-13, 2009-10
著者
山本 宏子 徳丸 吉彦 鈴木 正崇 垣内 幸夫 細井 尚子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、日本および周辺アジア地域の太鼓文化を対象に、そのリズムパターンを収集し、それぞれの伝統的伝承システムである口唱歌(口太鼓)に基づく記録方法でデータバンクを構築することを通して、アジアの太鼓文化の相互関係を明らかにし、また、各地域の口唱歌システムを比較分析することによって、日本人のもつ音楽性を浮き彫りにすることを目的とするものである。さらにはアジアの伝統的太鼓文化の保存と発展に資する資料を提示し、理論的・方法論的に問題提起をすることをも、その目的としている。中国・ベトナム・インドネシア・インド・日本で調査をおこない、資料を収集した。1、実際のコンテクストの中でおこなわれた祭・儀礼・芸能を参与観察し、関係者の許可が得られたものは、写真やVTRで記録作成をおこなうことができた。2、芸能の芸態つまりテクストそのものの分析に資する資料として、上演を依頼し、舞踊劇や人形劇・舞踊などを収録した。3、太鼓をそれぞれの伝承者から習い、口唱歌と伝承方法についてのインタビューでデータを集積した。これらの調査から、口唱歌には、「インド系単音オノマトペ型」と「中国系重音オノマトペ型」の2つの化圏があることが分かってきた。また、単に太鼓の音を真似て歌う「単純口唱歌」と、それを体系化した「システム口唱歌」の2つのレベルの文化圏があることも分かってきた。両要素は必ずしも連動してなくて、それらの重なり具合は複雑な様相を呈している。さらに、それらを比較すると、「聞き做し」のオノマトペが、発展し体系化し、伝承システムとして構築されるには、太鼓というテクストだけではなく、太鼓を取り囲むさまざまなコンテクストが影響を及ぼしていることが明らかになった。