著者
菱田 尚樹 久世 博 山村 高章 野口 通重 川合 是彰 堀 正樹
出版者
日本毒性学会
雑誌
Journal of toxicological sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.327-334, 1997-11-13
参考文献数
7
被引用文献数
1

新規TRH誘導体であるタルチレリン水和物(TA-0910)の急性毒性試験を, マウスおよびラットにおいて経口, 静脈内および皮下投与で, イヌにおいでは経口および静脈内投与で実施した。マウスおよびラットの経口および皮下投与では死亡は認められず, LD_<50%gt;値は全て5000 mg/kg以上となった。また, イヌの経口投与でも死亡は認められず, 最小致死量は2000 mg/kg以上となった。一方, マウスの静脈内投与では, 700 mg/kg以上で死亡はみられたものの, LD_<50%gt;値は雌雄とも2000 mg/kg以上, ラットでは, 640 mg/kg以上で死亡がみられ, 雄で799 mg/kg, 雌で946 mg/kgとなった。死亡は全て投与中ないし投与直後であった。イヌの静脈内投与では, 最高用量の1000 mg/kg投与で死亡はみられなかったが, 500 mg/kg投与の雌1例が投与翌日に死亡し, 雌の最小致死量は500mg/kgとなった。一般状態の観察では, マウスおよびラットの全ての投与経路に共通して, TA-0910の中枢神経賦活作用を反映する, 運動性充進, 振せん, 挙尾反応等が認められ, さらにラットの各経路ではwet dog shakingが認められた。イヌの経口投与では, 嘔吐, 興奮症状が, 静脈内投与では, 投与中の興奮, 投与後の鎮静等が認められ, さらに両経路に共通して, 流涎および一過性の心拍数の増加等が認められた。また, 血液生化学検査では, 蛋白, 糖, 脂質, 血清酵素に一過性の変動がみられた。剖検では, マウス, ラットおよびイヌとも, 被験物質起因の異常はみられなかった。

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著者
早野 龍五 堀 正樹 中村 栄一 松尾 豊 松永 典之 長尾 敬介
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.10-13, 2011-11

反物質に新たな光を当てる/目に見えるようになった金属原子の触媒作用/銀河系の中心に灯台となる変光星を発見!/太陽風と宇宙線を浴びた「はやぶさ」粒子
著者
早野 龍五 堀 正樹 藤原 真琴
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.166-174, 2003-03-05
被引用文献数
4

CERN研究所(ジュネーブ)において2000年夏に稼働を始めた反陽子減速器では,反陽子ヘリウム原子の精密レーザー分光による反陽子質量の精密測定や,反水素原子の大量生成などの成果が出始めた.反陽子を減速することがなぜ面白い物理につながるのか,最近の結果を紹介しながら将来の展望を示す.
著者
堀 正樹
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

2007年度は、欧州合同原子核研究機構CERNの反陽子減速器施設を用いて、反陽子ヘリウム原子の二光子吸収分光実験を行った。そして、反陽子ヘリウム原子の二光子遷移エネルギーを、3ppbという世界最高精度で計測することに成功した。これによって、素粒子物理の基本的な定理と考えられているCPT対称性を、従来よりも高い精密で検証した。この実験では、まず反陽子ヘリウム原子を5ケルビンという低温標的中で100万個合成した。次に、出力波長を10桁の精度で安定化させたcwチタンサファイアレーザーをパルス増幅して、この光線を原子に照射した。この際に、特別な波長の組み合わせを利用することによって、原子内で非線形な二光子遷移をひきおこすことに成功した。次に、超伝導ポールトラップを開発して、振幅4キロボルト、周波数35メガメルツ、Q=100万の特性をもった空洞を実現した。このトラップは、高純度ニオブ製で、電子ビーム溶接を用いて建設したものである。超流動ヘリウムで常時、1.8度ケルビンに保たれる。ニオブ電極の表面では、数メガボルト毎メートルという非常に強い電場が発生するが、これによって電子が発生し、放電を誘発するという問題が発生した。現在、表面の洗浄方法や、電極の形状を工夫することによって、この問題を解決しようとしている。また、反陽子ビームを測定する新型の検出器を開発した。これは、厚さ数百ナノメートルのカーボンフォイルに反陽子が衝突した際、発生する二次電子をとらえて、高感度カメラで撮影する仕組みになっている。特殊な加速電極を用いることによって、数ナノ秒という超高速シャッターを切ることができる。