著者
今井 真子 堀 薫夫
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第4部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.151-172, 2010-09

神谷美恵子の生きがい論は多くの人に共鳴を生んだが,この生きがい論はいかなる特徴をもち,またそうした特徴の生成過程は,彼女の生育史のなかでいかに育まれたのか。本稿1)では,神谷の主著である『生きがいについて』で描かれた言説をKJ法で構造化し,その特徴を「宗教」「苦悩からの変革体験」「自己形成」ととらえた。そして彼女の日記や書簡集などを手がかりとして,これらの3つの特徴の生成プロセスをたどった。Kamiya Mieko (1914-1979) was a psychiatrist who constructed and elaborated the idea of "Ikigai", worth of living, in Japanese sense in 1960s and her idea is still active in 2000s. This article is an attempt to elucidate the main characteristics of her idea of "Ikigai" and to detect the emerging processes of these traits by examining her essays, bibliographies, diaries and so on. Three characteristics drawn by KJ Method were "Her Idea of Religion" "Reconstruction Experience" "Self Development." Kamiya's bloomimg of her idea of Ikigai is also a blooming of herself in itself.
著者
三宅 謙太郎 高川 亮 諏訪 雄亮 茂垣 雅俊 舛井 秀宣 長堀 薫
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.827-832, 2014 (Released:2015-10-30)
参考文献数
10

はじめに:術後の段階食は慣習として行われてきたものであり,味の満足度も高くないため必ずしも必要ではないとされているが,胃切除後の症例を検討した報告は少ない.目的:食事内容の満足度向上と,在院日数短縮のために導入した幽門側胃切除後に全粥で開始するパスの有用性を明らかにする.対象と方法:幽門側胃切除術を行った204症例を段階食群(A群)104例と全粥開始群(B群)100例に分け,A群は術後5日目に3分粥,B群は術後5日目に全粥で開始し,2群間の術後在院日数,合併症などを比較検討した.結果:術後合併症発生率に有意差は認めず(A群vsB群:19%vs20%,p=0.889),短期の予後栄養指数では有意差を認めなかったが,アンケート調査の満足度も高く術後在院日数はB群で2日短縮した(12日vs10日,p<0.01).結語:幽門側胃切除術後に全粥で経口摂取を開始することは,安全であり,患者満足度の向上,在院日数短縮に寄与すると考えられた.
著者
堀 薫夫
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第4部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.173-185, 2009-09

元マックス・プランク研究所研究員のポール・バルテス(1939~2006)は,1970年代から2000年代にかけて独自の生涯発達心理学を提唱してきたが,まだ彼の生涯発達論の全体像は十分に検討されていない。本稿は,生涯学習/社会教育領域の理論と実践への示唆を得ることをねらいとして,以下の3点から彼の生涯発達論の考察を行うものである。第一は,バルテスの生涯と著作を検討することである。第二に,バルテスの生涯発達論の核となる「選択的最適化とそれによる補償」の理論の内実を再検証することである。第三に,高齢期における発達のポジティヴな側面である,「知恵」概念を検討することである。この概念を用いてバルテスは,ポジティヴ・エイジングの体現化された部分を説明しようとしたが,しかし人生第四期の人びとの現実に直面した彼は,それまでの理論の修正の必要性を痛感した。とはいえ,ポジティヴ・エイジングを生涯にわたって追い求めた彼の姿勢は,生涯学習/社会教育の研究者にも必要とされる資質だといえよう。Paul Baltes (1939 - 2006), former researcher of Max Planck Institute, was an architect of lifespan developmental psychology from 1970s to 2000s. Holistic picture of his theory of human lifespan development was not fully examined in the literature of Japanese lifelong learning social education. In order to shed some suggestive light on the theory and practice of social education, this article attempts to reevaluate his theory of life-span development from the following three angles. The first is an examination of Baltes' bibliography and works in an effort to understand a total image of his life. The second is a reconsideration of Baltes' main theory of life-span development, namely "Selective Optimization with Compensation." The third is an examination of his idea of wisdom, positive aspects of human development in our later adulthood. With the idea of wisdom, Baltes elucidated the culmination of positive aging, but facing the realities of the oldest-old people, he then realized the needs of revision of his theory. But his attitude toward positive aging itself is a quality needed for the researchers in lifelong learning social education.
著者
鈴木 道隆 茂垣 雅俊 浜口 洋平 舛井 秀宣 福島 忠男 長堀 薫
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.1958-1961, 2009 (Released:2010-01-05)
参考文献数
13
被引用文献数
3

症例は64歳,女性.関節リウマチのため10年前よりステロイドを内服していた.平成18年12月,腹痛・悪心嘔吐を主訴として救急外来を受診し,腹部単純X線写真で著明な小腸ガス像を認めたため,腸閉塞の診断で入院となった.第2病日にイレウス管を挿入するも,自覚症状・画像所見はともに改善せず,第6病日に呼吸困難を発症した.胸部単純X線検査・胸部CT検査で右胸腔内に拡張した小腸を認めたため,横隔膜破裂と診断した.第7病日に横隔膜修復術,イレウス解除術を施行した.術後経過は良好で,第25病日に退院となった.横隔膜破裂の原因は外傷が殆どであるが,本例は,ステロイド内服による組織の脆弱化と腸閉塞による腹腔内圧の上昇が原因と考えられた,稀な発症様式の横隔膜破裂例であった.腸閉塞による横隔膜破裂の報告は,検索しうる限り本例が本邦で2例目であった.若干の文献的考察を加えて報告する.