著者
堀江 瑶子
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.35-52, 2015 (Released:2018-04-04)
被引用文献数
3

本稿では,エスニックビジネスがホスト社会における中心商店街に進出する過程および要因を解明することを目的とした。対象地域は,明治期以降横浜の中心商業地としての機能を有する商店街,伊勢佐木モールである。本商店街の分布する横浜市中区は,1990年代以降ニューカマーが急増し,それと同時に商店街周縁地域には多数のエスニック事業所が分布,2000 年代前半に飽和状態を迎えた。一方,伊勢佐木モールにおいては,バブル経済崩壊以降,テナント賃料の低下や集合住宅および雑居ビルの過剰供給,老舗店舗の撤退が相次ぎ,テナント入居機会が拡大した。その結果,2000年代以降より比較的商業的価値の低い伊勢佐木町3~7丁目においてエスニックビジネスの進出が開始された。2010年代以降になると,商況の著しい伊勢佐木町2丁目におけるエスニックビジネスの展開が顕著となり,その業種構成についても従来の同胞集団向け店舗のみならず,日本人顧客を主要な対象と定める店舗が多数進出していることが明らかとなった。
著者
橋爪 孝介 児玉 恵理 落合 李愉 堀江 瑶子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.1, 2014 (Released:2014-10-01)

本研究では、水田を利用した内水面養殖業が盛んに行われてきた長野県佐久市を取り上げ、佐久鯉に焦点を当てることで地域の内水面養殖業の変容を明らかにすることを目的とする。 現在では水田養鯉はほとんど行われなくなり、一部の自給的な生産を除き、養鯉のほとんどが内水面養殖業に特化した事業者によって担われるようになった。これらの事業者は養魚事業者、加工事業者、自給的養魚者の3つに類型化できる。事業者は佐久鯉の養殖だけでは現在経営を成り立たせることは困難であり、他の収入源を確保した上でコイの取り扱いを継続している。 厳しい経済状況でコイの取り扱いが継続されている背景として、地域に根差した鯉食文化の存在を指摘できる。佐久市では正月や慶弔時にコイを食べる習慣が維持されているほか、佐久鯉まつりの開催など地域のシンボルとして佐久鯉が活用されている。また市民団体・佐久の鯉人倶楽部による佐久鯉復権運動、食育活動、佐久鯉を活用した新商品の開発など、佐久鯉の消費拡大に向けた取り組みが行われ、地域の内水面養殖業を支えている。
著者
児玉 恵理 橋爪 孝介 落合 李愉 堀江 瑶子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.2, 2014 (Released:2014-10-01)

長野県佐久市では水田養魚という特徴的な内水面養殖業が行われ、養殖対象魚種は主にコイであった。戦後は米の収量が重視され、コイについても大型の切鯉が好まれるようになり、水田と養殖池は次第に分離した。生産面でも米は農家、コイは養殖事業者に分化した。こうした中、フナは水田での養殖(水田養鮒)が現在も行われており、農家の副業として継続されている。本研究ではフナに着目し、水田養魚の変容を明らかにすることを目的とする。