- 著者
-
児玉 恵理
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
- 巻号頁・発行日
- vol.90, no.3, pp.241-256, 2017-05-01 (Released:2022-03-02)
- 参考文献数
- 35
本稿は,深谷市を事例に,各主体による深谷ねぎのブランド化への対応を踏まえて,その課題を考察することを目的とする.深谷市では深谷ねぎの産地偽装を契機として,2002年以降,行政とJAが積極的にブランド化への動きを開始した.しかし,深谷ねぎ産地において産地市場が複数存在していることなどから統一的なブランド規格を設定することが難しくなっている.市町村およびJAの合併に伴い,深谷市の北部と南部とでは自然条件や社会経済条件に違いがあることから,ねぎ生産をめぐってこれら地域間には生産者の意識に温度差が見られる.深谷市のねぎ栽培は,地形の異なる地域にまたがって存在しているために,深谷ねぎのブランド化が滞る要因になっている.深谷ねぎのブランド化は,行政と一部の産地市場による地域振興を目的とした地域ブランド化と,周年栽培とJA外出荷を行う商業的農家による個人ブランド化の二つの方向で進んでいるのが現状である.