著者
塚本 直幸 ペリー 史子 吉川 耕司 南 聡一郎
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学人間環境論集 (ISSN:13472135)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.101-137, 2016-03

本論は,筆者らが継続的に行ってきたLRT(Light Rail Transit)整備に関わる各国の財源制度と個々の都市特性との関連で,整備手法や整備効果がどのように異なっているかについての体系的な現地調査の一連の流れの中にある。すなわち,LRT整備財源制度の把握を行い,都市特性に特徴があると考えられるスペイン3都市,フランス3都市の現地調査と交通政策担当者に対するヒアリングに基づいて,各都市の特性に応じたLRT整備計画の狙い,社会的合意形成プロセス,整備効果,LRT関連施設のデザイン決定プロセス等に関する情報収集を目的として実施したものである。
著者
塚本 直幸 林 良一
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学人間環境論集 (ISSN:13472135)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.83-93, 2009-06

本論文では,道路空間の「公共性」に関する市民意識を形成する構造をアンケート調査から日独比較分析することで,道路空間利用に関する社会的合意形成のための有効な方策に資することを目的とした。アンケート調査結果によれば,日本(堺市)でもドイツ(ヴュルツブルク市)でも,現在の都心部における自動車による交通混雑,交通事故,生活・歩行環境の悪化,商店街等の活力低下などの面から,都心部への自動車乗り入れ規制を容認する意識が強い。次に,日本では自宅直近の道路に対する「私的」感が強いが,ドイツでは,他の人々による道路の多様な使われ方に寛容であり「私的」感は薄い。逆に,自宅前道路の通行規制や道路整備に伴う建物移転など,公共による私権制限に対する反発はドイツの方が強く,日本の方が公共的な事業に対する協力意識は高い。以上のことを路面公共交通整備のための道路空間の再配分という観点から整理すると、以下のことがいえる。まず、ドイツでは意識面から私的制限に対する抵抗の大きさの反映として、社会的合意を得るための法体系、ガイドライン・基準の整備状況、情報公開制度、予算的裏付け等が適切に整備されていると考えることができる。わが国では、これらがあいまいなまま、ある場合には行政の恣意的施策と地域有力者だけの根回しで進められた事業も多いと考えられ、行政と市民の不幸な相互不信感を生み出す一要因となっている。近年のわが国市民の権利意識の増大と行政活動の公平性・透明性・客観性の確保という点から、ドイツに倣った同様の「仕組み」を整えればLRT整備が急速に進む可能性はある。その際、わが国の直近道路空間に対する「私的感」にも十分に配慮した計画内容とすることが合意を進める上で重要である。
著者
波床 正敏 塚本 直幸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.599-608, 2005-10-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
22

本研究では、公共交通の輸送需要と運行頻度の関係に着目し、速度相当のパフォーマンス指標として期待サービス速度を定義した。この指標は輸送需要の増加にともない増大し、表定速度を漸近線とする。自動車交通についても輸送需要を人単位に換算し、公共交通と比較可能とした。次に、自動車交通と公共交通との両方が整備される場合、総合的に都市交通空間がどのようなパフォーマンスを示す可能性があるかについて考察した。その結果、公共交通の小規模な水準向上では道路渋滞が解消しないばかりか、乗客減少の可能性すらあること、車線増設で渋滞が発生する可能性があること、総需要減少で渋滞が発生する可能性があることなどがわかった。
著者
塚本 直幸
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近年、環境保全・都市再生・都市交通問題解決のための都市の装置として注目されているLRT(Light Rail Transit、次世代型路面電車システム)を対象として、その整備の社会的合意を得るために、どのような啓発活動が必要かについて堺市の事例に基づいて実証的に研究したものである。研究機関と行政・市民が連携して活動すること、新しい交通システムとしてのLRTの役割を具体的に示していくこと等が、市民理解を進める上で重要であることが明らかとなった。