著者
波床 正敏 中川 大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_725-I_736, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
23

全国新幹線鉄道整備法が制定されて40年以上経過し,当初構想の全体ネットワークも徐々に建設されつつある.だが現在の日本の幹線鉄道整備は欧州諸国とは異なり,原則として高速新線の建設しか手段として持たない.ミニ新幹線やスーパー特急などの整備手法についても整備計画路線の暫定整備手法として存在するほか,既設線における速度向上も補助的な手法としては考えられるものの,果たしてこれら手法を組み合わせて,どの程度の改善が可能なのかは明瞭ではない.本研究では,2010年時点の路線網と工事中路線が完成した状態を基準とし,2040年を想定した旅客流動を前提にGAを用いて最適な幹線鉄道網を探索した.その結果,整備スキームを改善することで地域間交流を拡大できるとともに多様性を向上できることがわかった.
著者
波床 正敏 山本 久彰
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_669-I_676, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
9
被引用文献数
5

鉄道やバスに関する需給調整規制が廃止され,鉄道事業法も2000年に改正されることで鉄道事業への参入が簡素化されたが,同時に,鉄道事業を廃止する際には許可が必要であったものが,事前届出制になったため,比較的容易に事業撤退できるようになった.このような需給調整規制の廃止は,自由な競争の下,鉄道事業の活性化によってサービス水準の向上を狙ったものであったが,その一方で地方部における鉄道サービスの衰退が進行した.本研究はこのような法改正前後で鉄道事業からの撤退がどの程度変化したかを調査し,需給調整規制廃止の影響を分析した.その結果,大手私鉄や第三セクター鉄道などで鉄道の廃線が進行したことが明らかとなった.
著者
波床 正敏 中川 大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_629-I_641, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

1964年に世界初の高速鉄道である東海道新幹線が開業し,2014年で50年を迎えた.この間,わが国では複数の新幹線が整備されてきたが,厳しい経済合理性を求められる社会環境やオイルショック等が影響し,世界的に高速鉄道の役割が注目される昨今においても新幹線網整備は必ずしも活発ではない.このような現状のネットワークは,特に国鉄解体民営化以後の幹線鉄道政策に依るところが大きいと考えられる.そこで本研究では,国鉄民営化直後の1990年を基準とし,当時の予想としての2025年における将来人口分布や当時明らかになっていた旅客流動データ等を前提に遺伝的アルゴリズムを用いて幹線鉄道網を最適化した.探索結果と実際に実施された幹線鉄道整備を比較し,整備政策が適切であったかなどについて考察を行った.
著者
中川 大 西村 嘉浩 波床 正敏
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.57-64, 1993-12-01 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

Since Meiji era, the population had been increasing rapidly and its distribution has been changing in Japan. On the other hand, the construction of the transportation network has been developing and it has caused the change of accessibility between regions in Japan. It is generally thought that the construction of the transportation facilities makes some contributions to the development of the regions. But in the present condition, it cannot be affirmed that it is understood accurately that the transportation has a significant effect on the regions.In this study, we surveyed the relation between the population and the sufficiency of the transportation by using all census data of all cities, towns and villages. As a result, it can be noted that the period of the construction of the transportation has a remarkable effect on the changes of their population.
著者
中川 大 波床 正敏 伊藤 雅 西澤 洋行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.590, pp.43-50, 1998-04-20
被引用文献数
2

交通需要予測や空港選択など国際間交通について分析する際に, 空間的抵抗を表す指標としてこれまで用いられてきた「所要時間」は, 定義が不明確である上, 必ずしも適切に利便性を反映したものとはなっていないという問題点があった. そこで本研究では, 国際交通の分析のための指標として, 地点間の期待所要時間を意味する「積み上げ所要時間」の考え方に着目し, まず空港選択モデルと海外出国者発生量モデルを構築することによって, この指標の有効性を示す. そのうえで, これを用いて国内各都市の国際交通の利便性についての分析を行う.
著者
波床 正敏 中川 大
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木情報利用技術論文集 (ISSN:13491040)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.71-82, 2007

本研究では、スイスRail2000 政策のような駅間所要時間や発車時刻を調整することで利便性を向上させる方針の場合、費用制約下でどの路線をどれだけ改良すれば、全体の利便性を効率よく改善できるかを具体的に計算するシステムを開発した。このシステムはナップサック問題を取り扱うのでGAを用いたが、乗継ぎの良否という局所解の多い問題を扱いながら、期待所要時間という計算量の多い指標を高速演算するために各種の工夫をした。例として分析した九州の鉄道網では、比較的小規模な投資で乗継ぎを含めた総合的な利便性に関して比較的大きな効果を引き出せる可能性があり、今後の幹線鉄道整備の基本策になりうることががわかった。
著者
波床 正敏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00055, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
17

スイスではBahn 2000という幹線鉄道政策が1987年に開始され,最小限の投資による新線建設や路線改良等によって主要駅での乗り継ぎ利便性を大きく向上させ,乗客数を伸ばした.本研究に至る研究において政策実施の直前直後を比較する分析を行ったが,政策背景調査の不足,政策実施前に行われた試行的な施策の分析の未実施,政策実施直後の2005年には未整備区間が残存した等の課題があったため,本研究はそれらに対応したものである.本研究の結果,Bahn 2000実施前の1982年において主要路線で増便と等間隔ダイヤ導入が行われ,待ち時間や乗り継ぎ時間等が大きく削減されたことがわかった.また,政策実施後の評価を2015年に変更したことでその間に路線整備が進行し,乗り継ぎ改善効果をより正確に評価できた.
著者
波床 正敏 中川 大
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.487-498, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
38

金国新幹線鉄道整備法における幹線鉄道網整備の手段は新幹線整備だけであるが、スイスの幹線鉄道政策Rail2000では主要駅での乗継ぎ利便性向上を実現するために、路線改良や新線建設、高性能車両の投入などを行ってきており、新線整備延長は短いものの鉄道利用者数を伸ばしている。本研究では、日本がスイスと同様の政策を採用した場合、一定の費用制約下でどのような幹線鉄道体系を構築しうるかを、九州の幹線鉄道網を対象に遺伝的アルゴリズムを用いた計算により明らかにした。その結果、これまでの高速萩線建設に加えて各種の路線改良を組み合わせる手法を採用することが効果的であることが示された。
著者
波床 正敏 吉村 晟輝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_991-I_1004, 2018

ドイツでは高速新線の開通にあわせて1991年にICEが運行開始され,在来線改良区間も活用しながら,現在ではほとんどの主要都市に対してICEのサービスが提供されている.本研究では,ドイツにおける高速新線建設や在来線改良に伴う影響を分析するため,日本の東海道新幹線開業とほぼ同時期の1963年以降概ね10年ごとに2015年までの6年次について,主要都市間の各種所要時間指標を計測し,その特徴を考察した.<br>その結果,広域的には東西ドイツ統一が都市間の所要時間変化に大きな影響を与えたこと,東西統一以前は速度向上と運行頻度や乗り継ぎ利便性向上がともに行われていたが,近年は運行頻度や乗り継ぎ利便性向上が重点的に実施されており,スイスのBahn 2000政策と同様の鉄道システムが導入されつつあることがわかった.
著者
波床 正敏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_809-I_820, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
22

フランスでは1981年にTGVが運行開始され,現在までに多くの主要都市に対してTGVサービスが提供されている.本研究では,フランスの幹線鉄道政策を振り返るとともに,近年の高速鉄道整備に伴う影響などについて分析するため,TGV導入前の1963年,導入直後の1985年,全国展開期の2005年の3年次について,主要都市間の各種所要時間指標を計測し,その特徴を考察した.その結果,最初のTGVが開通した直後の1985年以前では速度向上と乗り継ぎ利便の改善が図られることで総合的な利便性が大きく向上したが,1985年以後のTGVネットワークの全国展開期においては速度は向上したものの乗り継ぎ利便が悪化することが多く,総合的な利便性の改善は小さいことがわかった.
著者
中川 大 波床 正敏 加藤 義彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.482, pp.47-56, 1994-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
18
被引用文献数
6 3

本研究は, 交通網整備によってもたらされる都市間の交流可能性の変遷を計測する方法について論じるとともに, 実際にわが国の都市間を対象としてその計測を行ったものである. 計測にあたっては,「滞在可能時間」とこれを用いたアクセシビリティを指標として採用し, 明治以降の5時点において全国の都道府県庁所在都市を対象に交流可能性を求めた. また, その結果を分析することによって, 高度な交通機関の整備の途上期において交流可能性の地域間格差が広がる期間があることなどわが国の交通整備による交流可能性の変遷の特徴を明らかにしている.
著者
波床 正敏 塚本 直幸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.599-608, 2005-10-31 (Released:2010-06-04)
参考文献数
22

本研究では、公共交通の輸送需要と運行頻度の関係に着目し、速度相当のパフォーマンス指標として期待サービス速度を定義した。この指標は輸送需要の増加にともない増大し、表定速度を漸近線とする。自動車交通についても輸送需要を人単位に換算し、公共交通と比較可能とした。次に、自動車交通と公共交通との両方が整備される場合、総合的に都市交通空間がどのようなパフォーマンスを示す可能性があるかについて考察した。その結果、公共交通の小規模な水準向上では道路渋滞が解消しないばかりか、乗客減少の可能性すらあること、車線増設で渋滞が発生する可能性があること、総需要減少で渋滞が発生する可能性があることなどがわかった。