著者
矢野 和成 森 秀樹 南川 清 上野 照剛 内田 詮三 長井 健生 戸田 実 増田 元保
出版者
水産庁西海区水産研究所
雑誌
西海区水産研究所研究報告 (ISSN:0582415X)
巻号頁・発行日
no.78, pp.13-30, 2000-06

電界印加実験および局部電界発生実験(電撃実験)を用いて,電気刺激に対するサメ類の反応について研究を行った。電界印加実験(EFE)は,クロトガリザメ,ネムリブカ,トラフザメの3種類で行った。実験方法は,直径7メートルの円形水槽の中心部と縁辺部に銅板電極を設置し,電流を流して実験魚の遊泳行動の観察を行った。実験は方形波パルスと60Hz正弦波交流を電力増幅し,電極間に印加した。電界印加実験は1回の実験につき10分間行い,ビデオカメラによる撮影と目視による行動観察を行った。3種類の実験魚の通常の遊泳行動は,円形水槽の縁に沿って遊泳していた。クロトガリザメとネムリブカは,電界印加を与えたところ,頭部を左右に振り急激な方向変換をし,その回数は通常の遊泳行動よりも多かった。そして,電極付近には近づかず,電極間もほとんど通過することがなく,これら2種は電界を嫌う行動が見られた。一方,トラフザメは電界印可を行っても遊泳行動に変化が現れることがなかった。局部電界発生実験(PEF)は,EFEの実験魚3種とイタチザメについて円形水槽で,ツマグロ,ドチザメ,ナヌカザメ,トラザメでは長方形水槽(180cm×120cm×70cm)で実験を行った。クロトガリザメ,ツマグロ,ネムリブカ,ドチザメは,電撃刺激に対して非常に強い逃避行動の反応がみられた。ナヌカザメとトラザメでは,電撃刺激に対して頭部をほんの僅か振る程度の非常に弱い反応があり,逃避行動もみられなかった。イタチザメとトラフザメは電撃刺激に対してまったく反応しなかった。以上のように電気刺激に対して非常に強い逃避行動がみられる種類もいるが,まったく反応しない種類もみられ,これら刺激に対する反応には種類別に違いがあることが判明した。そのため,電気刺激に対する反応が強い種類では,サメ類の人的被害防止あるいは漁業への食害防止のための電気刺激を利用できることが示唆された。
著者
増田 元保
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.29-35, 1998-05-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14

Mating, the spawning cycle, embryonic development and growth of the white spotted bamboo shark, Chiloscyllium plagiosum, were observed in an aquarium. Mating, which continued for about five minutes, was observed twice in February and May, 1993. Premating behavior included the male shark swimming with the female for thirty minutes, biting the pectoral fin of the latter. From spring to summer, two eggs were deposited at each spawning, the latter occurring every 6 or 7 days on average. After mating, the female shark was separated from the male. Fertilized eggs were produced for about two to five months after copulation, apparently due to sperm storage and delayed fertilization. The average hatching period was 128.2 days. The total length and weight of young at birth averaged 16.6 mm, and 15.5 g, respectively, the former reaching 30 cm after one year.