著者
熊沢 賢二 増田 秀樹 西村 修 平石 真也
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.108-113, 1998-02-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
5 9

コーヒー飲料の加熱処理による香気変化について検討し,以下の結果を得た.1) ガスクロマトグラムでは,furfuryl acetate以外に顕著な差は認められず,コーヒー飲料の加熱処理による香気変化に大きく関与する成分は見いだせなかった.2) FD-クロマトグラムで,加熱処理により減少する2-furfurylthiol, methional, 3-mercapto-3-methyl-butyl formate,β-damascenoneおよびskatoleの5成分を見いだした.これらの香調および閾値を考え合わせた結果,コーヒー飲料の加熱処理による香気変化に,これら5つの香気寄与成分の減少が大きく関与していると推定した.3) 上記香気寄与成分を含むモデル実験から,コーヒー飲料中の香気寄与成分は加熱処理により一般に,酸化,熱分解,あるいは加水分解反応が起こった結果,減少すると考えられる.
著者
増田 秀樹 深尾 奈央 小林 里穂 蜂須賀 祥子 森 紀之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.200-210, 2017-04-15 (Released:2017-04-29)
参考文献数
46
被引用文献数
1 1

官能評価(試験1,2)により,刺激的な香味が軽減された液状ウィンターセイボリーエキス(WSL)の用量(0.25g ; カルバクロール(CAR)含有量 : 0.075mg,チモール(THY)含有量 : 0.015mg)とWSLの濃度(0.25% ; CAR濃度 : 0.75ppm,THY濃度 : 0.15ppm)を決定した.次いで,試験1,2で定めた用量と濃度のWSL含有飲料(DK1) 100mLの摂取試験を行なった(試験3).その結果,上肢(手首,手指),下肢(足首,足指)の体表温低下が有意に抑制され,首の体表温が有意に上昇した.さらに,口腔·咽頭内での刺激が体温変化に関与しているかどうか明らかにするため,ウィンターセイボリーエキス粉末(WSP)(80mg ; CAR含有量 : 0.075mg,THY含有量 : 0.015mg)のカプセル(CP)摂取試験を行なった結果,上肢のみに有意な体表温低下抑制効果がみられた(試験4).次いで,口腔内刺激の強弱を決定する因子となるCAR,THY濃度が重要であるのか明らかにするため,試験3と同用量のWSLを含有し,希釈媒体量を100mLから20mLに低減することでCAR,THY濃度をDK1の5倍に高めたWSL含有飲料(DK2)の摂取試験を行った(試験5).その結果,DK2摂取群(上肢,下肢に有意な体表温低下抑制 ; 額,首に有意な体表温上昇 ; 鼓膜温(深部温)の有意な上昇)は,DK1摂取群(上肢,下肢に有意な体表温低下抑制 ; 首に有意な体表温上昇)に比べ体温に影響がみられる部位が増加した.DK1摂取群とCP摂取群の比較,DK1摂取群とDK2摂取群の比較から,体温変化に,CAR,THYによる口腔·咽頭内の神経刺激が関与していることが示唆された.本結果から,ウィンターセイボリーが手軽に飲用し得る冷え抑制効果素材として有用なことが分かった.さらに,体温変化をもたらす同様な成分についても,口腔·咽頭内刺激を利用することにより,効果が増強される可能性があると考えられる.
著者
増田 秀樹 深尾 奈央 小林 里穂 蜂須賀 祥子 森 紀之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.200-210, 2017
被引用文献数
1

<p>官能評価(試験1,2)により,刺激的な香味が軽減された液状ウィンターセイボリーエキス(WSL)の用量(0.25g ; カルバクロール(CAR)含有量 : 0.075mg,チモール(THY)含有量 : 0.015mg)とWSLの濃度(0.25% ; CAR濃度 : 0.75ppm,THY濃度 : 0.15ppm)を決定した.次いで,試験1,2で定めた用量と濃度のWSL含有飲料(DK1) 100mLの摂取試験を行なった(試験3).その結果,上肢(手首,手指),下肢(足首,足指)の体表温低下が有意に抑制され,首の体表温が有意に上昇した.さらに,口腔·咽頭内での刺激が体温変化に関与しているかどうか明らかにするため,ウィンターセイボリーエキス粉末(WSP)(80mg ; CAR含有量 : 0.075mg,THY含有量 : 0.015mg)のカプセル(CP)摂取試験を行なった結果,上肢のみに有意な体表温低下抑制効果がみられた(試験4).次いで,口腔内刺激の強弱を決定する因子となるCAR,THY濃度が重要であるのか明らかにするため,試験3と同用量のWSLを含有し,希釈媒体量を100mLから20mLに低減することでCAR,THY濃度をDK1の5倍に高めたWSL含有飲料(DK2)の摂取試験を行った(試験5).その結果,DK2摂取群(上肢,下肢に有意な体表温低下抑制 ; 額,首に有意な体表温上昇 ; 鼓膜温(深部温)の有意な上昇)は,DK1摂取群(上肢,下肢に有意な体表温低下抑制 ; 首に有意な体表温上昇)に比べ体温に影響がみられる部位が増加した.DK1摂取群とCP摂取群の比較,DK1摂取群とDK2摂取群の比較から,体温変化に,CAR,THYによる口腔·咽頭内の神経刺激が関与していることが示唆された.本結果から,ウィンターセイボリーが手軽に飲用し得る冷え抑制効果素材として有用なことが分かった.さらに,体温変化をもたらす同様な成分についても,口腔·咽頭内刺激を利用することにより,効果が増強される可能性があると考えられる.</p>
著者
熊沢 賢二 和田 善行 増田 秀樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.266-273, 2007-06-15 (Released:2007-10-04)
参考文献数
18
被引用文献数
7 6

カンキツ(グレープフルーツ,オレンジ)果汁の香気寄与成分および加熱による香気変化に関与する成分の特性を検討し,以下の結果を得た.(1)AEDAによりカンキツ果汁の香気に寄与する41ピークを見出し,GC-MSおよびGC-Oにおける保持指標の比較により33成分を同定した.これらの成分の中でカンキツ果汁より初めてcis-4,5-epoxy-(E)-2-decenalを同定した.(2)FD-factorの比較から,各々のカンキツ果汁を特徴づける成分を明らかにした.また,加熱による香気変化の原因物質はいずれの果汁にも共通することを見出し,さらに,加熱による香気変化は減少する成分よりも増加する成分がより重要であることを推定した.(3)加熱によるカンキツ果汁の香気変化は,その大部分を加熱により増加した6成分にて説明することが可能であり,それらの中で2-methyl-3-furanthiolが最も重要な成分であることを明らかにした.さらに,この成分の重要性はいずれの果汁にも共通することを明らかにした.
著者
植野 壽夫 増田 秀樹 武藤 亜矢 横越 英彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.435-441, 2012-09-15 (Released:2012-10-31)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

本研究では,ストレス性疾患として代表的なうつ病と胃潰瘍に対するラベンダー熱水抽出物(Lavender aqueous extract, LAE)の効果を,それぞれの疾患モデルマウスを用いて検討した.抗うつ試験では,うつ病の動物モデルとして汎用さている強制水泳試験(FST)を用いてLAEの長期投与による効果を検証した.1日当たり500-2500mg/kgのLAEを15日間マウスへ反復経口投与することにより,自発運動量に影響することなくFSTにおける無動時間が有意に短縮した.さらに,抗うつ薬であるイミプラミン30mg/kgを15日間反復投与した場合も同様の挙動を示した.これらの結果から,LAEはマウスへの長期投与において抗うつ様作用を有することが示唆された.抗ストレス潰瘍試験では,マウスに強制水泳を負荷することにより発生させた実験的ストレス潰瘍に対して,予め500-2000mg/kgのLAEを単回経口投与することにより,マウスの潰瘍面積が対照群と比べて有意に減少した.以上の結果から,LAEの摂取がストレスに起因するうつ病や胃潰瘍の予防・軽減に有効である可能性が示唆された.
著者
増田 秀樹
巻号頁・発行日
2013

筑波大学博士 (工学) 学位論文・平成25年3月25日授与 (甲第6411号)
著者
坂本 隆行 早田 保義 河塚 寛 坂本 宏司 西村 修 増田 秀樹 筬島 豊
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.388-390, 2002-05-15
被引用文献数
1 6

含硫化合物の検出に適した炎光光度検出器(FPD)装着のSniffing-GCを用いたGC-におい嗅ぎ法により, メロンの香気成分中における含硫化合物並びにその匂い特性を調査した.メロン'ミヤビ'の香気成分中から9個の含硫化合物を検出し, 5個を同定した.3-(methylthio)propyl acetateの相対含量が19.47と最も多く, 次いでethyl (methylthio)acetate, ethyl 3-(methylthio)propionateおよび2-(methylthio)ethyl acetateだった.3-methylthio-1-propanolは同定された化合物の中で0.27と最も低い値であった.その他の未同定の含硫化合物は上記5成分に比べ極めて低い値であった.Sniffing-GCで3-(methylthio)propyl acetateおよびethyl (methylthio)acetateはそれぞれ甘みの入った青臭みおよびキュウリ様の青臭みを有し, その匂いは強かった.2-(methylthio)ethyl acetateは高濃度で検出されたが, GC-におい嗅ぎ法では感知されなかった.ethyl 3-(methylthio)propionateはフルーティーな青臭みを有したが, その匂いは弱かった.3-methylthio-1-propanolおよび他の4成分の匂いは感知されなかった.以上から, ミヤビの香気形成に, 3-(methylthio)propyl acetateおよびethyl(methythio)acetateが青臭みを与える成分として重要であることが明らかとなった.