著者
中司 弘樹 河野 靖美 松田 沙織 夏目 季代久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.437, pp.39-45, 2015-01-22

本研究は心音の脳波に対する影響を調べた.実験は、被験者白身の心音、彼らの母親の心音、他人の心音、雑音をランダムに提示し、その音源を聴取している時の脳波を測定した.またそれぞれの音源聴取後、アンケートを取り、その音源が、どれくらい心地良いか、眠気を誘導するか評価して貰った.測定した脳波との比較に用いた,脳波は、各音源聴取期間後半で高速フーリエ変換を行い、δ、θ、α、β、γの周波数帯域毎に平均周波数スペクトルパワー値及び各脳波測定電極間でコヒーレンスを計算した.その結果、パワー値に関しては脳波θ波が主に眠さ得点と相関がある事が明らかになった.一方、心音聴取時、聴覚野部位を含む脳波電極間のコヒーレンス変化が生じる事、その空間パターンは心音音源により異なる事が明らかになった.以上の結果は、私達は心音を区別出来、誘導する脳内情報処理が異なる事を示唆している.
著者
片山 冬馬 夏目 季代久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.227, pp.79-84, 2012-09-27
参考文献数
12

「飽き」はヒトが感じる情動で有り脳で処理されていると考えられる.「飽き」は学習効率低下の要因かもしれないが,もし科学的に素早く「飽き」を検出できれば,学習者に休憩を取るように助言したり,学習教材を変更する事で効率を下げずに学習できるようになると考えられる.そこで被験者に英語リズム学習を繰り返し行なってもらい,脳波(EEG)で「飽き」を検出出来るかどうか実験を行った.その結果,被験者が「飽き」を自覚する前に,前頭と後頭,頭頂と後頭のコヒーレンス値,及び頭表面の多くの場所でのα波,β波,γ波パワーが低下した.従って,コヒーレンス値減少及びパワー値減少が「飽き」と関連する脳の反応と考えられる.
著者
小柳 諒輔 小島 昇 夏目 季代久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.69, pp.21-25, 2013-05-27

私たちの日常の行動は主観的な嗜好性よって左右されている。最近、嗜好性に関連する脳波研究が行われ初めて来た。研究のほとんどは、どちらの顔が好きか、等視覚的な嗜好性の研究である。その研究では、前頭部θ波と、後頭部γ波が嗜好性に関与していると報告された。一方で、音楽は私たちにリラックス効果があり、ストレスを軽減してくれる。音楽療法は記憶障害患者、障害者に使用される。その効果は、好きな音楽を聴いた時、最大となる。従って、個々人の音楽嗜好性調べる事は脳波を用いる音楽療法にとって重要である。5名の健常男性(23.5±0.5歳(平均±標準偏差))に実験に参加して貰った。彼らは、30-35秒音楽を聴き、10秒間好き嫌いを判断した。その間、脳波測定を行った。音楽は、5-8ジャンルの20曲を聞いて貰った。脳波は高速フーリエ変換した後、4-8Hzのθ波、8-12Hzのα波,12-30Hzのβ波,30-50Hzのγ波の各周波数パワー値を計算した。さらに、パワー値をフィーチャーに1次元の交差判定を線形判別分析(LDA)を用いて行った。その結果、嗜好判断時、前頭部θ波パワー値は、好き判断時、嫌い判断時に比べて有意に高かった。一方、音楽聴取時及び嗜好判断時、後頭γ波のパワーは好き判断時より嫌い判断時の方が有意に高かった。交差判定の結果から、後頭γ波、前頭α波、γ波をフィーチャーにした場合、判別正解率が高かった。以上のことより、後頭γ波が嗜好判断に関わる脳波かもしれない。
著者
夏目 季代久 中司 弘樹
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.3-6, 2013-03-05 (Released:2013-05-17)
参考文献数
22
被引用文献数
1

脳内には様々な周波数を持ったリズム現象が観察されている.私たちはラット脳から作成した海馬スライスに,アセチルコリン作動薬であるカルバコールを投与すると,周波数15-20Hzのβ波様振動が出現する事を明らかにした.それらはまた周期30-40秒ほどでバースト的に誘導される.一方ラットを12時間12時間の明暗(LD)サイクルの環境下におくと,そのサイクルに引き込まれて行動する.L,D期それぞれのラットから切り出した海馬スライスにカルバコールを投与すると誘導したβ振動は異なった.この結果は,脳内神経の異なる周波数リズム間に相互作用がある事を示唆している.
著者
米澤 将 藤瀬 雅大 夏目 季代久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.473, pp.301-304, 2013-03-04

現在、多くの若者がうつ病にかかっている。うつ病の症状には、自動思考、体系的推論の誤り、抑うつスキーマ、コミュニケーション不足、睡眠リズム障害が挙げられる。これら若者のうつ病治療のために、コンピュータゲームを用いた新しい治療方法が提案されている。しかし、ゲームをする事により、本当に治療効果が出ているかどうかを確認する手段が無く、プレイヤーのゲーム治療に対するモチベーション維持が問題になっている。また治療を開始しても病院に行かない若者が多く、医師が経過を診断する事が難しくなっている。また様々な精神疾患患者では、そのコントロール脳波及びある課題実行時に異なる事が明らかになっている。本報告では、うつ病治療を行うための、3次元ロールプレイングゲームシステム(3D-RPG)を開発した。またそのゲーム中に課題を行い、その時の脳波をインターネットを介して病院に送り、データペースに保存可能なシステムを開発した。本セルフメンタルリハビリテーションシステムにより、うつ病の若者患者を有効に治療する事が出来ると、考えている。
著者
中野 雅文 新井 潤 夏目 季代久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.341, pp.19-24, 2006-11-03

近年θリズムは記憶機能との関係で積極的に研究されているが、海馬でのβリズムはこれまで研究されなかった。嗅覚学習でのβリズムは、記憶プロセッシングの検索過程に関連していると言われている。青斑核(LC)から生じるノルアドレナリン神経は、海馬に投射する。コリン作動薬であるカルバコールは、invitroにおいてラット海馬スライス様β振動を誘導する。本研究では、ラット海馬スライスCA3領域におけるカルバコール誘導β振動の発生に対するノルアドレナリン(NA)の影響を調べた。カルバコール(30μM)は、周波数15.6±0.3Hz、振幅0.7±0.1mV(mean±S.E.M.;n=24)のβ振動を誘導した。NA(50μM)は、その周波数を有意に増加させたが、振幅には影響しなかった。これらの結果は、LC活性が海馬CA3領域でのβリズムの周波数を調節する可能性があることを示唆している。