著者
多田 俊史 下浦 芳久 浦 芳美 福岡 幸子 甲斐 千穂 詫間 晴美 西田 玲子
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.2_99-2_103, 2006 (Released:2007-04-26)
参考文献数
14

当院でTPNに関連したと考えられた肝障害が認められた55名を対象とした。TPN開始から肝障害発症までの期間は3日まで6名、7日まで19名、14日まで12名、21日まで6名、28日まで4名、28日以降8名であった。グルコース投与速度は3mg/kg/min未満が16名、3~5 mg/kg/minが21名、5mg/kg/min以上が18名であった。脂肪製剤を14名で使用し、血液培養の結果から原因菌が同定された感染症合併は12名であった。肝胆道系酵素の最大値はAST:160±160 IU/L、ALT:162±169 IU/L、ALP:618±299 IU/L、γ-GTP:230±348 IU/Lで、肝障害の分類では混合型39名、肝障害型8名、胆汁うっ滞型8名であった。輸液内容変更のみの15名中14名が肝機能改善し、1名のみに改善が認められなかった。輸液内容の変更と経口・経腸栄養を開始した18名全員で改善が認められた。輸液内容を変更しなかった22名のうち経腸栄養を開始した2名で改善が認められた。また、内容を変更せずそのまま輸液を継続した20名中10名で改善が認められた。
著者
森井 和彦 福永 智栄 多田 俊史 中村 進一郎
出版者
一般社団法人 日本病院総合診療医学会
雑誌
日本病院総合診療医学会雑誌 (ISSN:21858136)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.214-222, 2023-05-31 (Released:2023-10-19)

がんの治療方針は staging や performance status に基づいて決定されることが多いが,高齢者の場合は平均余命が短く,複数の併存疾患や加齢による脆弱性を認めることがあるため, 高齢者総合機能評価(comprehensive geriatric assessment;CGA)を行わないで治療を始めるのは危険である。高齢者の脆弱性は日常的診療では拾い上げが不完全であり,CGAでの評価が望ましい。多忙な日常診療ではまず G8 Screening tool で脆弱性の疑われる高齢者をスクリーニングして,該当者に CGA を行うのが効率的である。CGAでは検証されたツールを用いて,instrumental activities of daily living(IADL),併存疾患,転倒,栄養状態,化学療法の毒性の予測,がん以外の要因による平均余命, 薬剤関連の問題,認知障害,うつ病,社会的支援システムの不足などを評価する。近年使用頻度が増えている免疫チェックポイント阻害剤の 有益性・有害性の予測にもCGAが有効かどうかは,今後の課題である。
著者
山本 健太 金森 明 桐山 勢生 谷川 誠 久永 康宏 豊田 秀徳 多田 俊史 安東 直人 新家 卓郎 坂井 圭介 安田 諭 安藤 祐資 木村 純 曽根 康博 熊田 卓
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.1667-1672, 2013 (Released:2013-08-28)
参考文献数
17

83歳女性.平成10年に胆嚢結石症に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.平成22年11月上腹部痛精査のため入院した.入院時肝胆道系酵素上昇を認め,腹部造影CT検査で拡張した総胆管内に局所的に高いCT値を有する結石を認めた.感染兆候を認めず抗血小板薬内服中のため保存的加療を開始し,第7病日にERCPを施行した.総胆管は拡張し,内部に迷入クリップと考えられる金属陰影を含む結石透了像を認めた.内視鏡的乳頭切開術を施行し,截石した.第9病日合併症なく退院した.本症例は胆嚢摘出時に超音波凝固切開装置を使用しクリップを減らす工夫をしたが胆管結石を生じた.比較的稀な合併症であり文献的考察をふまえて報告する.