- 著者
-
大井 暁
- 出版者
- 公益財団法人 損害保険事業総合研究所
- 雑誌
- 損害保険研究 (ISSN:02876337)
- 巻号頁・発行日
- vol.79, no.1, pp.135-158, 2017-05-25 (Released:2019-04-10)
- 参考文献数
- 44
逸失利益を一時金賠償方式で算定する場合,将来取得する逸失利益を現在価額に換算する中間利息控除が行われる。民法(債権法)改正案では,中間利息控除に関する規定が新設され,中間利息控除は法定利率により行い,法定利率が当初3%から変動する案とされている。裁判実務上,若年者の逸失利益の算定方式として全年齢平均賃金にライプニッツ方式を用いる東京方式が定着しているが,この方式に従い改正案による3%の法定利率(変動制)で中間利息を控除すると,改正前後の逸失利益の格差や男女間格差が拡大する懸念がある。法改正を機に逸失利益の算定方法を再考する必要があると考える。具体的には従来あまり用いられて来なかった「表計算方式」ないし「個別割引方式」が再評価されて然るべきと考える。また,中間利息の控除割合の変更で損害額が大幅に増加することから,適用利率の基準日,現価計算の基準日は明確に決定される必要がある。