著者
秋葉 絢子 浅野 尚文 大喜多 肇 中山 ロバート 中村 雅也 松本 守雄
出版者
東日本整形災害外科学会
雑誌
東日本整形災害外科学会雑誌 (ISSN:13427784)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.159-166, 2020 (Released:2020-04-29)
参考文献数
22

若年成人の大腿部筋内に発生したきわめてまれな類血管腫型線維性組織球腫の1例を経験した.切開生検において明らかな腫瘍細胞を認めず,血腫などの良性嚢胞性疾患との鑑別が大きな問題となった.臨床および画像所見から,類血管腫型線維性組織球腫などの腫瘍が否定できなかったため,広範切除を行い,最終的に類血管腫型線維性組織球腫と診断した.
著者
朱 瀛瑤 木花 いづみ 大喜多 肇 栗原 佑一
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.567-571, 2022 (Released:2022-09-22)
参考文献数
9

77歳,男性.初診3ヶ月前から右鼠径部の皮疹に気づき,増大傾向のため切除目的に当科を受診した.右鼠径部に径1 cm大の境界明瞭な紅色結節を認め,結節の表面は角化を認めず,一部浸軟し乳頭腫状を呈した.病理組織像は,乳頭腫状の表皮変化を呈し,過角化,不規則な表皮肥厚を認めた.表皮全層に有棘細胞様の異型細胞が増殖し,核腫大,異型分裂像,細胞の大小不同を認めた.コイロサイトーシスを認めず,異型細胞の真皮内浸潤を認めなかった.免疫組織染色において,p16 INK4aは表皮異型細胞の核と細胞質に陽性を示した.ボーエン様丘疹症と診断し,有棘細胞癌に準じて腫瘍の辺縁より5 mm離して病変を全摘した.切除断端に腫瘍細胞の残存はなく,2年間経過した時点では再発を認めない.切除組織よりHuman papillomavirus (HPV)のDNA検査を行い,HPV 66型を検出した.一部のHPV型はヒトで発癌性があることが確認されており,子宮頸癌,陰茎癌,肛門癌,および中咽頭癌を引き起こす.発癌性の高いHPVはハイリスク群に分類され,皮膚でも爪部,外陰部の有棘細胞癌,Bowen病,ボーエン様丘疹症において子宮頸癌における粘膜ハイリスク型HPVの検出率が高く,性感染症としての側面を指摘されている.本症例で検出されたHPV 66型は粘膜ハイリスク型の一型であった.HPV 66型はボーエン様丘疹症での検出は稀であるが,皮膚においても発癌性がある可能性が示唆された.近年,子宮頸癌に対するHPVワクチンは世界的に広まっている.現在HPVワクチンは一部のHPV型の感染しか防ぐことができないが,本邦での普及がHPV関連腫瘍の発症率低下に寄与する可能性が期待できる.
著者
大喜多 肇
出版者
The Japanese Society of Pediatric Hematology / Oncology
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.136-140, 2019 (Released:2019-09-10)
参考文献数
28

横紋筋肉腫はICR分類にて胎児型,ぶどう状型,紡錘細胞型,胞巣型に分類されてきたが,2013年に発刊されたWHO分類第4版では紡錘細胞・硬化型が独立し,胎児型,胞巣型,多形型とともに4つのカテゴリーに分類されている.胞巣型の大部分にはPAX3-FOXO1あるいはPAX7-FOXO1融合遺伝子が存在し,本遺伝子の存在が胞巣型の組織型より,より強く予後と関連することが報告されている.本遺伝子の存在を予測する病理学的代替マーカーも開発され,臨床上,融合遺伝子の存在がより重視されるようになってきている.一方,乳児の紡錘細胞型では,VGLL2,TEAD,SRFの関与する融合遺伝子を持つ腫瘍が予後良好な腫瘍として報告された.また,年長児の紡錘細胞・硬化型や胎児型の一部ではMYOD1変異を持つ腫瘍が報告され,臨床病理学的特徴と合わせ,今後,疾患単位として認識されていくと考えられる.今後,分子異常を加えることにより,より精緻な分類が可能となることが期待される.