著者
原田 篤 黒部 仁 大塚 正彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.66-69, 2016 (Released:2016-07-29)
参考文献数
18

症例は2歳6カ月,女児.数回の嘔吐,間欠的腹痛を主訴に来院した.腹部単純X線にて2個の連なる異物と小腸の拡張を認めた.異物誤飲を疑い,両親に詳細な問診を行ったところ,日常的に使っている磁器治療器(ピップエレキバン®)を誤飲した可能性が考えられた.異物が腸閉塞の原因となっていると判断し,緊急開腹手術を施行した.開腹すると2個のピップエレキバン®が結合しバンドを形成,同部位に小腸が嵌まり込む形で絞扼性イレウスをきたしていた.異物誤飲は乳幼児の開腹歴のないイレウスの鑑別疾患に挙げる必要があり,消化管穿孔の症状がなくても,絞扼性イレウスを呈することがあるため,緊急開腹手術をすべきと考えられた.
著者
大塚 正彦 加藤 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.1248-1256, 1992-05-01
被引用文献数
61

1946〜1988年の43年間に癌研病院で手術された大腸癌2,656例のうち,低分化腺癌あるいは未分化癌と診断されたのは64例であり,全切除大腸癌の2.4%である.平均年齢および男女比は通常の大腸癌と大差なかったが,発生部位別頻度は右側結腸29例,直腸24例,左側結腸10例,肛門管1例であり,通常の大腸癌に比べ右側結腸の頻度が高かった.この64例を癌間質が少ない順にmedullary(med),intermediate(int),scirrhous(sci)に分類すると,med群に比べて後2者でリンパ管侵襲,リンパ節転移,腹膜播種が多く,予後は有意に不良であった.int群とsci群の間に有意差は認めなかった.また,Grimelius反応,NSE染色さらに電顕により64例中6例(9.4%)に内分泌細胞癌が認められ,非常に予後不良であった.大腸の低・未分化癌は,(1)内分泌細胞癌(予後不良),(2)内分泌細胞癌以外のmed群(予後良好),(3)int群+sci群(予後不良)に分類することが可能で,臨床的に有意義であると思われる.