著者
木下 良正 原田 篤邦 大成 宣弘 横田 晃
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.111-117, 2004-03-01 (Released:2017-04-11)

症例は71歳女性. 2ケ月前より左眼窩部痛と軽度の複視を主訴に来院した. 左眼の外転と外下方のわずかな眼球運動障害を認めるのみで眼球結膜充血や眼球突出, 眼圧の上昇もなかった. 血管撮影にて両側内頸動脈と外頸動脈から左上眼静脈へ多くのシャント血流が認められたが, 流出路がよく発達しているため塞栓術を施行しなかった. 退院3週間後, 左眼の完全眼球運動障害が出現し再入院となった. 神経学的には左眼痛の増悪および全方向性の複視, 左眼の全外眼筋麻痺を認めたが, 眼球結膜の充血はなく眼圧の上昇もなかった. 血管撮影にてシャント量はむしろ減少し流出路の顔面静脈の造影は不良となっていた. 下錐体静脈洞経由で海綿静脈洞の塞栓術を施行し症状の改善を得た. 軽微な複視と眼痛で発症し, 結膜充血を伴わず急速に症状が悪化した特発性頸動脈海綿静脈洞瘻症例を経験したので報告した.
著者
今村 陽一 久保 明義 松原 渉 熊谷 晴光 原田 篤実 松本 勲 竹中 正治 白石 恒雄
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.439-445, 1986 (Released:2010-07-05)
参考文献数
19

In order to evaluate the role of renin-angiotensin system and sympathetic nerve system to maitain the blood pressure during regular hemodialysis (HD), we examined the level of plasma renin activity (PRA), plasma norepinephrine (PNE) and plasma epinephrine (PE) before and after regular HD in 17 patients. The cardiac performance of them was also examined before and after HD by echocardiographic examination. 10 patients (group 1) exhibited stable blood perssure during HD, while 7 patients (group 2) exhibited a fall (≥10 mmHg) in blood pressure during HD. PNE significantly increased after HD in group 1 (217±119 to 317±141 pg/ml, mean±SD, p<0.01), unchanged in group 2 (443±387 to 538±391 pg/ml). PE did not change after HD in both groups: 25.6±17.7 to 25.6±19.8 pg/ml in group 1, 39.7±33. 5 to 34.9 ±24.1 pg/ml in group 2, PRA significantly increased after HD in both groups : 4.01±2.95 to 7.43±4.95 ngAI/ml/hr in group 1, 5.13±6.76 to 8.33±8.97 ngAI/ml/hr in group 2, p<0, 05, for each. There was not significant difference between both groups in the changes of cardiac performance before and after HD. These data suggest that sympathetic nerve system may play a important role on the maintenance of blood pressure during HD.
著者
原田 篤 黒部 仁 大塚 正彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.66-69, 2016 (Released:2016-07-29)
参考文献数
18

症例は2歳6カ月,女児.数回の嘔吐,間欠的腹痛を主訴に来院した.腹部単純X線にて2個の連なる異物と小腸の拡張を認めた.異物誤飲を疑い,両親に詳細な問診を行ったところ,日常的に使っている磁器治療器(ピップエレキバン®)を誤飲した可能性が考えられた.異物が腸閉塞の原因となっていると判断し,緊急開腹手術を施行した.開腹すると2個のピップエレキバン®が結合しバンドを形成,同部位に小腸が嵌まり込む形で絞扼性イレウスをきたしていた.異物誤飲は乳幼児の開腹歴のないイレウスの鑑別疾患に挙げる必要があり,消化管穿孔の症状がなくても,絞扼性イレウスを呈することがあるため,緊急開腹手術をすべきと考えられた.
著者
藤方 史朗 満生 浩司 原田 篤実
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.269-273, 2006

当院で外来血液透析を施行中の非感染患者72名を対象とし, 同意書をとって透析前後で血清1-3-β-D-glucan値を測定した. 透析膜は, 再生セルロース膜 (CL-EE12Nテルモ社製) 33例, セルローストリアセテート膜 (FB-70ニプロ社製) 14例, 合成高分子膜では, ポリスルホン膜 (BS-1.3東レメディカル社製) 20例, EVAL膜 (KF-15Cクラレ社製) 5例であった.<br>透析前の1-3-β-D-glucan値は, 再生セルロース膜群が649±435pg/mLで, セルローストリアセテート膜群の13±9pg/mL, 合成高分子膜群の26±18pg/mLとくらべて著明に高値であった (p<0.0001). 透析前後の1-3-β-D-glucan値の比較では, 再生セルロース膜群で649±435pg/mLから1,091±833pg/mLと透析前よりさらに上昇した (p<0.001) が, 合成高分子膜群やセルローストリアセテート膜群では, 透析前後で変化しなかった. 再生セルロース膜群では透析前1-3-β-D-glucan値と透析期間との間に有意な正の相関がみられた. 再生セルロース膜使用症例では, 非感染時でも1-3-β-D-glucan値は著明高値を示し, 真菌感染症の診断に適さないと考えられた. また, 合成高分子膜群でも軽度高値を示し診断に留意が必要である.
著者
森 梓 濱 龍太郎 原田 篤 高久 由香里 橋本 敦史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.2J3J1304, 2019 (Released:2019-06-01)

本報は、調理動画を対象とした深層学習による物体検出の応用と時系列データの分析に関するものである。私たちの最終目標はパーソナライズされたキッチンの提案であり、そのためにこれまでは目視観察とスプレッドシートソフトウェアを用いた分析を行ってきた。しかし、この従来の手法は十分な精密さと被験者数を得るために膨大な工数がかかった。然して分析視点も限定的にならざるを得なかった。そこで私たちは自動化ツールとして深層学習による物体検出を導入した。約90種類の物体を含む一連の調理動画に対して物体検出を適用し、Pythonを用いてデータ抽出と分析を行い、シンクエリアにおける物体検出数の時系列データが3パターンに分類されることを発見した。この発見は、パーソナライズされたキッチンの提案に向けた調理パターンの理解に貢献する。
著者
原田 篤史 漁田 武雄 水野 忠則 西垣 正勝
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1997-2013, 2005-08-15
被引用文献数
23

現行のユーザ認証方式は,汎用性と利便性の高さから文字をベースとしたパスワード方式が主流となっているが,人間にとって長くランダムな文字列を記憶することは容易ではなく,新たなパスワードを設定するたびにユーザは記憶に関する大きな負担を要求される.そのため,人間の画像認識能力の高さを利用して認証情報の記憶の負荷を低減させる画像認証方式が注目されている.しかし,多くの画像認証方式は毎回の認証時にパスワード画像がディスプレイ上に表示されるため,認証時の覗き見攻撃に対して脆弱であった.そこで本論文では,有意味なオリジナル画像に対してモザイク化をはじめとする不鮮明化処理を施すことで一見して無意味な画像を作成し,それをパスワード画像として用いることで覗き見攻撃への耐性を有する画像認証方式を提案する.正規ユーザは,パスワード画像登録時に不鮮明化処理を行う前のオリジナル画像を見ることができるため,不鮮明化されたパスワード画像をオリジナル画像の持つ意味と結び付けて記憶することができる.そのため,認証試行時には画面上に表示される自身の不鮮明なパスワード画像を容易に再認識することが可能となり,記憶の負荷は小さくなる.一方,オリジナル画像を見ることのできない他のユーザが当該ユーザの認証行為を覗き見たとしても,意味を認識できない不鮮明なパスワード画像を記憶にとどめておくことは困難である.また,他者が正規ユーザからパスワード画像の意味を言葉で教えられたとしても,不鮮明なパスワード画像を教えられた意味どおりに認識することは困難であるため,本方式は正規ユーザからのパスワード漏洩に対してもあるレベルの耐性を有する.Although password-based systems are now widely used in all kinds of authentication, they have a problem that humans have a limitation to remember secure passwords (long and random strings). Thus, image-based user authentication systems using "pass-images" instead of passwords have been studied for reducing the burden of memorizing passwords. However, on many image-based systems, it is needed to present a user's pass-image on their display at each authentication trial, so they can be vulnerable against an observing attack. In this paper, we propose a user authentication system using "unclear images" as pass-images, in which only the legitimate users are allowed to see the original (picture) images corresponding to their unclear pass-images in the enroll phase. The legitimate users can easily remember their unclear pass-images using the original images as clues, while illegal users without the clues have difficulties to find out and remember other user's unclear pass-images. In addition, it is expected to be difficult for even a legitimate user to leak his/her unclear pass-image precisely to anyone with words via e-mail or telephone.
著者
原田 篤史 漁田 武雄 水野 忠則 西垣 正勝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1997-2013, 2005-08-15

現行のユーザ認証方式は,汎用性と利便性の高さから文字をベースとしたパスワード方式が主流となっているが,人間にとって長くランダムな文字列を記憶することは容易ではなく,新たなパスワードを設定するたびにユーザは記憶に関する大きな負担を要求される.そのため,人間の画像認識能力の高さを利用して認証情報の記憶の負荷を低減させる画像認証方式が注目されている.しかし,多くの画像認証方式は毎回の認証時にパスワード画像がディスプレイ上に表示されるため,認証時の覗き見攻撃に対して脆弱であった.そこで本論文では,有意味なオリジナル画像に対してモザイク化をはじめとする不鮮明化処理を施すことで一見して無意味な画像を作成し,それをパスワード画像として用いることで覗き見攻撃への耐性を有する画像認証方式を提案する.正規ユーザは,パスワード画像登録時に不鮮明化処理を行う前のオリジナル画像を見ることができるため,不鮮明化されたパスワード画像をオリジナル画像の持つ意味と結び付けて記憶することができる.そのため,認証試行時には画面上に表示される自身の不鮮明なパスワード画像を容易に再認識することが可能となり,記憶の負荷は小さくなる.一方,オリジナル画像を見ることのできない他のユーザが当該ユーザの認証行為を覗き見たとしても,意味を認識できない不鮮明なパスワード画像を記憶にとどめておくことは困難である.また,他者が正規ユーザからパスワード画像の意味を言葉で教えられたとしても,不鮮明なパスワード画像を教えられた意味どおりに認識することは困難であるため,本方式は正規ユーザからのパスワード漏洩に対してもあるレベルの耐性を有する.
著者
原田 篤史 西垣 正勝 曽我 正和 田窪 昭夫 中村 逸一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2093-2105, 2003-08-15
参考文献数
10
被引用文献数
1

様々な場面で使用されるようになってきた電子文書には,追記によってのみ更新が許されるライトワンス型の文書が含まれており,電子カルテなどはその好例である.ライトワンス文書では,たとえ文書中に誤りが発見されたとしてもすでに書かれている記述を削除することが許されず,修正内容を追記として付加するしかない.ライトワンス文書を電子文書として扱う際には,データの完全性と追記の順序性の保証が必要となる.本論文は,特別なハードウェアに頼ることなく,電子化されたライトワンス文書の安全な管理を実現する方式を提案する.本方式では,追記データ単位で当該データを作成したユーザのディジタル署名と文書を保存する文書管理システムのディジタル署名を2重に付加することにより,データの完全性を保証している.同時に,文書中の各追記データにおけるユーザとシステムのディジタル署名はそれらすべてをリンキングさせることにより,追記データの順序性を保証するとともに,文書改竄に対する耐性を強化している.タイムスタンプサーバなどに代表される従来のリンキング方式とは異なり,文書ごとに独立した「文書本位」の署名のリンキングをすべてのユーザと文書管理システムが積極的にリンキングに協力する方式によって行うことで,文書の改竄困難性が非常に高く,特にライトワンス文書の管理に優れたシステムを実現している.本方式は既存の標準的な署名アルゴリズムにより実装が可能で,かつ,異なった署名アルゴリズムを用いる複数のユーザが1つの文書に対して追記することもでき,運用上の柔軟性をあわせ持つ.There are documents which require to be stored in a write-once format, e.g., medical records. Such documents can be updated only by adding new records. Even when any erratum is found, a document is not allowed to be written over, instead, new record for errata is added to the document. Moreover, it is also required to keep the order of records in a document. This paper proposes a secure database management system for a ``write-once document''. In this system, two types of digital signatures are added to each record to maintain the integrity of a document. All those signatures are created with a linking scheme; the linkage between records and signatures makes it difficult for a cracker to alter/remove/insert any record or change the order of records. The system proposed here employs a ``document-oriented'' linking scheme with both of users' and system's digital signatures, whereby the system realizes a secure write-once data management system with no special hardware. In addition, this system does not depend on a particular signature algorithms. That is, a variety of users each of who uses different signature algorithms can add new records to any document in the system.
著者
福田 芳雄 原田 篤也 泉 美治
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
醗酵工學雑誌 (ISSN:03675963)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.393-397, 1973-06-25

土壌中よりDL-α-ハイドロキシニトリルを唯一の窒素源として生育する酵母を分離し, まずこの菌株GN405の菌学的性質をLodderの方法によってしらべ, Torulopsis candidaの1菌株と同定した.この菌株は種々なニトリル化合物を唯一の炭素源として利用できなかったが, アセトニトリル, プロピオニトリル, ブチロニトリル, DL-α-ハイドロキシイソバレロニトリル, DL-α-ハイドロキシイソカプロニトリルを唯一の窒素源として利用できた.DL-α-ハイドロキシイソバレロニトリルを窒素源として生育した培地からの菌体を用いて, ハイドロキシニトリル化合物に作用させ, えた生産物の元素分析, 赤外吸収分析, 施光度および融点の測定を行なった.その結果DL-α-ハイドロキシイソバレロニトリルとDL-α-ハイドロキシイソカプロニトリルよりそれぞれえられたハイドロキシ酸はL-α-ハイドロキシイソバレリアン酸とL-α-ハイドロキシイソカプロン酸であることがわかった.この反応に関与する酵素は1種のニトリラーゼと考えられる.酵素は基質に対して誘導的に生成される.アミノニトリル化合物には作用しない.