著者
藤井 俊勝 平山 和美 深津 玲子 大竹 浩也 大塚 祐司 山鳥 重
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.2, pp.83-87, 2005 (Released:2005-04-05)
参考文献数
22
被引用文献数
1

情動は個体の身体内部変化(自律神経活動,内臓活動など)と行動変化を含めた外部へ表出される運動の総体であり,感情は個体の心理的経験の一部である.ヒトの脳損傷後には,個々の道具的認知障害や行為障害を伴わずに,行動レベルでの劇的な変化がみられることがある.本稿では脳損傷後に特異な行動変化を呈した3症例を提示し,これらの症状を情動あるいは感情の障害として捉えた.最初の症例は両側視床・視床下部の脳梗塞後に言動の幼児化を呈した.次の症例は両側前頭葉眼窩部内側の損傷により人格変化を呈した.最後の症例は左被殻出血後に強迫性症状の改善を認めた.これら3症例の行動変化の機序として,情動に関連すると考えられる扁桃体-視床背内側核-前頭葉眼窩皮質-側頭極-扁桃体という基底外側回路,さらに視床下部,大脳基底核との神経回路の異常について考察した.
著者
今村 幸嗣 大塚 祐司 川副 泰成 青木 勉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1037-1040, 2018-09-15

抄録 症例はパニック障害の25歳,女性。初診時血清ヘモグロビン12.4g/dl,血清フェリチン11ng/mlと貧血のない鉄欠乏であった。鉄剤補充のみで,鉄欠乏とパニック症状が改善した。鉄欠乏と抑うつ気分との関連性について多数の報告があり,鉄剤補充による抑うつ気分の改善が示されているが,パニック症状に対する効果の報告は少ない。本症例では,パニック障害に対する鉄剤補充の有効性を示唆する結果となった。精神科の診療場面において,鉄欠乏は看過されることが多い。我々精神科医は,わが国の女性の約半数が,鉄不足による精神障害予備軍であるという現状を認識し,適切に鉄欠乏を評価することで,診断・治療につなげる必要がある。
著者
目黒 祐子 藤井 俊勝 月浦 崇 山鳥 重 大竹 浩也 大塚 祐司 遠藤 佳子
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.251-259, 2000 (Released:2006-04-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

一般に言語性短期記憶は音韻情報の保持容量を指標としているが,言語情報は通常,意味と結びついているはずである。そこで単語レベルについては音韻の短期記憶 (音韻性ループ) に加えて意味の短期記憶 (意味性短期貯蔵庫) を仮定した。標準失語症検査の単語レベル課題の成績がほぼ同じ2症例に,単語系列を聴覚的および視覚的に提示し,口頭反応 (音韻情報保持) と線画指示 (意味情報保持) の成績を比較した。前頭葉損傷の症例1は刺激を聴覚提示した場合には指示スパンが低下しており,視覚提示した場合には聴覚提示に比べて明らかに成績が低下していた。一方,側頭-頭頂葉損傷の症例2では課題により成績に差を認めなかった。すなわち,症例1では複数情報が継時的に入力された場合,音韻情報と意味情報の保持に乖離を認め,さらには視覚情報から音韻情報への変換過程にも障害が見られた。しかし症例2では音韻性短期貯蔵庫の容量が削減していても意味情報として保持可能であることが明らかとなった。
著者
藤井 俊勝 平山 和美 深津 玲子 大竹 浩也 大塚 祐司 山鳥 重
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.2, pp.83-87, 2005-02-01
参考文献数
22

情動は個体の身体内部変化(自律神経活動,内臓活動など)と行動変化を含めた外部へ表出される運動の総体であり,感情は個体の心理的経験の一部である.ヒトの脳損傷後には,個々の道具的認知障害や行為障害を伴わずに,行動レベルでの劇的な変化がみられることがある.本稿では脳損傷後に特異な行動変化を呈した3症例を提示し,これらの症状を情動あるいは感情の障害として捉えた.最初の症例は両側視床・視床下部の脳梗塞後に言動の幼児化を呈した.次の症例は両側前頭葉眼窩部内側の損傷により人格変化を呈した.最後の症例は左被殻出血後に強迫性症状の改善を認めた.これら3症例の行動変化の機序として,情動に関連すると考えられる扁桃体-視床背内側核-前頭葉眼窩皮質-側頭極-扁桃体という基底外側回路,さらに視床下部,大脳基底核との神経回路の異常について考察した.<br>