- 著者
-
藤井 俊勝
- 出版者
- 日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
- 雑誌
- 失語症研究 (ISSN:02859513)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.2, pp.155-163, 1997 (Released:2006-05-12)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
-
1
1
今回著者は両側前頭葉梗塞後に,視野障害・運動麻痺・失調・視覚運動失調・感覚障害がなく,数字順唱・Tapping spanが保たれているにもかかわらず,電話がかけられなくなった症例を経験し,その症状を詳細に検討した。本症例の症状の本質は,ある程度の負荷の存在下における異なるモードへの情報変換過程の障害であると考えられた。この症状の説明にBaddeleyらによるWorking memoryモデルを適用した。すなわち,ある程度正常に機能している2つの補助システム (phonological loop/visuospatial sketchpad) と,障害された中央処理装置 (central executive) という考えで本症例の症状は説明可能であった。Central executiveの機能の1つとして,負荷存在下における異なるモードへの情報変換が想定され,また解剖学的には前頭前野の関連が示唆された。