著者
大塩 まゆみ 平岡 公一
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.5-15, 2018

<p> 本号の特集「福祉の市場化を問う」は,本学会第134回(2017年度春季)大会の共通論題での報告をもとにして執筆された4本の論文を中心に構成される。本稿は,この共通論題の企画の趣旨・背景と報告の概要を紹介するとともに,そこで提起された政策展開および研究に関わる課題と展望について座長の立場からの考察を行ったものである。政策上の課題については,市場化に伴う公的責任の後退のなかで,サービス利用機会の格差,消費者被害等の利用者側に生じた問題,および,福祉・介護分野の雇用の不安定化や低賃金,人手不足等の事業所・労働者側に生じた問題を指摘し,賃金引き上げ・労働条件の改善,介護職等の専門性の向上等の課題を提起した。研究上の課題と展望については,市場化改革の多様性と文脈の理解,サードセクター・非営利セクターの多様性と変化の検討,新たな福祉文化への着目,福祉の市場化のなかでの労働の変化の検討等の論点について検討した。</p>
著者
今井 小の実 寺本 尚美 陳 礼美 大塩 まゆみ アンベッケン エルスマリー 孫 良 サンド アンブリット
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本における”ケア”労働に関するジェンダー公平な政策を展望するために、ジェンダー平等な国と評価されるスウェーデンを指標に研究を進めてきた。具体的には高齢者介護、育児政策に焦点をあて、その現状と課題を現地調査、スウェーデン在住の研究協力者との共同研究により明らかにした。そのうえで、日本の現在の制度・政策との比較を試み、両国の相違をもたらす要因について考察を深めた。その一つとして、スウェーデンのケアに関わる政策、つまり家族政策形成の歴史を検証し、日本との比較を行った。これらの研究は、今後日本がジェンダー平等な政策を展開していく上での貴重な材料となるはずで一定の成果が得られたと考える。
著者
大塩 まゆみ
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.91-102, 2012-01-20

本稿は,子どものウェルビーイングに関する先行研究のレビューとして,保育政策の動向に関する著作を取り上げ,最近の保育制度改革の問題点と課題を明らかにするものである。まず保育制度改革を批判する2点の著作を紹介する。これらは,昨今の保育政策の規制緩和・民営化等の問題点を指摘し,ナショナルミニマムの重要性を説いている。次に,児童福祉専門の二人の研究者の著作を検討する。これらに共通する特徴は,地域分権や地域福祉を強調していること,公的保育所に内発的改善を求めていることである。しかし,後者の研究には,いくつかの疑問が生じる。これらの文献の考察から,最近の保育制度改革には不安材料が多いと,結論づける。今後の課題は,人生のスタート時点の保育を社会発農の投資と考え公費を捻出・投入すること,経済優先からHuman Life(生命・生活・人生)重視の政策へと重点を変えることである。