著者
三和 治 平岡 公一 松原 康雄 小林 捷哉 遠藤 興一 濱野 一郎
出版者
明治学院大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、高齢化社会の進行に伴ない今後、一層、必要とされるであろう在宅サービスを中心とする社会福祉供給システムにおいて、福祉行政機関とりわけ福祉事務所が、どのような組織機構をもち、またどのような運営方針の下に日常業務を遂行し、他の行政機関や民間社会福祉組織・団体などとどのように協力連携しているのか、また福祉事務所の現業員等の職員の専門性の水準がどの程度であり、その職員の行う援助活動にどのような問題があるのか、などを課題に、それらの状態、問題の把握と要因を実証的に調査研究し、それらへの対応に資することを目的に設定され実施された。わが国社会福祉行政機関の中核を占める福祉事務所の動向は、文献資料、現地調査によって、全体的に依然、社会福祉行政の重要部分を占めているものの、生活保護中心のもの、6法担当のものなどと多様化を示し、名称も同様に多様化している。専門性の指標としての社会福祉主事資格の取得率も停滞傾向を示している。所の運営方針も上級庁のそれによっている場合が多いように見られている。福祉事務所改革を行った岡山県、青森県、新潟県の各福祉事務所或いは福祉部門及び社会変動の激しい千葉県、市福祉事務所現業員を対象とした現業員の意識調査は、福祉事務所活動を現業員の立場からみようとしたものであるが、現業員の専門性に関わる意識、資格取得率に県、市による差が見られ、これらの関連性は今后の検討課題として残された。また福祉処遇についても県、地域による差があるが、それが現業員の状況に依拠するか、どうかは尚、慎重に例えば事例研究などを開いて検討したい課題である。福祉事務所改革は、積極的な意図、管轄地区の人変動などによる影響も少なくないなど単純ではない。それらは今後、他の地方自治体を対象として検証を要する課題としたい。
著者
平岡 公一
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.5-23, 2022-05-31 (Released:2023-06-06)
参考文献数
33

本稿は,日本における福祉社会学研究の動向に関して,筆者の視点と問題意識に即して,若干の分析と考察を行い,今後の研究の展開を展望することをねらいとしている.前半部分では,1990 年代までに形成された研究潮流である①福武直の社会政策論,②社会計画論・社会指標論,③福祉国家論・比較社会政策研究,④副田義也の福祉社会学を取り上げ,それぞれについて,近年の政策動向と研究動向に即して,分析と考察を行った.まず①については,戦後日本の主流の社会学者,特に富永健一の社会政策論への筆者の問題関心を述べた.②に関しては,参加指向と業績管理指向の双方の方向性を有する近年の政策展開のなかでの社会福祉計画の性格変化について論じた.③に関しては,2000年前後からの特徴的な研究の内容を紹介した.④については,学会創設以降,副田の築き上げた基盤の上に連字符社会学としての福祉社会学が成立したことなどを論じた.後半部分では,まず第18 号までの学会誌の自由論文のテーマ別の分類結果を紹介し,大人・子どものケア関係の論文が過半数を占めるなどの特徴的な傾向に注目した.さらに,学会賞受賞作品を紹介し,非営利セクター/サードセクターと障害者運動に関連する作品がそれぞれ2 点あることを指摘した.最後に,今後の展望として,学際的研究交流のさらなる拡大の見通しと,国際的研究交流のさらなる拡大への期待について論じた.
著者
大塩 まゆみ 平岡 公一
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.5-15, 2018

<p> 本号の特集「福祉の市場化を問う」は,本学会第134回(2017年度春季)大会の共通論題での報告をもとにして執筆された4本の論文を中心に構成される。本稿は,この共通論題の企画の趣旨・背景と報告の概要を紹介するとともに,そこで提起された政策展開および研究に関わる課題と展望について座長の立場からの考察を行ったものである。政策上の課題については,市場化に伴う公的責任の後退のなかで,サービス利用機会の格差,消費者被害等の利用者側に生じた問題,および,福祉・介護分野の雇用の不安定化や低賃金,人手不足等の事業所・労働者側に生じた問題を指摘し,賃金引き上げ・労働条件の改善,介護職等の専門性の向上等の課題を提起した。研究上の課題と展望については,市場化改革の多様性と文脈の理解,サードセクター・非営利セクターの多様性と変化の検討,新たな福祉文化への着目,福祉の市場化のなかでの労働の変化の検討等の論点について検討した。</p>
著者
平岡 公一 山井 理恵 斉藤 弥生 大坂 純 志水 田鶴子 菊池 いづみ 秋元 美世 新保 幸男 岡部 耕典
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、日本における多元的福祉ガバナンスのもとでの福祉サービスの質の確保策の現状と課題、および将来展望について、国際比較的な視点をふまえ総合的に検討した。地方自治体における実施状況、あるいは民間組織の先進的な取り組みの事例の分析に基づいて検討した結果、サービス実施アプローチに適合的な適切な質の確保策を選択すること、さまざまな質の確保策の間の機能分担関係を明確化することなどの課題が明らかになった。