著者
大杉 尚之 小林 正法
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-15, 2021-08-31 (Released:2021-09-16)
参考文献数
41

lab.js Builderは無料のオープンソースソフトウェアで,オンラインとラボ内の両方のデータ収集の実験と調査を簡単に構築できる.視覚的インターフェースを使用することで,プログラミングなしで刺激を設計して実験や調査に統合でき,また,HTML, CSS, JavaScriptコードを使用してカスタマイズすることもできる.このソフトウェアは,多くの学生や科学者が自宅学習や在宅勤務をする必要がある状況下で,実験や調査を作成して実行するのに役立つと考えられる.本論文では,lab.js Builderの機能と使いやすさを紹介し,大学の授業で実践的な実験を構築・実施する方法を実演し,研究方法教育におけるツールの位置付けについて述べる.
著者
大杉 尚之 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.69-77, 2020-02-29 (Released:2020-03-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

日本において,お辞儀は第一印象の形成にポジティブな効果を持つと信じられている.最近,Osugi & Kawahara(2015)は,お辞儀が魅力知覚に及ぼす影響について実験的に検討した.写真上辺を前方に傾け,元の角度に戻すお辞儀条件では顔写真の主観的な魅力が上昇した.本研究では,これらの発見を拡張し,お辞儀の効果の変調要因を検証した.研究1の結果は,顔写真の外見魅力(実験1と2),顔の性別(実験3),人間と人間以外のエージェントの違い(実験4)のいずれともお辞儀の効果は独立であった.これらのことから,さまざまな顔刺激間でお辞儀効果量に違いはなく,外見的特徴とは独立に印象形成に寄与している可能性が示された.すなわち,誰がお辞儀をするかは重要ではなく,お辞儀動作そのものによる効果が加算的に作用することで印象が形成されると考えられる.また,この結果がお辞儀効果に関するメタ認知と一致しているかについて検討した結果(研究2),実験結果とメタ認知の食い違いが生じ,低魅力の人や人間以外のエージェントのお辞儀効果が小さく見積もられることが明らかとなった.
著者
大杉 尚之 河原 純一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.95.22336, (Released:2023-12-25)
参考文献数
29

Bowing is a common practice in Japan, believed to greatly affect first impressions. As such, it is emphasized upon in school instruction and post-employment training seminars for new employees. Recently, the influence of bowing on attractiveness was investigated, and it was reported that a bowing motion enhances perceptions of attractiveness. However, previous studies primarily examined this effect via laboratory-based experiments for Japanese university students, which limits the generalizability and reproducibility of the results. Therefore, the present study examined whether this effect can be observed in a web-based experiment and for crowdsourcing service workers. The results showed that bowing increases the facial attractiveness of the 3D computer graphics human models compared to the models standing still (control condition). Further, it was established that prolonged exposure to the bent posture produced a significant bowing effect. These results were extended to the workers, suggesting that the bowing effect can be replicated in web-based experiments for Japanese participants with a broader range of demographics (age and gender, and the view of self).
著者
大杉 尚之 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

頷きと首振りは自分の態度を相手に伝える上で重要な動作である。これまでの研究では,視線や表情は,相手に接近したい(接近動機),または回避したい(回避動機)というサインを発信するため,顔の印象形成に影響すると考えられてきた。同様の接近−回避動機は,頷きや首振りによっても発信される可能性がある。そこで本研究では,3DCGモデルが頷きまたは首振り動作をすることがその顔の主観的印象(好ましさ,近づきやすさ)に及ぼす影響を測定した。実験の結果,頷き条件は好ましさ評定値と近づきやすさ評定値が首振り条件や静止(統制)条件に比べて高い値となった。また,この頷きへの選好効果は,外見上の好ましさや顔の魅力評定を行わせた場合には十分ではなく,内面の好ましさ評定を求めた場合に顕著に示された。このことから,頷き動作は接近動機を相手に示すことで,人物の内面的な印象(性格等)を良く見せる効果があることが明らかとなった。