著者
伊藤 資浩 河原 純一郎
出版者
北海道心理学会
雑誌
北海道心理学研究 (ISSN:09182756)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-13, 2019-03-31 (Released:2019-03-25)
参考文献数
27
被引用文献数
2

対人評価において,被評価者の衛生マスク(以下,マスク)の着用は,印象や魅力の知覚に影響することが明らかにされている(Miyazaki & Kawahara, 2016)。本研究は,マスクを着用している人物に対する印象や顔の魅力の知覚に及ぼす影響について,マスクの色による違いに着目する。具体的には,黒もしくは白色のマスクを着用している人物に対する潜在的・顕在的な態度(例えば,良い‐悪い)及び顔の魅力を調査・測定した。その結果,潜在的・顕在的態度の両方で黒いマスクを着用している人物に対して非好意的な態度が確認された。また黒いマスクの着用者の顔の魅力は,白いマスクの着用者に比べて低い場合があった。これらの結果は,(1)印象や顔の魅力の知覚にマスクの着用だけではなく,マスクの色特有の影響が生じること,(2)慣れ親しみの高い従来のマスク(白色)に比べて,慣れ親しみの低いマスク(黒色)を着用している人物に対して非好意的に知覚されることを反映している。
著者
宮崎 由樹 鎌谷 美希 河原 純一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20063, (Released:2021-11-30)
参考文献数
38
被引用文献数
1 7

The purpose of this study was to examine the psychological factors related to the frequency of face mask wearing (mask wearing) among Japanese people. Specifically, the influence of social anxiety (scrutiny fears, social interaction anxiety), trait anxiety, and perceived vulnerability to disease (germ aversion, perceived infectability) on mask wearing frequency was examined. We also investigated whether the relationships were altered based on the COVID-19 pandemic and the seasons. Online surveys (N=6,742) were conducted in the summer and winter seasons from Aug. 2018 to Dec. 2020. Results showed that scrutiny fears, perceived infectability (but only in the winter season), and germ aversion affected the frequency of mask wearing before the COVID-19 pandemic. However, the relationships were altered as the COVID-19 pandemic spread. Scrutiny fears and perceived infectability did not play a role in the frequency of mask wearing. These alternations of results could be derived from the increase in mask wearing rate, changes in the reasons to wear masks among Japanese people, and elevation of perceived risk to COVID-19 due to the increased transmission.
著者
横澤 一彦 河原 純一郎 齋木 潤 熊田 孝恒
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

高次視覚研究用の実験ソフトウェアと実験データベースの作成を行った。新たな実験環境を実現するにあたり、様々な環境で動作することを念頭に置き、Jaba環境で動作する実験ソフトウェアと実験データベースを作成し、インターネットで公開した。更に、シミュレーション・モデル構築を目指す高次視覚研究を展開した。線運動錯視探索のモデル(Kawahara & Yokosawa,2001)では、探索の誤答率を,線運動がおのおの独立して生起するという仮現運動モデルによって予測した。その結果、様々な状況での探索成績がこのモデルで予測可能であることを確認すると共に、線運動錯視が視覚的注意によって起こる場合と,独立して画面内の複数の位置で起こる仮現運動によって起こる場合があることが示唆された。視覚的選択過程モデル化(Kumada & Humphreys, in press)を試みた結果、従来の認知心理学における反応時間の分析では、正答反応のみが分析の対象として用いられてきたが、誤答の反応時間が、正答の反応時間の分布と比較した場合に極めて有意義なデータをもたらすことを発見し、それらを可視化する手法としてLOC分析(Latency Operation Characteristics analysis)を開発した。パルスニューラルネットワークモデル(齋木,2002)を使って、選択的注意のモデルとして,CrickとKochの提案した視覚的注意の時間タグ付け仮説を実装し,視覚的注意の神経生理学の古典的知見であるMoran & Desimone(1985)の結果をシミュレートした。第2標的への遅延マスキングがない場合にも注意の瞬きが見られる場合があることを実験的に見いだしたので、表象減衰による注意の瞬きモデル(Kawahara, in press)を提案し、第2標的の視覚表象は時間経過とともに減衰することによって、注意の瞬きが起こる過程の説明をした。
著者
伊藤 資浩 宮崎 由樹 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.140, 2016 (Released:2016-10-17)

外見や社会的地位だけでなく名前そのものが対人評価に影響することがある。例えば,名前の魅力や流暢性の高さが付加価値となり,社会的な評価場面において好意的な印象が形成される。本研究では,名前の奇抜さが見た目の社会性,特にリーダーシップ性に及ぼす影響を検証した。具体的に,名前の奇抜さ(奇抜な名前・一般的な名前)と元々の見た目のリーダーシップ性の程度(低群・中群・高群)を実験要因として,被験者は呈示される若年者の顔画像と名前から見た目のリーダーシップ性の程度を評価した。その結果,元々の見た目のリーダーシップ性の程度に関わらず,一般的な名前に比べて奇抜な名前が呈示されたとき,リーダーシップ性は低く評価された。またこの効果は,高齢者の顔画像が呈示されたとき強く生じた。これらの結果は,近年のいわゆるキラキラネームは社会性評価において付加価値とならず,外見に関わらず非好意的な印象を生むことを反映している。
著者
伊藤 資浩 宮崎 由樹 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

外見や社会的地位だけでなく名前そのものが対人評価に影響することがある。例えば,名前の魅力や流暢性の高さが付加価値となり,社会的な評価場面において好意的な印象が形成される。本研究では,名前の奇抜さが見た目の社会性,特にリーダーシップ性に及ぼす影響を検証した。具体的に,名前の奇抜さ(奇抜な名前・一般的な名前)と元々の見た目のリーダーシップ性の程度(低群・中群・高群)を実験要因として,被験者は呈示される若年者の顔画像と名前から見た目のリーダーシップ性の程度を評価した。その結果,元々の見た目のリーダーシップ性の程度に関わらず,一般的な名前に比べて奇抜な名前が呈示されたとき,リーダーシップ性は低く評価された。またこの効果は,高齢者の顔画像が呈示されたとき強く生じた。これらの結果は,近年のいわゆるキラキラネームは社会性評価において付加価値とならず,外見に関わらず非好意的な印象を生むことを反映している。
著者
鎌谷 美希 伊藤 資浩 宮崎 由樹 河原 純一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.350-359, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
27
被引用文献数
4

Pre-COVID-19 epidemic studies found that wearing a sanitary mask negatively impacted perceived facial attractiveness. In particular, people demonstrated more negative explicit or implicit attitudes toward wearers of sanitary masks when the masks were black rather than white. The present study examined whether changes in social behavior in response to the COVID-19 epidemic, including the prevalent use of sanitary masks, might alter explicit and/or implicit attitudes toward wearers of black sanitary masks. We measured explicit (Study 1) and implicit attitudes (Study 3) and facial attractiveness (Study 2) of males wearing black or white sanitary masks. The results revealed that attitudes toward wearers of black sanitary masks were more positive than those measured pre-epidemic. Regardless of mask color, explicit attractiveness rating scores for low-attractiveness faces tended to increase after the epidemic. However, no such improvement was observed for high- and middle-attractiveness faces. There was also no change in implicit attitudes measured by the implicit association test. These results suggest that the COVID-19 epidemic has reduced explicit negative attitudes toward wearers of black sanitary masks.
著者
鎌谷 美希 伊藤 資浩 宮崎 由樹 河原 純一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20046, (Released:2021-07-31)
参考文献数
27
被引用文献数
4

Pre-COVID-19 epidemic studies found that wearing a sanitary mask negatively impacted perceived facial attractiveness. In particular, people demonstrated more negative explicit or implicit attitudes toward wearers of sanitary masks when the masks were black rather than white. The present study examined whether changes in social behavior in response to the COVID-19 epidemic, including the prevalent use of sanitary masks, might alter explicit and/or implicit attitudes toward wearers of black sanitary masks. We measured explicit (Study 1) and implicit attitudes (Study 3) and facial attractiveness (Study 2) of males wearing black or white sanitary masks. The results revealed that attitudes toward wearers of black sanitary masks were more positive than those measured pre-epidemic. Regardless of mask color, explicit attractiveness rating scores for low-attractiveness faces tended to increase after the epidemic. However, no such improvement was observed for high- and middle-attractiveness faces. There was also no change in implicit attitudes measured by the implicit association test. These results suggest that the COVID-19 epidemic has reduced explicit negative attitudes toward wearers of black sanitary masks.
著者
宮崎 由樹 鎌谷 美希 須田 朋和 若杉 慶 松長 芳織 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第20回大会
巻号頁・発行日
pp.50, 2022 (Released:2022-11-24)

マスク着用は感染症拡大防止に有効だが,その着用で表情が読みとりづらくなる。こうしたマイナス面の報告は,成人被験者を対象とした実証研究の知見に依拠しており,学童期の子どもを対象とした知見は極めて少ない。本研究では,マスクなし,不織布マスク,あるいは透明マスクを着用した顔表情画像を小学生に提示し表情弁別を求めた。そして成人の既データと比較した。実験の結果,成人では,マスクなし顔に比べて,不織布マスク着用顔において「喜び」「無表情」「悲しみ」の弁別パフォーマンスの低下が認められた。対して小学生では,「嫌悪」「恐怖」「喜び」「無表情」「悲しみ」「驚き」とより多くの表情でその低下が認められた。なお,このような低下は,透明マスク着用顔では総じて認められなかった。本研究の結果は,不織布マスク着用による顔表情認知の妨害は小学生でより大きい可能性,その対処として透明マスクの活用可能性を示している。
著者
宮崎 由樹 鎌谷 美希 河原 純一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.339-349, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
38
被引用文献数
1 7

The purpose of this study was to examine the psychological factors related to the frequency of face mask wearing (mask wearing) among Japanese people. Specifically, the influence of social anxiety (scrutiny fears, social interaction anxiety), trait anxiety, and perceived vulnerability to disease (germ aversion, perceived infectability) on mask wearing frequency was examined. We also investigated whether the relationships were altered based on the COVID-19 pandemic and the seasons. Online surveys (N=6,742) were conducted in the summer and winter seasons from Aug. 2018 to Dec. 2020. Results showed that scrutiny fears, perceived infectability (but only in the winter season), and germ aversion affected the frequency of mask wearing before the COVID-19 pandemic. However, the relationships were altered as the COVID-19 pandemic spread. Scrutiny fears and perceived infectability did not play a role in the frequency of mask wearing. These alternations of results could be derived from the increase in mask wearing rate, changes in the reasons to wear masks among Japanese people, and elevation of perceived risk to COVID-19 due to the increased transmission.
著者
宮崎 由樹 伊藤 資浩 神山 龍一 柴田 彰 若杉 慶 河原 純一郎
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.222-230, 2020-12-15 (Released:2021-12-11)
参考文献数
17

顔を細く・小さく見せることに対する日本人の関心は高いが,どのような要因が顔の見かけの大きさを左右するかについては未検討な点が多い.本研究は,顔全体のサイズ知覚に,どの顔部位のサイズ情報が関与するか検証することを目的とした.そのためにまず,女性・男性顔132画像において,20箇所の顔部位の縦幅や横幅を計測した.また,その計測サイズとそれらの画像毎に評定された見かけの顔サイズ評定値との相関を算出した(研究1).その結果,顔全体のサイズ知覚には,顔画像の性別に関係なく,顔面上部(額の長さ等)にくらべて顔面下部のサイズ(頬の広さや顎の長さ等)が強く正相関していた.この結果に基づき,顔面下部を衛生マスクで遮蔽し,顔面下部のサイズ情報を観察できなくすることで,顔のサイズ知覚が変わることも実証した(研究2).これらの結果は,顔全体のサイズを判断する際,顔面下部のサイズ情報が重要な手がかりとして用いられていることを示している.
著者
大杉 尚之 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.69-77, 2020-02-29 (Released:2020-03-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

日本において,お辞儀は第一印象の形成にポジティブな効果を持つと信じられている.最近,Osugi & Kawahara(2015)は,お辞儀が魅力知覚に及ぼす影響について実験的に検討した.写真上辺を前方に傾け,元の角度に戻すお辞儀条件では顔写真の主観的な魅力が上昇した.本研究では,これらの発見を拡張し,お辞儀の効果の変調要因を検証した.研究1の結果は,顔写真の外見魅力(実験1と2),顔の性別(実験3),人間と人間以外のエージェントの違い(実験4)のいずれともお辞儀の効果は独立であった.これらのことから,さまざまな顔刺激間でお辞儀効果量に違いはなく,外見的特徴とは独立に印象形成に寄与している可能性が示された.すなわち,誰がお辞儀をするかは重要ではなく,お辞儀動作そのものによる効果が加算的に作用することで印象が形成されると考えられる.また,この結果がお辞儀効果に関するメタ認知と一致しているかについて検討した結果(研究2),実験結果とメタ認知の食い違いが生じ,低魅力の人や人間以外のエージェントのお辞儀効果が小さく見積もられることが明らかとなった.
著者
河原 純一郎
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

いくつも仕事がある場合,同時にはたくさんには対応できない。また,頭を使って疲れたら,そのぶんミスが増えたりうまく頭が回らない。心理学では,認知資源という共通のリソースを仮定し,この多寡で複数の課題遂行成績や疲労,個人差を説明してきた。非常に似通った注意の課題で認知資源が枯渇するという説明が成されていることに本研究では注目し,これらの課題間で共通の認知資源が使われているかを調べた。実験の結果,共通性は殆ど無いことがわかった。本研究の結果は,これまで,認知資源という漠然とした用語で解釈されてきた注意の配分モデルに対して見直しを迫るものであるといえる。
著者
宮崎 由樹 伊藤 資浩 神山 龍一 柴田 彰 河原 純一郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2016 (Released:2016-10-17)

近年,衛生マスク (以下,マスク) は,風邪や花粉対策等の衛生用途以外にも使われる。例えば,若年女性の一部は,小顔に見せる為にマスクを利用することがある。本研究では,見た目の顔の大きさにマスクの着用が及ぼす効果を検証した。実験はマスク着用 (着用,非着用) と元々の見た目の顔の大きさ (小顔,中顔,大顔群) の2要因被験者内計画で実施した。被験者は,LCDに呈示された顔画像の見た目の顔の大きさを1 (小さい) から100 (大きい) の範囲で評定した。その結果,元々の見た目の顔の大きさに関わらず,マスク非着用画像に比べ,マスク着用画像の方が顔が小さく知覚されることが示された (マスク着用の効果量は小顔群に比べ,中顔・大顔群の方が大きかった)。この効果は,マスク着用で,顔の大きさ判断に用いられる視覚手がかり (咬筋部や下顎周りの皮膚厚等) が利用できなくなること,顔が遮蔽されたことによる錯視効果に基づくと考えられる。
著者
鑓水 秀和 河原 純一郎
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.314-324, 2014-09-01 (Released:2015-05-12)
参考文献数
24

Extant studies have examined factors contributing to perception of attractiveness of individual human faces. Because those studies primarily focused on ratings of at-tractiveness of a single target face, it was unclear whether observers could perceive attractiveness of a group of people as a whole. The present study examined whether observers could compare the group-wide attractiveness between two groups consisted of multiple members. We predicted that observers should be able to discriminate which of the two groups was higher attractiveness. Observers were briefly (1500 ms) exposed with two frames of images each of which consisted of four faces and determined the one that they believed more attractive as a whole. The results indicated that discrimination accuracy was above chance level. Virtually identical pattern of the results was obtained when each group consisted of eight faces in Experiment 3 and when exposure duration was 500 ms or 100 ms in Experiment 4. These results suggest that observers could per-ceive attractiveness of a group of people as a whole when discriminating attractiveness of two groups of people.
著者
大杉 尚之 河原 純一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.95.22336, (Released:2023-12-25)
参考文献数
29

Bowing is a common practice in Japan, believed to greatly affect first impressions. As such, it is emphasized upon in school instruction and post-employment training seminars for new employees. Recently, the influence of bowing on attractiveness was investigated, and it was reported that a bowing motion enhances perceptions of attractiveness. However, previous studies primarily examined this effect via laboratory-based experiments for Japanese university students, which limits the generalizability and reproducibility of the results. Therefore, the present study examined whether this effect can be observed in a web-based experiment and for crowdsourcing service workers. The results showed that bowing increases the facial attractiveness of the 3D computer graphics human models compared to the models standing still (control condition). Further, it was established that prolonged exposure to the bent posture produced a significant bowing effect. These results were extended to the workers, suggesting that the bowing effect can be replicated in web-based experiments for Japanese participants with a broader range of demographics (age and gender, and the view of self).