著者
國安 弘基 傳田 阿由美 笹平 智則 大森 斉 藤井 澄 バワール ウジヤール 傳田 阿由美 笹平 智則 大森 斉 藤井 澄 バワール ウジャール
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本課題ではアンギオテンシン系の腫瘍における作用を総合的に検討した。高血糖は大腸癌細胞にレニン発現を誘導し、キマーゼとともにアンギオテンシンを活性化し、肝転移を促進した。アンギオテンシン分解産物のアンギオテンシン1-7受容体であるMAS1の発現は乳癌特にスキルス癌で顕著に低下しstage、リンパ節転移、HER2発現と逆相関した。MAS1は乳癌における新たな癌抑制遺伝子と考えられた。このように、癌におけるアンギオテンシンの役割に応じた標的治療が有効であると考えられる。
著者
大森 斉 國安 弘基 北台 靖彦 藤井 澄 千原 良友 笹平 智則 佐々木 隆光
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

骨髄間葉系幹細胞 (MSC) は、癌組織に動員され癌細胞と相互作用を通じて癌の進展・転移に関与すると考えられ、がん研究の焦点の一つとなっている。報告者らは、MSCが癌細胞が産生分泌するサイトカインHMGB1により腫瘍内に誘導され、腫瘍内では腫瘍が分泌するTGFβを多量に含んだECMであるバイグリカンとHMGB1により幹細胞が維持されることを明らかにした。このような状態は大腸癌では粘液腫状間質として病理組織学的に認識され、糖尿病合併大腸癌肝転移症例に多く認められる。HMGB1の吸着・中和によるMSC動員阻害は腫瘍増大・転移を抑制し、MSC標的化の有効性が示唆された。
著者
國安 弘基 大森 斉
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

塩基性アミノ酸のリン酸化は、古くからその存在が知られていたにも関わらずその不安定な性質からほとんど解析が試みられて来なかった。本課題では、遊離リン酸化塩基性アミノ酸が癌幹細胞ポピュレーションの増大とともに増加することを見いだした。特に、リン酸化アルギニンはピルビン酸キナーゼ活性を低下し好気性解糖系を亢進させることにより、癌幹細胞のエネルギー代謝の制御に深く関与することが明らかとなった。この好気性解糖系を抑制し酸化的リン酸化を誘導することにより癌幹細胞のstemnessは抑制された。一方、ヒストン・リジン残基のリン酸化によるエピジェネティックスへの影響は、アセチル化、トリメチル化との関連に何らかの影響を与えるものの、単純な競争阻害にはなっておらず、むしろアセチル化やメチル化の遷移状態に関連する可能性が示唆された