- 著者
-
國安 弘基
大森 斉
- 出版者
- 奈良県立医科大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2011
塩基性アミノ酸のリン酸化は、古くからその存在が知られていたにも関わらずその不安定な性質からほとんど解析が試みられて来なかった。本課題では、遊離リン酸化塩基性アミノ酸が癌幹細胞ポピュレーションの増大とともに増加することを見いだした。特に、リン酸化アルギニンはピルビン酸キナーゼ活性を低下し好気性解糖系を亢進させることにより、癌幹細胞のエネルギー代謝の制御に深く関与することが明らかとなった。この好気性解糖系を抑制し酸化的リン酸化を誘導することにより癌幹細胞のstemnessは抑制された。一方、ヒストン・リジン残基のリン酸化によるエピジェネティックスへの影響は、アセチル化、トリメチル化との関連に何らかの影響を与えるものの、単純な競争阻害にはなっておらず、むしろアセチル化やメチル化の遷移状態に関連する可能性が示唆された