- 著者
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岡本 五郎
大森 直樹
- 出版者
- 園藝學會
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.3, pp.521-529, 1991
- 被引用文献数
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7
ブドウ'ピオーネ'では,胚珠の受精率が低いために有核果が着生しにくい.この原因を探るために,開花約1週間前の小花を培養し,培地の無機塩,ホルモンおよび雌ずいの抽出物の添加濃度が胚珠の発育と受粉後の花粉管生長に及ぼす影響を調査した.有核果が多く着粒する'マスカット•オブ•アレキサンドリア'を比較の対照とした.<BR>NitschあるいはMS培地の無機塩濃度,Nitschの培地の窒素濃度を高めると,両品種とも子房の発育は促されたが,胚のうの発育と受粉後の花粉管伸長は抑制された.この傾向は特に'ピオーネ'で著しかった.1~10ppmのGA, BA, NAAを添加すると, 子房の発育は影響されなかったが,'ピオーネ'雌ずい内での胚のうの発育と花粉管伸長が抑制された.'ピオーネ'雌ずいの水抽出物を培地に加えると,両品種とも子房および胚のうの発育は影響されなかったが,花柱内への花粉管伸長が著しく抑制された.<BR>以上のことから,'ピオーネ'の小花は窒素栄養の供給が豊富であると,胚のうの発育と花粉管の生長が抑制される.'ピオーネ'の雌ずいに多く含まれる花粉管生長阻害物質は,無機物質やホルモン様物質とは異なるものと思われる.