著者
大森 直樹 大橋 保明
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

首都圏の学校における東京電力福島第一原子力発電所事故の影響と課題を明らかにすることが本研究の目的である。平成29年度は、①環境省の汚染状況重点地域の指定が群馬・栃木・茨城・千葉・埼玉に及んでいる事実をふまえ、②国民文化総合研究所(2016)が提起した「原発被災校A」(福島725校)の概念を手がかりとして、③群馬・茨城・千葉における学校数および学校別児童生徒数の一覧の作成をおこない(2017年度群馬569校・茨城837校・千葉1346校)、④2017年度の「原発被災校A」が群馬160校・茨城428校・千葉342校に及ぶことを明らかにした。⑤首都圏の「原発被災校A」における課題については、保護者を中心として原発事故の子どもへの影響と学校の課題に関して取り組みを重ねてきた「放射能からこどもを守ろう関東ネット」(2012年12月発足)や「関東子ども健康調査支援基金」(2013年9月発足)へのヒアリング調査をおこない、学校における空間線量の測定、学校における土壌汚染の測定、野外活動の制限、学校給食の安全、被ばくによる子どもの健康への影響を知るための健康診断などの諸課題について、現状を明らかにするための手がかりを得た。今後は、上記した①②③④をふまえて、⑥栃木・埼玉における学校数および学校別児童生徒数の一覧の作成をおこない、⑦栃木・埼玉における「原発被災校A」の実数についても明らかにする。また、⑤をふまえて、「原発被災校A」が所在する首都圏の自治体の事例研究をおこない、課題の解明をすすめていく。
著者
岡本 五郎 大森 直樹
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.521-529, 1991
被引用文献数
3 7

ブドウ'ピオーネ'では,胚珠の受精率が低いために有核果が着生しにくい.この原因を探るために,開花約1週間前の小花を培養し,培地の無機塩,ホルモンおよび雌ずいの抽出物の添加濃度が胚珠の発育と受粉後の花粉管生長に及ぼす影響を調査した.有核果が多く着粒する'マスカット&bull;オブ&bull;アレキサンドリア'を比較の対照とした.<BR>NitschあるいはMS培地の無機塩濃度,Nitschの培地の窒素濃度を高めると,両品種とも子房の発育は促されたが,胚のうの発育と受粉後の花粉管伸長は抑制された.この傾向は特に'ピオーネ'で著しかった.1~10ppmのGA, BA, NAAを添加すると, 子房の発育は影響されなかったが,'ピオーネ'雌ずい内での胚のうの発育と花粉管伸長が抑制された.'ピオーネ'雌ずいの水抽出物を培地に加えると,両品種とも子房および胚のうの発育は影響されなかったが,花柱内への花粉管伸長が著しく抑制された.<BR>以上のことから,'ピオーネ'の小花は窒素栄養の供給が豊富であると,胚のうの発育と花粉管の生長が抑制される.'ピオーネ'の雌ずいに多く含まれる花粉管生長阻害物質は,無機物質やホルモン様物質とは異なるものと思われる.
著者
君塚 仁彦 王 智新 石 純姫 藤澤 健一 橋本 栄一 大森 直樹
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本共同研究では、2003(平成15)年度から2005(平成17)年度までの3ヵ年の研究期間において、東アジアにおける戦争記憶の保存と表象のあり方に関して、歴史学を中心軸にしながら博物館学・植民地教育史学・言語学・哲学などの学術的視点をも援用し学際的かつ総合的な解明を行なった。特に調査研究の遂行にあたっては、日本のみならず中国・韓国・沖縄の研究者とともに行う国際的な研究体制を堅持した。研究期間内に、中国・韓国・沖縄・日本における戦争博物館・戦争遺跡の調査・研究を各年度の計画に基づいて実施したが、全体として、海外実地調査を5回、国内実地調査を6回、国内研究会を4回、海外での研究報告を3回、海外(中国・重慶)での特別講演会を1回実施することができた。その結果、これまで日本国内では、その存在さえも十分に認知されていなかった戦争遺跡等のいくつかを調査することができ、現地研究者との研究・情報交流を踏まえて、各地域における戦争記憶が、遺跡や博物館という形を取りながらどのように保存され、表象されているのか、またどのような歴史的背景存在するのかなどを具体的に解明することができた。また本研究成果の特色として、中国・韓国など海外、また沖縄などにおいて、日本が起こした近代以降の侵略戦争による加害・被害の史実認識、歴史認識共有化を目的とした現地研究者との学術研究交流を活発に実施したことをあげることができる。戦争記憶に関する歴史認識共有は今後の東アジアにとって極めて重要な課題であり、平和実現への欠かすことのできないステップでもある。研究代表者および分担者・協力者は、その目的達成のため、研究期間内での諸議論を踏まえて、本共同研究の研究成果発表の一環として、君塚仁彦編著『平和概念の再検討と戦争遺跡』(明石書店、2006年)を上梓し、その成果をより広く共有されるようにした。