著者
藤井 雄一郎 大塚 雅子 岡本 五郎 日原 誠介 各務 裕史
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.307-311, 2007 (Released:2007-04-23)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

放射線育種により作出されたモモ‘清水白桃RS’は,原品種の‘清水白桃’と比較して果実品質は同等であるが,結実率が低い.開花30日後の結実率を調査したところ,‘清水白桃’が平年では50~70%であるのに対し,‘清水白桃RS’は20~30%と著しく低かった.花器の形態的観察を行ったところ,‘清水白桃RS’には胚珠や胚のうの未発達や退化など形態的異常の花が多く存在しており,これが結実率の低下を引き起こしていると考えられた.また,‘清水白桃RS’は葯当たりの正常花粉数が少なく,このことが受粉の効率を低下させ受精率を低下させているとも考えられた.しかし,結実率の低さが生産性の低下につながることはなく,3~5月にかけての摘蕾・摘果労力の大幅な低減につながる省力品種であることが確認された.
著者
岡本 五郎 山本 恭子 島村 和夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.251-258, 1984 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16
被引用文献数
5 4

4倍体ブドウの巨峰系品種の中で, ‘巨峰’及び‘ピオーネ’の果房には多くの無核小粒果が混入するが, これに比べて‘紅瑞宝’, ‘紅伊豆’, ‘レッド•クイーン’, ‘ハニー•レッド’ではより多くの有核果が着粒し, 無核果の混入は少ない. このような無核果の着生原因を知るために, 各品種の花器の完全性と胚珠への花粉管の伸長を比較した.‘巨峰’及び‘ピオーネ’では, 胚珠の形態的異常や胚のうの未発達が他の品種より多くみられた. 生殖核と栄養核のない花粉も両品種で特に多かったが, 寒天培地上での発芽能力とは一定の関係がなかった. 子房内に伸長した花粉管の数は, いずれの品種でも子房組織の中央部または下部で著しく減少したが, ‘巨峰’と‘ピオーネ’ではその減少が特に著しく, 胚珠へ到達する花粉管も極めて少なかった.これらのことから, ‘巨峰’及び‘ピオーネ’で有核果の着生が少ないのは, 胚珠の発達が十分でないこと, 及び花粉管の子房内組織での生長が不活発であるために胚珠が不受精になりやすいことが原因であると考えられる. これらの品種では, 不受精に終った子房の多くがそのまま生長を続けて無核果になるものと思われるが, その機構は不明である.
著者
小林 章 岡本 五郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.31-35, 1967 (Released:2007-07-05)
参考文献数
18
被引用文献数
7 6

1. Muscat of Alexandria の比較的強勢な新梢につき, 開花1~3週間前に基部の5葉または10葉を残して摘心をすると, 花粉の発芽率が高まるとともに着粒も良好になつた。この場合に葉分析をすると, 両摘心区ともに花房付近の葉内にB含量がとくに増大した。2. 摘心をするかわりにホウ素の葉面散布 (ホウ酸0.2%) を行なうと, ホウ素は枝梢内に多量に吸収されるとともに, 結実歩合が著しく増大した。3. 葯に含まれるアミノ酸と糖をペーパークロマトグラフィーによつて分析した結果は, 摘心区およびホウ素散布区において proline および alanine が多く存在した。4. 無処理区に比べて, 摘心区およびホウ素散布区では葯中の全糖量が明らかに増大した。ただし, 摘心区では sucrose が増大し glucose はやや増加する程度であるが, ホウ素散布区では sucrose が消失し glucose がいちじるしく増大した。
著者
岡本 五郎 大森 直樹
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.521-529, 1991
被引用文献数
3 7

ブドウ'ピオーネ'では,胚珠の受精率が低いために有核果が着生しにくい.この原因を探るために,開花約1週間前の小花を培養し,培地の無機塩,ホルモンおよび雌ずいの抽出物の添加濃度が胚珠の発育と受粉後の花粉管生長に及ぼす影響を調査した.有核果が多く着粒する'マスカット&bull;オブ&bull;アレキサンドリア'を比較の対照とした.<BR>NitschあるいはMS培地の無機塩濃度,Nitschの培地の窒素濃度を高めると,両品種とも子房の発育は促されたが,胚のうの発育と受粉後の花粉管伸長は抑制された.この傾向は特に'ピオーネ'で著しかった.1~10ppmのGA, BA, NAAを添加すると, 子房の発育は影響されなかったが,'ピオーネ'雌ずい内での胚のうの発育と花粉管伸長が抑制された.'ピオーネ'雌ずいの水抽出物を培地に加えると,両品種とも子房および胚のうの発育は影響されなかったが,花柱内への花粉管伸長が著しく抑制された.<BR>以上のことから,'ピオーネ'の小花は窒素栄養の供給が豊富であると,胚のうの発育と花粉管の生長が抑制される.'ピオーネ'の雌ずいに多く含まれる花粉管生長阻害物質は,無機物質やホルモン様物質とは異なるものと思われる.
著者
島村 和夫 三善 正道 平川 利幸 岡本 五郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.422-428, 1987 (Released:2007-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
3 3

ユスラウメ台及び共台 (寿星桃) の‘山陽水蜜桃’を王幹形で育て, ほぼ成木期に達した6年生及び8年生時に新梢, 根, 果実の生育を比較調査した.1. ユスラウメ台では10cm以下の新梢の比率が共台よりも高く, これらは着葉密度が高く, 伸長が5月中に停止した. 20cm以上の新梢は共台の方がユスラウメ台より多く, これらは6月以降も伸長を続けた.2. ユスラウメ台の新根生長は4月下旬から5月上旬にかけて活発で, 6月中旬にはほとんどが褐変し, 白根は消失した. 共台の新根生長はユスラウメ台より約1か月遅く始まり, 7月中旬まで多くの白根がみられた.3. ユスラウメ台の果実は硬核期中も活発に肥大を続け, 共台よりも大果となり, 4~5日早く完熟した. 果汁の糖度は1983年はユスラウメ台の方が高かったが, 6月下旬から7月上旬に降雨が続いた1985年は共台の方が高かった.4. 以上のように, モモの主幹形仕立にはユスラウメ台が適していると考えられるが, 共台でも幼木期から積極的に着果させ, 夏季せん定を十分行うなど樹勢安定を図れば, 主幹形で栽培することは十分可能であると思われる.
著者
賈 惠娟 岡本 五郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.223-225, 2001-03-15
参考文献数
9
被引用文献数
5

モモ'白鳳'果実の皮, 果肉あるいは果実全体から発散される揮発成分をヘッドスペース法で定量し, 併せて施肥濃度の影響も調査した.モモの香りの主成分であるlactone類は, 皮よりも果肉に高濃度で存在し, 適濃度の施肥をした果実に最も多かった.他の揮発成分のアルデヒド, アルコール, エステルは, 青臭さを与えるが, 果肉より皮の方が濃度が高く, 施肥区の中では高濃度区の方が高かった.果実全体から発散される揮発成分の量は, 皮や果肉に比べてわずかであった.果実1個の皮と果肉中に含まれる揮発成分の分布をみると, lactone類は97&acd;98%が, 他の揮発成分は86&acd;89%が果肉中に存在した.
著者
岡本 五郎 賈 惠娟 水口 京子 Hirano Ken
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.39-46, 2003-02
被引用文献数
1

Skin color and juice constituents in large(L), medium(M), nad small(S) fruits of four peach cultivars, Hashiba-hakuho(early maturing), were analyzed to elucidate the effect of fruit size on the quality. The fruits containing higher soluble solids than 12°Brix were samled at a commercial packing-house located in southen Okayama. They were stored at 25℃ until fully ripened. The skin color on the cheeks (yellowish) was dark in S fruits of Hashiba-hakuto and Hakurei, respectively, compared to the fruits of other sizes. The sucrose + fructose content in juice, the major source of the sweetness, was higher in S and M fruits in Hakuho, Shimisu-hakuto, and Hakurei, while the malic+citric acid content, the major sour constituent, was lower in L fruits in those cultivars, although no significant difference was found in Hashiba-hakuho. Asparagine, the biggest amino acid fraction and thought to deteriorate the fruit taste at high levels, was higher in L fruits tahn in S fruits in Hashiba-hakuho and Hakuho. The content in Shimizu-hakuto and Hakurei fruits was generally low and not affected by fruit size. The content of γ-decalactone, the major peachy aromatic substance, was higher in L fruits in Hashiba-hakuto, in M fruits in Hakuho and Shimizu-hakuto, and in S fruits in Hakurei, than in those of other sizes. Sensory tests revealed that the L fruits of Hakuho and S fruits of Hakurei were poor in flavor. These results suggest that the larger fruits of Hakuho, Shimizu-kakuto, and Hakurei, the representative white peach fruits in Okayama, have rather falatter tastes than medium size fruits because of their lower sweetness and sourness and weaker aroma, as well as poorer texture.岡山市一宮のモモの選果場に出荷された有袋栽培の'橋場白鳳'(早生),'白鳳'(早中生),'清水白桃'(中生)および'白麗'(晩生)から,3段階のサイズ(L,M,S)の果実を入手し,完熟状態(手で皮が剥ける)に達するまで25℃の室温においた.それらの果実について,果皮色と果汁成分の分析と果肉の食味テストを行い,果実のサイズによる品質の相違を検討した.'橋場白鳳'では,S果実は地色が暗く,'清水白桃'のL果実は着色が濃いが色調が暗く,'白麗'のL果実は着色が薄くて黄色が強く,いずれも外観が劣った.果汁中の主要な甘味成分であるスクロース+フルクトース含量は,'白鳳','清水白桃'および'白麗'ではSまたはL果実で高く,酸味成分のリンゴ酸+クエン酸含量は,それら3品種のL果実で最も低かった.'橋場白鳳'では果実サイズによる糖・酸含量の有意な差がなかった.果実に苦みを与えるアスパラギン含量は,'橋場白鳳'と'白鳳'ではL果実で高かったが,'清水白桃'と'白麗'ではどのサイズでも含量が低かった.モモ香の主成分であるγ-decalactoneは,'橋場白鳳'ではL果実で高かったが,'白鳳'と'清水白桃'ではM果実で,'白麗'ではS果実で高かった.官能テストの結果,'白鳳'のL果実と'白麗'のS果実は食味が劣った.これらの結果から,岡山の「白桃」を代表する'白鳳','清水白桃','白麗'の大果は,中程度の大きさの果実より甘味と酸味が低く,アロマが弱いなど,食味が薄く,肉質も劣ると考えられる.
著者
岡本 五郎 後藤 新太郎
出版者
岡山大學農學部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.9-13, 2005-02

岡山県新庄村で栽培されているサルナシ果実の健康食品としての評価を行うために、同地区のサルナシ園で生産された3品種(光香、峰香、在来種)の果実、及び近隣の山地で収穫された野生サルナシ果実の成分分析を行った。参考として、岡山市内のマーケットで購入された輸入のキウイフルーツ(ヘイワード)、レモン(品種不明)、及び国産のリンゴ(ふじ)の成分も調査した。サルナシ栽培品種では、収穫適期でも硬熟状態のものと軟熟状態のものが混在し、さらに普通の果実の半分程度の小果実(すべて軟熟)も混在した。果汁のビタミンC含量は、峰香の硬熟果と光香の小果で220-260mg/100mLと非常に高い値を示した。市販のキウイフルーツのビタミンC含量は約100mg、レモンで50mg、リンゴは4mg/100mL程度であった。サルナシ果汁の全ポリフェノール含量とラジカル消去能はキウイフルーツと大差がなかったが、リンゴに比べれば有意に高かった。サルナシはキナ酸含量が最も高く、無機成分のN、Ca、Mg、Mn含量が高かったが、糖含量は低かった。本分析結果から、サルナシ果実はビタミンとポリフェノールが豊富で、現代人の食事で不足しがちなミネラルも多いことから、健康食品として評価されうる。