著者
谷岡 哲也 浦西 由美 山崎 里恵 松本 正子 倉橋 佳英 多田 敏子 眞野 元四郎 山崎 正雄 友竹 正人 松下 恭子 上野 修一 大森 美津子 大浦 智華
出版者
香川大学
雑誌
香川大学看護学雑誌 (ISSN:13498673)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.65-74, 2007-03
被引用文献数
1

スティグマと疎外が精神疾患の治療と精神障害者の社会復帰を妨げていることが,精神保健上の問題として明らかにされている.地域住民の精神障害者との出会いの経験と精神障害者に対するイメージについて明らかにする目的で,郵送法による質問紙調査を行った.その結果,20代と30代の回答者の約50%が,精神障害者を意識した時期が小学校から高校であったと回答した.その当時の精神障害者のイメージは,否定的イメージが多かった.またその内容は,「変わっている」「こわい」が上位にあり,「普通の人と変わらない」は1割以下であった.回答者らが,実際に会ったことのある精神障害者は認知症のみであった.精神保健福祉施策は入院医療から地域ケアへと移行している.したがって,精神障害者やその障害について地域住民が理解する機会を我々は増やしていかなければならない.今後は,さらに若い年代から病院や施設等で精神障害者と日常的に交流を持てるような,ふれあいの場を作ることが重要である.また若い年代に対する精神障害者や精神障害に対する固定観念やスティグマを緩和ないし減少させるためのさらなる啓発活動が求められることが示唆された.
著者
西村 美穂 大森 美津子 森河 佑季
出版者
国立大学法人 香川大学医学部看護学科
雑誌
香川大学看護学雑誌 (ISSN:13498673)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.23-35, 2018-03-30 (Released:2020-07-23)
参考文献数
26

本研究の目的は,高齢者に対するスピリチュアルケアを文献より明らかにすることである.文献検索は医学中央雑誌Web版を使用した.「高齢者」,「スピリチュアルケア」をキーワードとした.加えて,老年看護,福祉領域の学会誌からも文献検索を行った.検索対象年は,1970年から2017年までとした.分析は,窪寺のスピリチュアリティの超越性と究極性の考えを参考にし,高齢者に対するスピリチュアルケアが記載されている文章を,文脈を損なわないようにそのまま抽出,要約し,コードとした.そして,コードを意味内容が同じもので類型化しサブカテゴリーにした.さらにサブカテゴリーを類型化しカテゴリーにした.倫理的配慮は,文献の出典を明らかにし,データは可能な限り原典より抽出した.対象となった文献は13件であった.そのうち9件は終末期の高齢者を対象としていた.その他は,腰痛やくも膜下出血等によりADL介助を受けている高齢者を対象とした文献が2件,配偶者と死別した高齢者を対象とした文献が1件,養護老人ホームで生活している高齢者を対象にした文献が1件であった.高齢者に対するスピリチュアルケアは,【超越的存在の支えを感じることができるケア】【拠りどころからの支えを感じることができるケア】【自分の人生に向かう準備を支えるケア】【死や生と向きあうことを支えるケア】【人生の整理を支えるケア】であった.また,スピリチュアリティが覚醒し,よりよい状態にある高齢者に対するスピリチュアルケアは,環境を調整する,傾聴する,沈黙を守る,ユーモアで笑いあうことが行われていた.
著者
大森 美津子 小野 幸子
出版者
香川医科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

1.ビハーラ安芸に所属する僧侶1名、ビハーラ花の里病院に勤務している僧侶1名とこの病院でビハーラ活動を行っている「広島県北部会と三次活動の会」の会長に面接を行い、ビハーラ活動の実態について調査した。調査の内容は、ビハーラ活動のきっかけ、組織と運営、目的、対象の選定、活動の場・内容・頻度、活動の評価、今度の課題についてであった。2.179名の一般の人々を対象とした宗教的なニーズとケアに関する意識調査をした結果、(1)保健医療施設に入院または入所時に、宗教的な活動の場が必要と考えた者は3割弱であり、考えなかった者は3割弱であり、残りの約半数近くはわからないであり、(2)必要に応じて関わることのできる宗教家がいて欲しいと考える者は約3割、考えない者は約2割であり、わからない者は約半数であった。(3)宗教家に求めるケアの内容は「心のケア」「心の安らぎ」「死の受容」「専門的な教えや会話」などであった。(4)予後不良の病気に罹患した時に宗教家の関わりを希望する者は約1.5割であった。(5)信仰する宗教がある者の内、予後不良の病気に罹患した時に、宗教的活動を続けることを望む者は約6割であった。詳細については報告書で報告する。
著者
谷岡 哲也 Locsin Rozzano C. 多田 敏子 大森 美津子 大坂 京子
出版者
香川大学
雑誌
香川大学看護学雑誌 (ISSN:13498673)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-6, 2008-03

看護の焦点は,ケアリングを通して人間と環境との全体性を育むことである.看護は学問の一分野であり,かつ実践を伴う専門的職業である.すべての看護は,看護師と看護を受ける人との間に存在する生き生きとした経験を共有し,ケアリングを通してお互いの人間性を高める中に存在する.ケアリングとしての看護は,看護を理解しそれを実践する際の比較的新しい考え方である.ケアリングとしての看護を理解する原則には,人間を全体として捉えるという考え方,看護が必要な状況において看護が発生するという考え方,知識を深めることや実践的専門職としての看護の概念が含まれている.本稿では看護実践におけるケアリングとしての技術的能力について論じた.