著者
熊谷 晋一郎 綾屋 紗月 武長 龍樹 大沼 直紀 中邑 賢龍
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.234-242, 2013-06-30 (Released:2013-12-05)
参考文献数
32
被引用文献数
1

要旨: 本研究では一般大学生を対象に, カルファの聴覚過敏尺度日本語版 (6件法) による質問紙票調査を行い, スコアの平均は16.9点, 標準偏差は11.6点で, 上位5%のカットオフ値はおよそ40点であること, さらに聴覚過敏尺度が 「選択的聴取の困難」 「騒音への過敏と回避」 「情動との交互作用」 の3因子構造を持つことがわかった。また, 聴力異常の既往, 抑うつ症状, 性別, 顔面神経麻痺などよりも, 「不安症状」, 「睡眠障害」, 「頭頸部手術の既往」 の3つの危険因子が有意に聴覚過敏と相関していることが明らかとなった。また重回帰分析の結果, 前2者は各々独立に聴覚過敏と相関していた。このことは, 聴覚過敏を主訴とする患者の診療において, 不安障害や睡眠障害の合併に目を向けることと, 頭頸部手術後のフォローアップにおいて聴覚過敏に目を向けることの重要性を示唆している。
著者
中瀬 浩一 大沼 直紀
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.763-768, 2013

要旨: 聴能マトリクステストの教育実践上の活用の有用性を聴覚障害幼児50名147回の検査結果から検討した。その結果, 補聴閾値と本テストの素点の間には相関は認められなかった。67式20単語了解度検査と本テストの素点にも相関は認められなかったが, 1語ずつ呈示して実施する単語了解度検査から複数語の連続である文聴取検査への移行は困難を伴う場合もあることが確認できた。また, 語音聴取評価検査 「CI2004 (試案) 」 の幼児用オープンセット文検査と本テストの素点には比較的高い相関が認められた。本テストが34/40以下であれば, 素点が高ければ語音聴取評価検査 「CI2004 (試案) 」 の幼児用オープンセット文検査のキーワード正答数も多くなる傾向があるが, 35/40以上では必ずしも関係があるとはいえないことが確認でき, 既存の語音検査と併用することで相互補完的に子どもの聴取能の評価が行えることが示唆され, 本テストの有用性が認められた。